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第83話 裏切り
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「まず、今回の議題ですが……、ラインハルトとガーレットについてのことです」
その名が出た途端、会場の雰囲気が変わった。
それは、二人の名前を聞いただけで、これから何が行われるのかを察したからだろう。
ラインハルホの連れとして参加しているハルトも緊張した。
今日の会議の後、エミリオと五大国王には自分が救世主であることがバルクから伝えられる予定だ。
ハルトは自分が認められるか心配だった。
だが、同時に認められたいとも思う。
だから、今日この場では絶対に無様な姿を見せるわけにはいかないのだ。
ハルトは自分の決意を示すために背筋を伸ばして真っ直ぐ前を見据えた。
そして、全員を見渡しエミリオは話し始めた。
「今回、傭兵団と嘘を付いてラインハルホへ刺客を差し向けた。そのことに間違いありませんね。ガーレット国王」
エミリオの言葉に、会場内はざわめき始めた。
皆がガーレットの方を見る中、当の本人は涼しい顔をしている。
しかし、そんな態度で隠し通せるほど甘くはない。
「さぁ、刺客とは物騒な。まるで私が戦争を仕掛けようとしているみたいなことを言わないでくれ」
そう言って、ガーレット国王はわざとらしく首を横に振った。
すると、ラインハルホ国王が口を開く。
「ガーレット国王。嘘を付かないでください。あなたは私の国に戦争を仕掛けるために、500人の冒険者を送り込んで来た」
「証拠は?」
「そこにいる、バルクさん、ルミナスさん、フィリアさんが教えてくれた。特にルミナスさんは500人の冒険者のなかにいるジークフリートという人と兄妹だ。兄があなたの暴挙に加担していることを知っている」
ラインハルホ国王の言葉を聞いても、ガーレット国王の顔色は変わらない。
「ふん。そんなもの証拠にならん。口で話しただけの内容など。ラインハルホよ。ちゃんと同盟国として傭兵団を送ると約束したではないか。それをお前は、傭兵団を死の海岸に放置した。お前こそ私に戦争を吹っかけて来てる」
「なっ」
ガーレット国王の言葉に、ラインハルホ国王は言葉を失った。
それを見たガーレット国王は勝ち誇ったような表情を浮かべる。
「私はガーレットに傭兵団を要請した覚えはない!」
声を荒げるラインハルホ国王。
だが、ラインハルホの第一王子ドルジが立ち上がった。
「父上、あなたは間違っている!」
そう叫んだドルジに視線が集まる。
すると、ドルジは机にある物を広げた。
「これは……」
それはマインが船長に渡した嘘の書簡だった。
ラインハルホがガーレットに傭兵団を要請するという嘘が書かれた書簡。
船長はこれに納得し、冒険者を死の海岸まで送った。
「父上は、嘘の書簡まで用意した。実は本当の書簡がガーレットから来ていた」
もう一つ広げたのはガーレットの本当の書簡。
「どうして、そんなものが……」
「いや、父上。あなたは嘘を付いている。ガーレットに傭兵をお願いしたのに、あなたは嘘の書簡まで作りガーレットの戦力をそぐために冒険者を死の海岸へ送った」
突然のドルジの裏切りだった。
その名が出た途端、会場の雰囲気が変わった。
それは、二人の名前を聞いただけで、これから何が行われるのかを察したからだろう。
ラインハルホの連れとして参加しているハルトも緊張した。
今日の会議の後、エミリオと五大国王には自分が救世主であることがバルクから伝えられる予定だ。
ハルトは自分が認められるか心配だった。
だが、同時に認められたいとも思う。
だから、今日この場では絶対に無様な姿を見せるわけにはいかないのだ。
ハルトは自分の決意を示すために背筋を伸ばして真っ直ぐ前を見据えた。
そして、全員を見渡しエミリオは話し始めた。
「今回、傭兵団と嘘を付いてラインハルホへ刺客を差し向けた。そのことに間違いありませんね。ガーレット国王」
エミリオの言葉に、会場内はざわめき始めた。
皆がガーレットの方を見る中、当の本人は涼しい顔をしている。
しかし、そんな態度で隠し通せるほど甘くはない。
「さぁ、刺客とは物騒な。まるで私が戦争を仕掛けようとしているみたいなことを言わないでくれ」
そう言って、ガーレット国王はわざとらしく首を横に振った。
すると、ラインハルホ国王が口を開く。
「ガーレット国王。嘘を付かないでください。あなたは私の国に戦争を仕掛けるために、500人の冒険者を送り込んで来た」
「証拠は?」
「そこにいる、バルクさん、ルミナスさん、フィリアさんが教えてくれた。特にルミナスさんは500人の冒険者のなかにいるジークフリートという人と兄妹だ。兄があなたの暴挙に加担していることを知っている」
ラインハルホ国王の言葉を聞いても、ガーレット国王の顔色は変わらない。
「ふん。そんなもの証拠にならん。口で話しただけの内容など。ラインハルホよ。ちゃんと同盟国として傭兵団を送ると約束したではないか。それをお前は、傭兵団を死の海岸に放置した。お前こそ私に戦争を吹っかけて来てる」
「なっ」
ガーレット国王の言葉に、ラインハルホ国王は言葉を失った。
それを見たガーレット国王は勝ち誇ったような表情を浮かべる。
「私はガーレットに傭兵団を要請した覚えはない!」
声を荒げるラインハルホ国王。
だが、ラインハルホの第一王子ドルジが立ち上がった。
「父上、あなたは間違っている!」
そう叫んだドルジに視線が集まる。
すると、ドルジは机にある物を広げた。
「これは……」
それはマインが船長に渡した嘘の書簡だった。
ラインハルホがガーレットに傭兵団を要請するという嘘が書かれた書簡。
船長はこれに納得し、冒険者を死の海岸まで送った。
「父上は、嘘の書簡まで用意した。実は本当の書簡がガーレットから来ていた」
もう一つ広げたのはガーレットの本当の書簡。
「どうして、そんなものが……」
「いや、父上。あなたは嘘を付いている。ガーレットに傭兵をお願いしたのに、あなたは嘘の書簡まで作りガーレットの戦力をそぐために冒険者を死の海岸へ送った」
突然のドルジの裏切りだった。
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