55 / 107
第一章 女子高生行方不明事件
第三十六話
しおりを挟む
明善達の後ろ、荷物搬送用の出入り口から警官達が雪崩を打って駆け込んできた。分厚いプロテクターを前身に身につけ、頭にはフルフェイスのヘルメット。手に持っている透明な分厚いシールドには、異対機動隊という文字が書かれている。
彼らこそが福島県警が誇る、福島県警異世界対機動隊だ。彼らは統率された素早い動きで陣形を組み、呆気にとられる金髪と刺青の男達を尻目に、出入り口を塞ぐ人の壁となる。異対機動隊の後ろには、特製の防弾ベストを着込み、シールドを持った制服、私服警官が並ぶ。彼らは捜査二課、地域課、そして、応援に駆けつけた捜査一課の警官だ。東洞もその中におり、彼は今回の検挙に自ら手を挙げて参加した。武力に秀でたアルミトスを相手にするのだ、彼らの顔には緊張の色がありありと浮かんでいた。普段から凶悪犯を相手にしている東洞も、大きな脂汗を流している。
「お、おい。どういうことなんだよ、兄弟」
明善に手を掴まれたままの刺青は、縋るような眼で明善を見つめる。その視線に対し、明善は正面から見つめ返す。
「騙してすまない。俺達は異犯対、警察だ」
「け、けいさつ? この世界の治安維持組織か? なんで……」
惚ける刺青を、金髪は怒鳴りつける。
「まだわからないのか! その二人は客じゃなくて囮だ! 俺達を炙り出すための。俺達を拘束するつもりなんだよ!」
金髪の言葉に明善は頷く。
「その通りだ。俺達はお前達を逮捕しに来た」
「そ、そんな。俺はあんた達を信じたのに……」
「どうやら、お前は純粋な人間のようだ。初対面の俺達をあっさり信じてくれて。正直、騙して申し訳なかったと思うよ。俺は荒事は御免でね。大人しく投降してくれないか、兄弟?」
「ふ、ふざけんな!」
刺青は掴まれていない左手をポケットに入れ、刃渡り五センチほどのナイフを取り出す。左手を勢いよく振り、ナイフの鞘を飛ばし外す。剥き出しになった刀身を、刺青の手を掴んでいる明善の右腕目がけて振り下ろそうとする。
「残念だよ」
まさに一瞬。瞬きする間ほどの時間で、明善は腰に隠していたホルダーから拳銃を抜き、刺青の男に向かって引き金を引く。銃口から飛び出したのは、鉛の弾丸ではない。先端が鋭く尖った筒のようなもの。それは高速で銃口から飛び出し、刺青の腹部に刺さった。
「が、ぐあああああ!」
瞬間、刺青は苦悶の表情を浮かべ、足から崩れ落ちた。声を漏らしながら地面をのたうち回る。
明善が使用したのは、テーザー銃と呼ばれるもの。非殺傷の武器であり、相手の体に電極を打ち込み、電撃を流し無力化する。多くのテーザー銃は電極と銃身がワイヤーで繋がっており、銃身から電撃を流す。だが、明善が使用したのは最新型であり、ワイヤレスで連射が可能。
警察官は細かい規程があるものの、銃の使用が許されている。だが、異世界人に対しては原則禁止だ。理由は一言で言ってしまえば、外交。もし、異世界人を射殺してしまった場合。こちらの世界、日本の価値観では止むを得ない判断だとしても、向こうの世界では許されざる行為ということがある。他の世界との外交問題を避けるため、異世界人に対し日本の警察はテーザー銃を使用する。
彼らこそが福島県警が誇る、福島県警異世界対機動隊だ。彼らは統率された素早い動きで陣形を組み、呆気にとられる金髪と刺青の男達を尻目に、出入り口を塞ぐ人の壁となる。異対機動隊の後ろには、特製の防弾ベストを着込み、シールドを持った制服、私服警官が並ぶ。彼らは捜査二課、地域課、そして、応援に駆けつけた捜査一課の警官だ。東洞もその中におり、彼は今回の検挙に自ら手を挙げて参加した。武力に秀でたアルミトスを相手にするのだ、彼らの顔には緊張の色がありありと浮かんでいた。普段から凶悪犯を相手にしている東洞も、大きな脂汗を流している。
「お、おい。どういうことなんだよ、兄弟」
明善に手を掴まれたままの刺青は、縋るような眼で明善を見つめる。その視線に対し、明善は正面から見つめ返す。
「騙してすまない。俺達は異犯対、警察だ」
「け、けいさつ? この世界の治安維持組織か? なんで……」
惚ける刺青を、金髪は怒鳴りつける。
「まだわからないのか! その二人は客じゃなくて囮だ! 俺達を炙り出すための。俺達を拘束するつもりなんだよ!」
金髪の言葉に明善は頷く。
「その通りだ。俺達はお前達を逮捕しに来た」
「そ、そんな。俺はあんた達を信じたのに……」
「どうやら、お前は純粋な人間のようだ。初対面の俺達をあっさり信じてくれて。正直、騙して申し訳なかったと思うよ。俺は荒事は御免でね。大人しく投降してくれないか、兄弟?」
「ふ、ふざけんな!」
刺青は掴まれていない左手をポケットに入れ、刃渡り五センチほどのナイフを取り出す。左手を勢いよく振り、ナイフの鞘を飛ばし外す。剥き出しになった刀身を、刺青の手を掴んでいる明善の右腕目がけて振り下ろそうとする。
「残念だよ」
まさに一瞬。瞬きする間ほどの時間で、明善は腰に隠していたホルダーから拳銃を抜き、刺青の男に向かって引き金を引く。銃口から飛び出したのは、鉛の弾丸ではない。先端が鋭く尖った筒のようなもの。それは高速で銃口から飛び出し、刺青の腹部に刺さった。
「が、ぐあああああ!」
瞬間、刺青は苦悶の表情を浮かべ、足から崩れ落ちた。声を漏らしながら地面をのたうち回る。
明善が使用したのは、テーザー銃と呼ばれるもの。非殺傷の武器であり、相手の体に電極を打ち込み、電撃を流し無力化する。多くのテーザー銃は電極と銃身がワイヤーで繋がっており、銃身から電撃を流す。だが、明善が使用したのは最新型であり、ワイヤレスで連射が可能。
警察官は細かい規程があるものの、銃の使用が許されている。だが、異世界人に対しては原則禁止だ。理由は一言で言ってしまえば、外交。もし、異世界人を射殺してしまった場合。こちらの世界、日本の価値観では止むを得ない判断だとしても、向こうの世界では許されざる行為ということがある。他の世界との外交問題を避けるため、異世界人に対し日本の警察はテーザー銃を使用する。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
ベスティエンⅡ【改訂版】
花閂
ライト文芸
美少女と強面との美女と野獣っぽい青春恋愛物語、2つ目。
恋するオトメと武人のプライドの狭間で葛藤するちょっと天然の少女と、モンスターと恐れられるほどの力を持つ強面との、たまにシリアスたまにコメディな学園生活。
人間の女に恋をしたモンスターのお話が
ハッピーエンドだったことはない。
鐵のような両腕を持ち
鋼のような無慈悲さで
鬼と怖れられ
獣と罵られ
己の性を自覚しながらも
恋して焦がれて
愛さずにはいられない。
ごめんなさい、全部聞こえてます! ~ 私を嫌う婚約者が『魔法の鏡』に恋愛相談をしていました
秦朱音@アルファポリス文庫より書籍発売中
恋愛
「鏡よ鏡、真実を教えてくれ。好いてもない相手と結婚させられたら、人は一体どうなってしまうのだろうか……」
『魔法の鏡』に向かって話しかけているのは、辺境伯ユラン・ジークリッド。
ユランが最愛の婚約者に逃げられて致し方なく私と婚約したのは重々承知だけど、私のことを「好いてもない相手」呼ばわりだなんて酷すぎる。
しかも貴方が恋愛相談しているその『魔法の鏡』。
裏で喋ってるの、私ですからーっ!
*他サイトに投稿したものを改稿
*長編化するか迷ってますが、とりあえず短編でお楽しみください
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
夫が離縁に応じてくれません
cyaru
恋愛
玉突き式で婚約をすることになったアーシャ(妻)とオランド(夫)
玉突き式と言うのは1人の令嬢に多くの子息が傾倒した挙句、婚約破棄となる組が続出。貴族の結婚なんて恋愛感情は後からついてくるものだからいいだろうと瑕疵のない側の子息や令嬢に家格の見合うものを当てがった結果である。
アーシャとオランドの結婚もその中の1組に過ぎなかった。
結婚式の時からずっと仏頂面でにこりともしないオランド。
誓いのキスすらヴェールをあげてキスをした風でアーシャに触れようともしない。
15年以上婚約をしていた元婚約者を愛してるんだろうな~と慮るアーシャ。
初夜オランドは言った。「君を妻とすることに気持ちが全然整理できていない」
気持ちが落ち着くのは何時になるか判らないが、それまで書面上の夫婦として振舞って欲しいと図々しいお願いをするオランドにアーシャは切り出した。
この結婚は不可避だったが離縁してはいけないとは言われていない。
「オランド様、離縁してください」
「無理だ。今日は初夜なんだ。出来るはずがない」
アーシャはあの手この手でオランドに離縁をしてもらおうとするのだが何故かオランドは離縁に応じてくれない。
離縁したいアーシャ。応じないオランドの攻防戦が始まった。
★↑例の如く恐ろしく省略してますがコメディのようなものです。
★読んでいる方は解っているけれど、キャラは知らない事実があります。
★9月21日投稿開始、完結は9月23日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
ファナティックテゥルナ 〜僕のことを愛玩動物扱いする令嬢たちのエロエロな本性〜
鮭茶漬 梅茶
ファンタジー
只野 戦人は、性欲が異常に強いこととアソコのサイズがご立派なこと以外は平凡な少年だった。
ある日、ちょっとした事故によって性欲の高さが露見し、年下の天才少女に半ば強制的に元女子校に転校させられ。ある実験の手伝いとしてMMOゲームをやらさせられることになる。
戦人は、現実ではパシリとして、ゲーム内では彼をモデルとした様々なバトラとして、令嬢たちに関わっていく。
戸惑いと罪悪感を感じながらも、ゲームだからと様々な行為を令嬢に行って性癖を暴いていくのだが、気づけば現実での彼女たちの様子も変わっていってーー。
婚約破棄ですか? 優しい幼馴染がいるので構いませんよ
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のアリスは婚約者のグリンデル侯爵から婚約破棄を言い渡された。
悲しみに暮れるはずの彼女だったが問題はないようだ。
アリスには優しい幼馴染である、大公殿下がいたのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる