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騎士気取り

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 使命感に燃えたジュードはなにかとアリアを優先するようになり、それは成長してからも続いた。

 異性に興味が出る年頃となり、見目の良いジュードにはすぐに恋人ができて、そのことをアリアも喜んでくれていたが……。


「ジュードに恋人ができたのは嬉しいけど、悲しいな。これまでずっと一緒だったのに、もう私を優先してはくらなくなっちゃうのね」


 そう表情を暗くするアリアの手をジュードは握る。


「何言ってるんだ。恋人ができたからって、俺はいつだってアリアが一番大事だ」

「ジュード……」

「だから、何かあればすぐに俺を呼んでくれ。飛んでくるから」


 ジュードにとってアリアは守らなければならないお姫様で、自分はお姫様を守る騎士なのだ。

 ジュードはその役割に酔いしれていた。
 だからこそ、例え彼女とのデートを予定していても、アリアが呼べばデートをドタキャンしてアリアの元に馳せ参じ、熱が出たと聞けば彼女よりもアリアを優先する。

 アリアの調子がいい時には、恋人とのデートにアリアを同伴させたりもした。

 甲斐甲斐しくアリアに尽くすジュードに、恋人が不満を募らせるのは当然というもの。
 すぐに別れを告げられた。
 しかし、見た目だけでなく人当たりもいいジュードにはすぐに次の恋人ができたので本人は自らの行いを顧みることはない。

 そしてまたアリアを優先しては同じことを繰り返すのだが、アリアの騎士気取りのジュードにとって、アリアを蔑ろにする恋人の方が受け入れがたい存在だった。


「まったく、どうしてどいつもこいつも分かってくれないんだ」

「きっと、嫉妬してるのよ。女の子は誰だって自分を優先して欲しいものだもの。私がもっと体が強かったらジュードに迷惑をかけなかったのに……」


 そう言って寂しそうに笑うアリアが、ジュードは痛ましくてならなかった。


「アリアは悪くない! 健康な体を持ってるくせに体の弱い相手のことを思いやれないあいつらが悪いんだ!」

「でも、ジュード、私怖いわ。いつかジュードに嫉妬した彼女達に何かされないかしら」

「それなら大丈夫だ。父さんが俺に縁談を持ってきたんだよ」

「縁談?」

「そう。相手は平民育ちだが、伯爵家の血を引くご令嬢でさ。その子との婚約が決まったんだ。俺は婿入りして伯爵になるんだよ!」

「ジュードが伯爵に!?」


 この時点ですでに多大な誤解が生じていたのだが、ジュードもそしてアリアも気付くことはなかった。


「俺が伯爵になったら今よりアリアを守ってやれる。なんたって伯爵だ。逆らえる奴なんかほとんどいないだろう?」

「ジュードすごい! 伯爵様になるなんて」

「へへへっ」


 照れくさそうに笑うジュードは、アリアのうっとりとした眼差しに気付いてはいなかった。


 ただの幼馴染みでしかなかった二人の関係に波紋が生まれたのはこの時かもしれない。




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