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第76話 絶望しかない

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「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

冒険者たちの声が虚しく響く。
しかし、船は止まらない。
そして、船は、ラインハルホ王国へと戻って行った。
残された冒険者たちは、諦めるしかなかった。

「とりあえず、国王がいるという祠を目指そう!」

無秩序なパーティの集団は、希望に縋った。
ガーレット国王からこう言われている。
ラインハルホ王国の人間を殺せと。
ならば、ラインハルホ王国の人間でもNo1のつまり、国王を殺せば手柄がすごいことになる。

そんな幼稚な想いしか持っていない。

そう、彼らは欲望の前で狂っていた。

こんなところに国王がいるなんて、そんなはずない。

冷静に考えればわかる。

だが、我先にと走り出した。

「おい!なんだあれは!?」

一人の男が叫ぶ。
彼の指差す方向には、大きなドラゴンがいた。
ドラゴンは、冒険者の集団に向かって飛んできた。
そして、集団を丸呑みにした。
飲み込まれた冒険者は、必死に逃げようとするが、もう遅い。
ドラゴンは口を閉じると、そのままゴクリと喉を動かして嚥下してしまった。
ドラゴンは満足げにゲップをした。
その光景を見ていた他の冒険者の動きが止まる。
その隙を突いて、ドラゴンはブレスを放った。
冒険者が一人また、一人とその餌食となる。
そして、ドラゴンは再び、次の獲物を求めて飛び立った。
このドラゴンは、この辺りでは真ん中くらいに強い個体だった。
腕に覚えがある冒険者が立ち向かい、何とか倒す。

「おい、ここは本当にラインハルホか!?」

一人の冒険者が鳴きながら喚く。

その言葉に答えるものはいない。
その男は、仲間に担がれるように、その場を去った。

「おい! あれは!?」

別の冒険者が叫んだ。
彼が見つけたのは、白い巨大なドラゴンだった。
ドラゴンはその冒険者に狙いを定めて、襲いかかってきた。
その巨体からは想像できないスピードで、その冒険者を噛み砕いた。
その死体を咀食すると、再び、どこかに飛び去った。ラインハルホ王国は、魔境だった。
ラインハルホ王国は、魔物の巣窟だった。

彼らはそう認識した。

こんなところに来るんじゃなかった。

逃げ惑う。

だが、逃げ惑う先にもモンスターがいる。

今まで戦ったことが無い強いモンスター。

自分達が今までぬるま湯にいたことに気付かされる。

やはり古の魔王は復活したのだ。

「ちくしょー!ガーレットの野郎、俺達を殺す気か!?」

誰かが叫んだ。
そう考えるのが妥当だ。

巨大な一つ目の巨人、サイクロプスが寝ているのを起こされて機嫌悪そうに棍棒を振り回す。

冒険者たちは、散り散りになって逃げる。
だが、逃げ道など無かった。
あるのは、死への道のみ。
サイクロプスは、冒険者の一人を蹴り飛ばした。
地面に叩きつけられた冒険者は、ピクピクと痙攣していた。
それを見た冒険者たちは、恐怖に震えた。
そして、冒険者たちの心に芽生えたのは、怒りだった。

ふざけんなよ。

何で俺達が殺されなきゃならないんだ。
こいつらは、何も悪いことをしていないじゃないか。
冒険者たちの心は一つになった。
冒険者たちは、武器を手に取る。
それは、復讐のためではなく、生き残るために。
俺は、生きるぞ。
絶対に生きてやる。
その想いが彼らを奮い立たせる。
そして、冒険者たちは、一斉に攻撃を開始した。

だが、次々現れるモンスターに、絶望しかない。
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