異世界犯罪対策課

河野守

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第一章 女子高生行方不明事件

第三十二話

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「それであんたら、リベレーションを買いたいって?」
 ポテチの食べカスを口の周りに付けながら、刺青の男はそう明善に尋ねた。明善が自分の口元をゆびさし指摘してやると、彼はハニカミながら口元を拭う。
「ええ。俺達は沖田さんの友人で、彼から聞きまして。なんでもスンゲーヤツだと」
「まあな。こっちの世界でも薬物はあるが、比べ物にならないぜ」
 金髪は刺青の脇腹を軽く小突いた。
「おい、不用意に喋るな!」
 金髪はという言葉を発したことを、責めているのだろう。
 明善は心配いらないと、胸の前で両手を振って見せる。
「ああ、大丈夫ですよ。は大まかに沖田さんから聞いてますから」
「ほら。すでに俺達のことを知っているんだから。そう神経質になるなよ」
 刺青は豪快に笑いながら、金髪の肩を叩いた。
 明善は異世界人二人を観察。
 どうやら、刺青の男の方は結構フレンドリーであり、そして口が軽い。一方の金髪は用心深い性格のようだ。
 ……聞き出すなら刺青からだな。
 明善は刺青の男に狙いを定め、話しかける。
「それより、リベレーションのことなんですが」
「ああ、すまねえな。そうだった。それでどれくらい欲しい?」
「とりあえず俺と彼女の分で……そうだな、二十袋ぐらいくれませんかね?」
「一人十袋か。初めてなのに随分と欲張るな。まあ、あまり吸い過ぎるなよ。気分が高揚して、少し暴れたりするかもしれないし」
 どこが少しだよ。とんでもない物を、この世界で売りやがって。
 内心苛つきながらも、明善は顔には出さない。
「ええ。わかってますよ。ああ、そうそう。もうひとつ聞きたいことがありまして」
「聞きたいこと? なんだ?」
「以前、沖田さんに女性物の下着やシャンプーなどを頼みましたよね」
 刺青の男は少し考えた後、「ああ、あれか!」と思い出す。
「確かに沖田さんに色々と買い物を頼んだぜ」
「もしかして、女性の方がいるのですかね?」
「ああ、いるぜ」
 刺青は視線を後ろに向ける。明善はすかさずそれを追う。刺青の視線の先には、休憩室と書かれたプレートの部屋。その名の通り、工場の従業員が休憩するための部屋だったのだろう。
 アルミトスは異世界への遠征に行く際、女性をメンバーには入れない。女性は人口を増やし国を増強するために必要であり、保護すべき対象。遠征に参加させれば遠征先で死亡したり、亡命するかもしれない。
 つまり、あの休憩室にいるのはアルミトスの人間ではない。我妻和奏がいるはずだ。
「色々と大変でしょう? ただでさえ、こちらでは買い物も目立たないよう気をつけないといけないのに」
「まあな」
「同じ女性がいるから、何か困ったら相談してください」
「遠慮しなくていーすよ」
 愛美は異世界人達に向かって、親指を立てウインクをして見せる。その様子に刺青は苦笑。
「ははは。そりゃいい。これから色々頼むわ」
「りょーかいでーす」
「じゃあ、リベレーション取ってくるから。ここで少し待っててくれ」
 異世界人二人はそう言い残し、彼らが先ほど出てきた事務所に入った。
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