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命の儚さ
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敵の奇襲は魔法を使った爆発攻撃だったが、敵の部隊も一応騎士団ではあるみたいだ。我が国の騎士団よりもだいぶ弱いらしいのだけど。
しかし、騎士達の中にやはりデーモンが何十体も混じっている。そこは我が師団と異なるポイントだ。このデーモン達も先日宮殿を襲った個体と同様に普通のデーモンよりも強いのだろうか。だとしたら相当厄介だ。
緊張で、思わず心臓の動きが速くなる。ダメだ。落ち着け、自分! リーダーの自分がこんなことでどうするんだ。俺は常に冷静沈着でいないといけない。
「魔膜を絶対に死守しろ! 敵の領土まで進撃するな!」
よし。この調子だ。俺は師団長としてみんなを指揮すると、動揺が走る師団の体勢の建て直しを図った。俺の指示通り、騎士達はひたすら魔膜に張りついて闘った。厳密にいうと、魔膜が損壊しないように、敵側の領土へ少し出て、魔膜を守るための闘いを行った。
やっぱり、ギルバート帝国の騎士団は強い。奇襲から身を立てなおした後は、ニエベスの騎士団を一切寄せ付けなかった。よし、ここらで。俺は馬に乗ったまま、アクアミスリルを振り回した。
「覚醒アクアソード!」
もうこの頃になると、俺は以前よりもアクアミスリルを上手く使いこなせるようになっていたため、前よりも強力な水の分身を無数に放てるようになっていた。
「グボボ…!」
敵は全滅した。半数が悶え苦しみながら、無惨に倒れていく。俺は思わず目を伏せた。
戦闘に勝利したのはもちろん、俺の「覚醒アクアソード」のおかげというわけではなく、味方の騎士達の頑張りのおかげだと思う。かなり強い騎士団だ。ギルバート帝国も、これなら安泰なのではないか。
「やったー!」
「やったな、俺ら!」
「無敵だ無敵だ! へっへっへ!」
仲間達は口々に叫び、勝利の喜びを露わにした。腕を組み、抱き合い、それぞれの騎士達の健闘を讃え合う。が、しかし、そんな中で1人、悲しみの声を上げる者もいた。
「ミューレ!」
1人が叫んだ。「ミューレ」と呼ばれた男は、頭から血を流して倒れていた。近づいて様子を見てみるが、心臓は止まっていた。俺はつい先週、この「ミューレ」という男と言葉を交わしたばかりだった。その時は、いま彼がこんな姿になって、帰らぬ人となることは予想だにしなかった。
俺は馬から降り、ミューレを抱き抱えた。こんな大きな体を持っていても、「死」を前にしたら誰もが無力。俺は命の儚さを知り、闘うことの恐ろしさを知った。
しかし、そんなことについていちいち考えている暇もないほど、それから次々に戦闘は続き、次々と仲間は命を落とした。俺達は、魔膜を防衛することで精一杯だった。
しかし、騎士達の中にやはりデーモンが何十体も混じっている。そこは我が師団と異なるポイントだ。このデーモン達も先日宮殿を襲った個体と同様に普通のデーモンよりも強いのだろうか。だとしたら相当厄介だ。
緊張で、思わず心臓の動きが速くなる。ダメだ。落ち着け、自分! リーダーの自分がこんなことでどうするんだ。俺は常に冷静沈着でいないといけない。
「魔膜を絶対に死守しろ! 敵の領土まで進撃するな!」
よし。この調子だ。俺は師団長としてみんなを指揮すると、動揺が走る師団の体勢の建て直しを図った。俺の指示通り、騎士達はひたすら魔膜に張りついて闘った。厳密にいうと、魔膜が損壊しないように、敵側の領土へ少し出て、魔膜を守るための闘いを行った。
やっぱり、ギルバート帝国の騎士団は強い。奇襲から身を立てなおした後は、ニエベスの騎士団を一切寄せ付けなかった。よし、ここらで。俺は馬に乗ったまま、アクアミスリルを振り回した。
「覚醒アクアソード!」
もうこの頃になると、俺は以前よりもアクアミスリルを上手く使いこなせるようになっていたため、前よりも強力な水の分身を無数に放てるようになっていた。
「グボボ…!」
敵は全滅した。半数が悶え苦しみながら、無惨に倒れていく。俺は思わず目を伏せた。
戦闘に勝利したのはもちろん、俺の「覚醒アクアソード」のおかげというわけではなく、味方の騎士達の頑張りのおかげだと思う。かなり強い騎士団だ。ギルバート帝国も、これなら安泰なのではないか。
「やったー!」
「やったな、俺ら!」
「無敵だ無敵だ! へっへっへ!」
仲間達は口々に叫び、勝利の喜びを露わにした。腕を組み、抱き合い、それぞれの騎士達の健闘を讃え合う。が、しかし、そんな中で1人、悲しみの声を上げる者もいた。
「ミューレ!」
1人が叫んだ。「ミューレ」と呼ばれた男は、頭から血を流して倒れていた。近づいて様子を見てみるが、心臓は止まっていた。俺はつい先週、この「ミューレ」という男と言葉を交わしたばかりだった。その時は、いま彼がこんな姿になって、帰らぬ人となることは予想だにしなかった。
俺は馬から降り、ミューレを抱き抱えた。こんな大きな体を持っていても、「死」を前にしたら誰もが無力。俺は命の儚さを知り、闘うことの恐ろしさを知った。
しかし、そんなことについていちいち考えている暇もないほど、それから次々に戦闘は続き、次々と仲間は命を落とした。俺達は、魔膜を防衛することで精一杯だった。
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