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くすぐりサークル

第2話【信用はしてもらえてるかも】

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「…沙月さん、早くないですか?」
「確かに早いかもねー。けど、これが私の普通だから。」
「普通って…予定時間の1時間前に来るのが普通なんですか?」
「そういう灯篭君も、1時間前に来てるじゃん。」
「僕は時間を間違えただけですよ。」
「まあまあ、ここはカフェなんだし、ゆっくりしようよ。」
「そうですね。すみませーん!」

席に座って、俺はアイスコーヒーを注文した。

「そういえば灯篭君。」
「なんですか?」
「あのDVD、見てくれた?」
「!?」

あやうく、口に含んでいたコーヒーを吹きこぼすところだった。

「あー、ごめんね?急に聞いて。」
「いえ、大丈夫です…。見ましたよ、全部。」
「感想聞いてもいいかな?」
「刺激が強すぎると思いました。でもその分、かなり興奮しましたね。」
「でしょー!?」
「でしょーって…恥ずかしくないのですか?沙月さんの分もありましたけど…。」
「恥ずかしいけどー、2人に聞いたら、『見てもらうのも悪くはない』って。」
「露出狂か何かですか?」
「そうかもねー。ああでも、灯篭君が撮られるのが嫌ならもちろん撮らないよ。」
「くすぐられるのも嫌だと言ったら?」
「それでも全然大丈夫。というかそれがこのサークルのルールだからねー。くすぐりを行う上で、その人が嫌だと思ったことは絶対にしてはいけない。」
「なるほど。」

この前の説明を聞いた時から思っていたが、想像以上にしっかりしているサークルだ。
レポートも、ちゃんと研究しましたと言えるような内容をたくさん書いていて、このサークルの本気度が伺える。

「ところで…全部見たって言ったよね?」
「はい。」
「誰が一番好み?」
「ブフォオ!?」

2回目の爆弾発言は耐えられず、吹き出してしまう。

「だ、大丈夫!?」
「は、はい…大丈夫です…。」

彼女にはかけまいという意志で、即座に顔の向きを変えたものの、店の人を数人動かしてしまった。
何度か謝ってから再び席につき、話を戻す。

「誰が好み…と言われましても…映像で見るよりかは、実際にくすぐってからからじゃないと分かりそうにないです。正直、3人とも反応がよかったので。」
「なるほどー。ちゃんと自分で確かめるタイプかー。ちなみに、神楽ちゃんと遥香ちゃんもこのこと気にしてたから。」
「そ、そうなんですか?」
「『気に入ってもらえたら、もっとくすぐってもらえるかも』って思ってるらしくて。」
「ああ…そうですか…。」

心臓に悪い…。

「っと、そろそろ2人が来るかなー?」
「おはようございます。沙月さん、灯篭君。」
「お、おはよう…ございます…。」
「おはよう……あの、なんで神楽さんはそんなに顔真っ赤なんですか?」

2人がカフェに入ってきた時、神楽さんの顔が通常時よりもかなり赤くなっていた。

「神楽さんは、DVDを見られたことでずっと恥ずかしがってるんです。」
「だ…!だってぇ!恥ずかしいもん…!」
「でも、嫌ではないんですよね?」
「うぅ…それは…そうだけど…。」

どうやら1番の恥ずかしがり屋は神楽さんのようだ。
そのあと、ほんの少し雑談して、カフェを出た。


「おじゃまします。」
「いらっしゃーい。私だけの家だからお構いなくー。」
「家をわざわざ買ったんですか…。」

普通に広い家であることから、沙月さんのところは金持ちだとわかった。
それから…。

「これって…。」
「くすぐりグッズだよ。もともとは研究用に買おうってなったんだけど遊び用もほしいよねってなったの。」
「なるほど。」

確かに、ねこじゃらし(?)のようなものは、ブラシなどはネット通販などでもすぐに買える。

「それで、くすぐり大会ってどんなことするんですか?」
「そうなだねぇ…じゃあまず灯篭君のくすぐりを体験してみたかなあ。」
「いいですけど…人生の中で実際にくすぐるのって俺初めてですよ?」
「初めてでもくすぐったいのはくすぐったいから。じゃあえっと…灯篭君、まず誰からくすぐりたい?」
「その前に、どこをくすぐってほしいかだけ教えてください。」

3人それぞれの弱点があるため、どこをくすぐるかで誰を最後にするかぐらいは決めておきたいと思ったのだ。

「そうだねえ…全員固定で腋か腋腹ね。暴れちゃうだろうから、押さえるのはくすぐられない他の2人で。」
「分かりました。」

となると…順番は…。

「最初は沙月さんでお願いします。」
「私かぁ…てことは…灯篭君の決めた順番、大体察しがついたよ。」
「それが本当なら鋭いですね。」

順番の法則は腋が強い順、つまり、最初に選んだ沙月さんは、俺があのDVDから判断して一番腋が強いであろう人だ。

「じゃあ灯篭君、早速くすぐってね。」
「一応聞きますがどうやってくすぐれば?」
「2人が両手を押さえてくれるから、灯篭君は馬乗りしてくすぐればいいと思うよ。」
「馬乗り…いいんですか?」

正直、ほぼ初対面の相手にそこまで許可できるような信頼はないはずだが…。

「大丈夫大丈夫。実は私たち、新しく入る部員に関しては、その子がどういう人かこっそり観察するんだ。」
「…それってストーカーですよね?」
「違うよー。あくまで、近くで何気なく過ごしてるように見せて観察してるだけだよ。」

それをストーカーって言うんだよ。

「…まあいいです。つまり俺のことは信用してるということですよね?」
「そういうこと!」
「それならまあ…馬乗りはさせてもらいますよ。」
「思いっきりくすぐっても構わないからねー。」
「分かりました。」

いろいろな一線を超えても良い許可をもらったところで、俺たちは準備する。
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