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オリジナルストーリー

フェチを受け入れること

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恋人の秘密って聞ける?

普通は簡単には聞けないと思う。
聞く方も聞かれる方も幻滅を恐れるから。

けど逆に言えば、受け入れさえすれば、また一つ親密度が上がる。


私は角野すみの游子、隅っこで一人読書をするような目だなず内気な女子生徒だった。

勉強は本当に真ん中ぐらいの成績で、運動も女子の中での平均ぐらい。
容姿はそれなりきれいでいたつもりだけど、周りの女子たちの方がとてもかわいい。
自分からでも相手からでもわかるぐらいのコミュ障で、友達もいない。

何かが突出してるわけではない、本当に目立たない位置にいる存在だった。

そんなある日、家に帰ろうと机の中のテキストを直していると…。

「ん…?」

手のひらに入るぐらいに小さく、かつおしゃれに折られた紙が入ってた。

紙単体で机の中に入れることなんてほとんどないし、ごみだったとしてもおり方がきれいすぎる。

開けやすいようになっているところがあったので、そこから開いてみる。
完全に開くと一文だけ書かれていた。

『校舎裏で待ってる。』

習字でも習っていたかのようなとてもきれいな字だ。
字をみると女子っぽいけど、言葉的には男子っぽい。

(誰からだろう…しかも私に…。)

地味な私は、普段の学校生活の中で話しかけられるとしたら、グループワークの時だけだ。
その限られた接触機会で私に用事なんてできるのだろう、そういう疑問が過った。

「…予定はないし…。」

帰っても暇だと思い、私は校舎裏に向かうことにした。


「こんにちは。」
「天空くん?」

天空あまぞら輝光きこう、女子生徒の中で人気のある男子生徒。
私の耳に届くぐらいには人気があって、漫画でありそうなハーレム状態が見れる。

男子の一部からは嫉妬されているが、その嫉妬を押し返すほどにスペックが高い。
一言で表すな文武両道、私の高校で最も完璧な存在に近いと思う。

けど、私自身は彼と関わったことはない。

「何の用ですか?」

私はコミュ障が発動しないように、感情を殺しつつ発した。

「角野さん、その…よかったら、僕と付き合ってくれませんか?」
「…え?」

思考が追い付かない。
え?今、なんて…?

「急すぎてすぐには理解できないと思うんですけど、僕は君が好きです。」
「あ、ああ…。え、えっと…。」

こんなの感情が殺せるわけがない。
「付き合う」「好き」、このコンボで、私はコミュ障に戻らざるを得なかった。
顔が熱い。

「あぁ、えっと、ほんと急でごめんなさい…?返事はあとでもいいので。」
「あ、あの…。」

私は何とか理性を保ちつつ話す。

「わ、私が好きって、ど、どういうところが…?」
「えっと…最初は、その、見惚れてしまって。」
「見惚れる…?」
「一瞬だけ、髪の間から顔が見えて…よく見れば見るほどきれいだと思って。」
「!?!?~~///」

そういう誉め言葉…慣れてない…。
思考がまとまらない。
私は今、褒められたの…?
顔が熱くなるのを強く感じた。

「少し失礼するね?」
「…え?…!?!?」

長い前髪を手で挙げられる。
私の顔は、前髪が長いせいで見えづらいので、顔を見るためだろう。
でも…今は…恥ずかしい…。

「やっぱり、きれいです。」
「!?!?」

二度目のきれいに、さらに理性を削がれる。

「それから、気になって仕方がなくなってしまって、どうにかして角野さんを知りたいと思ってたんです。」
「…。」
「覚えていませんか?一度だけ、グループワークで一緒になったと思います。」
「グループワーク…?」

確かに一度だけ天空くんと一緒になった気がする。
だけどそのときは他のメンバーもいた。

「あの時、角野さんがとても優しい人だと分かって。」
「優しい…?」
「資料探しに手伝ってくれたので。」
「…あぁ。」

図書館で、必要な資料を私が見つけた時だ。
他のメンバーがやる気なさげなひとだったため、動かざるを得なかったのだ。
それを…。

「…。」
「えっと、連絡先、交換させてもらってもいいですか…?」
「え、あ、はい…。」

終始片言でがちがちになっていた私は、ふと意識を高める。

「あ、すみません、もうこんな時間ですね。早く帰りま…」
「付き合い…たいです…。」
「え?」
「私も…天空くんと…付き合いたい…です…。」
「!!」

こんな感じで、私たちは付き合った。


このような形で始まる恋愛は、失敗することもあるのだが、私も天空くんも純愛のようなものだったので、その心配はなかった。

倦怠期すらもこともなく、高校生活中ずっと付き合っていた。
最初こそ隠していようと思っていたけど、それもだんだん難しくなってきて、最終的には誰もが知るカップルとなった。

私は、天空くんと並ぶにはあまりにも不釣り合いだと、自分でも思っていたので、今まで平凡に生きていた分、人一番努力した。

これも、恋人関係の力なのかもしれない。

そしてその力のおかげか、私たちはお互い努力して、見事に同じ大学の同じ学部同じ学科に両方合格できた。
このときは本当に嬉しかった。


高校卒業ある日、受験が入ってせいで久しぶりとなった輝高くんの家で遊んでいると…。

「…ちょっと気になっちゃったんだけどさ…游子って、何か、普段言えないような何かってあったりする…?」
「?」

おそらく回りくどい表現をしたのかもしれないが、私は意味を理解できなかった。

「その…フェチとか。」
「フェ…チ…?」

この時の私は、そういうものはかけらもなかったため、概念自体が分からなかった。

「えっと…フェチ?って何ですか?」
「え?ん~。」

彼は困っている様子だった。

「えっと……調べますね」
「あ、うん。」

私は調べた方がいい気がしたので、調べることにした。

「声フェチ」「足フェチ」「匂いフェチ」「手フェチ」「腋フェチ」「胸フェチ」

「/////」

調べれば調べるほど私の顔は赤くなった。

「こ、こういうのが…好きなん、ですか…?」
「…やっぱり…幻滅する…?」
「…いえ…私、こういうって全く知らないので…むしろ…もっと知りたい…かも…です…。」

自分で何言ってるのか分からなくなり、さらに恥ずかしくなった。

「ち、ちなみに…。」
「…?」
「輝高くんは…何フェチなんですか…?」
「あ、え、えっと…。」

ものすごく躊躇いながらも、目をそらしつつ彼は答える。

「そこにはないやつなんだけど…その…くすぐりフェチ…なんだ…。」
「…調べていいですか…?」
「いいよ。」

知りたいのは本音だったので、私は早速調べてみる。

文字だけではわかりづらいので画像検索する。

「………/////!!!」

お手本のようにみるみる赤くなる顔。
私って本当に耐性がないんだなと思った。

「えっと、どう…?」
「…。」

それでも好奇心は働く。
顔を真っ赤にしながらも、下にスクロールして画像をどんどん見る。
正直、理性がどこかに行きそうだった。

もちろん健全なものもあるが、その中に混じる"そういう"画像が見えると、途端に顔が赤くなる。

(輝高くんは…これ…が…うう…)

「ふぅ~…。」

一度落ち着いてみた。

「…。」
「あ、あの…。」
「…輝高くんは…どっちが好きなんですか…?」
「…え?」

人の裏側を知れば、幻滅の可能性は確かにある。
だが幻滅の反対があるとすれば、それは「好奇心」。
恋人のまだ知らない部分を知れるという幸せは、「好奇心」から来ると私は思う。

「…言わせるの…?」
「…。」

少し強い口調になってしまった。
けど、こうでもしないと恥ずかしさでどうにかなりそうだった。

「輝高くんは…くすぐりたいのですか?くすぐられたいのですか?」
「…くすぐりたい…です…。」
「…。」

私は少し止まって、彼に背中を向けて腕を上げる。

「…え?」
「もっと教えてください。興味があります。私をくすぐってください。がんばって…耐えます…。」
「…。」

背を向けているため、彼の顔は見えない。
だけど、近づいてきたのは分かった。

私はなるべく腋を見ないようにした。

サワ…。

「ひう…!」
「あ、えっと、ほ、ほんとうにいいの…?」
「だ、大丈夫です…。それにさっきのは、ただ慣れてないだけです。」
「…。」

サワサワ…。

「…!//」

優しく、とても優しく、服を通して肌に触れるか触れないかのぎりぎりを責めてくる。

サワサワサワサワ…。

「…ふふ//」

彼は無言、私は声をもらしてしまう。

こしょこしょこしょこしょ…。

「んふふふ…//」

優しいまま、しかしちょっとずつ強度が増している。

こしょこしょこしょこしょ…。

「んひぃ!?ふふふ…//」

ある程度の強度に達した時、急に脇腹へ移る。
こしょばいというより、ぞわぞわする。

こしょこしょこしょこしょ…。

「んふふふ…ふふ…ふふふ///」

腋と腋腹を行ったり来たり。
いよいよ本当にくすぐったくなってきた。
そんな時に、彼は手を離す。

「はあ…はあ…。」
「大丈夫…?」
「…はい…。」
「…。」

こちょこちょこちょこちょ…。

「ひゃ!?あははははははは…!?」
「あれ?耐えるんじゃなかったのかい?」
「あはははははははは!それは!卑怯ですって!あははは!」

不意打ちで腋を思いっきりくすぐられ、私は思わず腋を閉じ、避けるように寝転がってしまう。
しかし、輝高くんはそれ追い、腋をくすぐり続ける。

「あははははははは!あははははははは!」

私は転げまわるぐらいしかできなかった。
何をやっても、腋から手が離れない。

結構力を込めて腋を閉じてるはずなのに、動くのをやめない彼の手。
それは、腋の中で、強くも弱くもない絶妙な力でうにゅうにゅ動く。

閉じてるからくすぐったい?
そんな風に思って少し緩めてみるが…。

「あははははははははははははは!」

やっぱりくすぐったい。
このくすぐったさから逃げられないと思った。

それでも、少しでもくすぐったさを抑えようとしてみる。

すると…。

「寝転がったら、足ががら空きになるよ?」
「はあ…え…?んふ…!あははははははははははは!!」

体勢を大きく変えて、両足をくすぐってきた。

膝を曲げられ、両足で動きを封じられ、先っぽしか動かせない足の裏を、彼はねちっこくサワサワとくすぐる。
寝転がってる状態で足が動かせないと、体を起き上がらせるのは難しい。
手も足にぎりぎり届かないので、あきらめざるを得ない状況だ。

それに…。

「あははははは!はあ…!はあ…!だめ…!力…!抜けちゃいます…!」

輝光くんのくすぐりは優しすぎて、くすぐったいのと同時に感じてしまう。

むずがゆさが体全身に来るため、段々と力が入らなくなってくる。

しかし、さすがにこんなことを言ったためか、輝光くんはくすぐりをやめた。

「はあ……はあ……はあ……。」
「ごめん、少しやりすぎたよ…。」
「ほんとですよ…。」

疲れすぎて、私はそのまま仰向けになる。

「…。」

くすぐられると体力もけずられ、興奮もさせられ、かなり疲れてしまう。
加えて、ずっと笑わされているため、息苦しい。

けど、これがフェチになる理由は分かるかもしれない。

言葉にはできないけど、「くすぐられたい」という気持ちがないわけではない。

「あの…。」
「…輝光くん…。」
「はい。」
「くすぐりって、奥が深いかもしれませんね。」

洗脳ではない。
ちゃんと自ら感じた上での判断。

(輝光くんになら…くすぐられたい…かも…。)

ただの一度だけ、されど、彼に堕とされたのだ。

「輝光くんのせいで、普通ではいられなくなりそうです…。」
「それは…すいません…。」
「…いいえ、大丈夫です。その代わり…。」
「?」
「私を堕とした責任は取ってください。私のルールの範囲で。」
「…はい。」

堕ちていくなら、急降下ではなくゆっくり、そして、堕ちすぎてはいけない。

くすぐりはいろんな種類がある。
肌を直接くすぐるとか、拘束してくすぐるとか、道具を使うとか。

私は、彼ならそれらは全然OKだ。

だけど、やりすぎると、私が壊れてしまう気がする。

そこらへんの折り合いは決めておきたかった。

「…これでいいですね?」
「わかった。」
「じゃあ、さっそく。」
「え?ちょっと!?あはははははははははは!!」
「そのルールだと、今日はまだいいよね?」
「そうだけど!そうだけど!!あはははははははははは」

彼は意外にずるがしこい。

この後、ちゃんとルールの範囲内で、私はへとへとになるまでくすぐられた。
これもまた、幸せな思い出。
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