異世界犯罪対策課

河野守

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第一章 女子高生行方不明事件

第四十一話

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 背後からのサイレンを聞き、明善は最初パトカーが間の空間に追って入ってきたのかと思った。だが、走行音が違う。これは車のものではない。このエンジン音、バイクだ。
 バイクのエンジン音は高速で明善達の車に近づき、そして、追い抜いた。明善達の前に躍り出たバイクは全身が白く塗装されており、左右には赤いパトランプ。いわゆる白バイだ。白バイに跨っている警官の顔は明善達からは見えない。だが、警官がどういう人物か、明善達にはすぐにわかった。異犯対でもないのに、異世界人達を追って単身で間の回廊に乗り込む。そのような無茶をするのは、一人しかいない。
「益子さんだ! 益子さんですよ!」
 明善はつい声を上ずり喜ぶ。益子は追跡のプロ。彼がこの場面で来てくれたのは、とても心強い。
 益子は振り向くことはせず、左手の親指を立て、自分を指差した。
 あとは俺に任せろ。
 明善達にはそのようなジェスチャーに見えた。
 益子はアクセルをさらに回転させ、加速。ぐんぐんと軍用車に近づいていった。
 新たな追跡者が自分達に接近しつつあることに気が付いたのだろう、軍用車の窓から一人の異世界人が顔を出す。彼は魔法を益子に向かって放つ。幾つもの火の玉が飛んでくるが、益子は華麗なドライビングテクで難なく回避。流れ弾が明善達の車に飛んできて、落合は「あっぶね!」と急ハンドルでなんとか避けた。
 益子は左手をハンドルから離し、上に掲げる。彼の手には網目状の球が生成され、彼はそれを勢いよく前方に投げた。球は軍用車を追い抜き、軍用車の前で一瞬止まる。そして、大きく広がった。軍用車は気にせず真っ直ぐ光の網に突っ込む。バリアがあるから大丈夫だと判断したのだろう。だが、網はバリアをすり抜け、車体に絡みついた。
「あれが益子さんの固有魔法か」
 明善が推測するに捕縛に重きを置いた魔法なのだろう。バリアや他の魔法に干渉せず、目標だけを捕まえる。
 相手をどこまでも追いかけ、捕縛する。益子にぴったりの魔法だ。
 軍用車は網をたまわませながら、それでも前に進もうとする。だが、どんなにアクセルを踏んでも、網を破ることはできない。タイヤは高い音を立てながら空回り。突破できないとわかった軍用車はバックしようとするが、網は車体を離さなかった。
 益子は明善達に振り返り、前を指差す。
 ここからはお前達の仕事だ。明善はそう言われた気がした。
「流石っす!」
 明善は親指を立てて、益子に笑みを返す。
 明善達の車が追いつき、車が完全に止まる前に明善は車内から飛び出した。異世界人達は軍用車から出ようとしてるが、光の網のせいでドアが開かない。明善は素早く異世界人達に近づき、先ほど得た固有魔法を放つ。
「打て!」
 明善は右手でピストルの形を作り異世界人の一人に向けると、指先に光り輝く矢が現れ異世界人に向かって飛んでいく。矢が命中すると、異世界人は息が絶え絶えになり、動かなくなった。明善はもう一人の異世界人にも矢を打ち込み、異世界人達を全員無力化。
 どうやら、明善の固有魔法を受けると魔力を封じるだけではなく、封じされた際に強烈な疲労感に襲われるらしい。抵抗する力を大幅に奪うので、この副次効果に明善はラッキーと内心思った。
「落合さん、益子さん、異世界人達の魔法を封じました。手錠をかけます。 益子さん、この網を解いてください」
 益子の魔法が解かれた後、明善達は異世界人達を車から引きずりし、手錠をかけていった。
 異世界人全員を拘束した後、明善は軍用車の中を確認。車内には一人の女の子が目をぱちくりさせながら、明善を見つめていた。
「我妻さん、我妻和奏さん、ですよね?」
「は、はい」
 寝起きを叩き起こされた彼女の眠気はすっかり覚めたようだが、まだ状況を把握しきれていないようだ。
 明善は警察手帳を取り出し、我妻に見せる。
「我々は福島県警須賀川署、異世界犯罪対策課です」
「け、警察ですか?」
「はい、そうです。あなたを保護します」
 異世界人達とのカーチェイスは、明善達こちらの世界の警官に軍配が上がった。
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