パーティから追放されたのは神に選ばれし救世主だった。～チートスキルで元のパーティを見返し、全知全能の冒険者になってやる！～

第105話 聖女の声

ラージェは立ち上がる。
そして、ラージェは頭を下げた。
それは、土下座の格好であった。
ラージェは叫ぶ。
それは、魂の叫びだった。
ラージェは言う。
それは、自分の気持ちを素直にぶつけるような熱い想いだった。

「むぅ……」

ラージェの姿が国王の胸を打つ。

(へっ、ちょろいぜ)

ラージェは頭が良かった。
学歴も家柄もダメだが、頭の良さと要領の良さで成り上がって来た。
そしてこの演技力。
ラージェは確信した王の気持ちを掴んだと。

「よし、お主の気持ちは分かった。まずは友達として付き合いなさい。そして、週に一回私と話す時間を作ってくれ。君がどんな人か知りたい」

こうしてラージェは王国に取り入ることに成功した。

◆

数か月後。

中立国家エミリオ皇国の大聖堂。
そこには、多くの信者や聖地巡礼者が集まっていた。
この国の大半の人間はリゴベット教を信仰していた。

そして、皆祈りを捧げている。
祭壇の上には聖女リリカ・ルウ。

「綺麗だ……」

ハルトは見とれていた。
今日は聖女のお披露目式だった。

そのため、多くの人が集まっているのだ。
美しいドレスに身を包んで、まるで天使のようなその姿に、人々は魅了されていた。
ハルトも例外ではなかった。
ハルトは思った。

（こんなにも綺麗だと思わなかった）

すると、後ろから声を掛けられる。
振り向くと、そこに居たのはフィリア。
いつものように爽やかな笑顔を見せる。
そして、手を差し伸べてくる。
ハルトはその手を握り返す。
二人は並んで立つ。
そして、リゴベット神への感謝を祈った。
そして、式典が始まった。
大司教が祝辞を述べる。
そして、リゴベット神の加護によって平和が保たれていること。
そして、その平和を守るために、今後も努力して欲しいという内容の話をされた。
最後に、聖女が挨拶をした。
聖女は言った。
これからの時代は、人々の心により平和が訪れることを願っている。そのために、私は人々のために働きたいと。
そして、人々を癒したいと。
そうして、聖女のスピーチが終わった。
会場からは拍手喝采が巻き起こる。
その光景を見て、ハルトは思った。
これで、やっと始まると。
この世界は狂い始めていると。
ハルトは思う。
今の世界は間違っていると。
それは、ハルトが救世主だからだ。
魔王を倒さねば。

◆

「最近、マテリアライズド王国の様子がおかしい」

バルクがそう言うとハルトはどうしてと思った。

「なんでも、モンスターと人間が手を取り合って暴れている様だ」