175 / 177
第百七十五話 クラス対抗戦 ルール
しおりを挟む「まずは皆さんに謝罪を。選出を決める方法を考えるまで時間がかかりました」
気落ちした様子のアシュリー先生なんて初めて見た。
朝の連絡事項を伝える時間。
クラスの面々が見守る中、真剣な面持ちで謝るアシュリー先生。
「アシュリーにゃ先生のせいじゃないにゃ! そんなに落ち込まないで欲しいにゃ!」
「そうです! アシュリー先生に落ち度などありません。決めきれなかったのは……僕たちにも問題がありますから」
「? なんですかベネテッドさん。ワタクシの顔に何かついていますの?」
「……いや、プリエルザ君が個人戦の代表になるだけでなく集団戦のリーダーもやりたいと言い出すから拗れた一面もある訳なんだが……自覚はないのか?」
「はぁ……?」
クラス委員長のベネテッドの疑問にも小首をかしげよくわかっていないという反応を返すプリエルザ。
(レリウスも手を焼いていたがプリエルザはアシュリーも悩ませる存在だな。勿論コイツだけが悪いわけじゃないんだが)
「あーあ、プリエルザが引っ掻き回さなきゃ代表なんてすぐ決まってたのによぉ」
「なんですの、ウルフリックさんまで! 貴方だって集団戦に出場するなら『誰かの下につくなんてまっぴらゴメンだ』ってゴネていたではありませんか! 自分だけを棚上げしないで下さいまし!」
「なんだと! この女……」
「まあまあ、二人共、落ち着いて……」
余計な口出しをしたウルフリックにまで飛び火した騒動をなんとか治めようと間に入るセロ。
それを皮切りになぜか紛糾していく教室内。
アシュリー先生に対する励ましの声に加えて代表は誰にするかでまた声が飛び交い一層騒がしくなる。
「静粛に」
教壇から響く冷たい声。
しかし、静かになった生徒たちを見るアシュリー先生の眼差しは冷徹なだけではなかった。
どこか変わらないものを見て安心するような安堵の含まれた瞳。
「コホンッ、それでは直近に迫ったクラス対抗戦ですが……選出について決めたいと思います。まずはルールのおさらいですね」
軽く咳払いで誤魔化したアシュリー先生の一言で始まった代表選出。
前提のルールを確認していく。
クラス対抗戦とは集団戦三戦と個人戦三戦、計六戦行い勝敗を分ける戦いだ。
それでいて一つのクラス内で集団戦、個人戦含めてどちらかには必ず参加しないといけない。
三つのクラスが総当りで戦い、累計の勝利数により最も優秀なクラスが決まる。
最終的に勝利数が同数の場合は新たに代表を一人選出し決着をつけることになる。
学園の同学年のクラスの間で行われ、課外授業と並んで学園の一大行事として大きな注目が集まる。
特に一学年では他クラスとの交流が少ないため、同じクラス以外の生徒の実力を直に観戦できる貴重な機会でもある。
「では集団戦のルールから」
集団戦は五対五の旗取り合戦の様相を呈している。
それぞれの陣地に配置された旗を相手に倒されないように守りつつ、相手陣地の旗を破壊する戦い。
当然戦いに赴く者には同じ班同士の連携力が求められ、旗を守る者、旗を倒す者、相手を撹乱する者など分担した役割を全うする力、刻一刻と変化する状況に臨機応変に対応する柔軟性も必要になる。
対して個人戦はシンプルだ。
クラス内での一個人としての実力の高さが試される一対一の代表での戦い。
唯一の懸念は怪我の問題。
集団戦、個人戦ともに怪我をする可能性は高い。
神妙な面持ちでアシュリー先生がその点について詳しく説明してくれる。
「クラス対抗戦では出場する皆さんに王国から特別に借り受けた専用の魔導具を装着していただきます。また後で時間を取ってレクチャーしますが使用方法は必ず熟知して戦いに望んで下さい。……この魔導具の扱いは慎重に行うことです。怠って無用な怪我をする者は私のクラスにはいない……そう信じていますよ」
対抗戦では天成器と闘技、魔法と相手を負傷させる可能性のある攻撃も可能だ。
当然リスクは高いがそこは王国最大の教育機関。
会場脇には複数の上級回復魔法の使い手が常に待機し、なにより怪我を未然に防ぐために対抗戦に参加する生徒全員に魔導具が貸しだされる。
衝撃防護の魔導具。
貴重な空間属性の魔石と風属性の魔石を核として作成されたこの魔導具は、装着した者の周囲に薄い空気の膜を貼り、ある程度までの衝撃を防いでくれる。
非常に便利で冒険者にも必須の魔導具に思えるが当然万能な物ではない。
まずもって作成するには品質の良い魔石が必要であり、最低でも二度クラスチェンジした魔物の魔石と素材を使用しなければならない。
それでいて高い魔導具作成の技術が要求されるかなり高価な魔導具。
それこそ国家ならともかくランク上位の冒険者でも所持している者はほんの一握りしかいないだろう。
そもそも魔石は天成器の強化にも使うため流通数自体少ない。
品質の良い物なら尚更だ。
魔導具が貴重かつ高価になるのは仕方がない側面がある。
そんな有用かつ貴重な魔導具だが、衝撃を防げるのはあくまである程度まで、しかも短時間のみである一定を超えた攻撃は防ぎ切れず、その防護も一度しか働かないという欠点もある。
さらに一度防護が発動すると衝撃の度合いによっては魔導具本体が破損する可能性もあり再利用が難しい。
要するにある一定までの攻撃を一度だけ防御できる非常に高価かつ使い道の限定された魔導具という訳だ。
そして、それに加えて制服の上からでも着用できる特別に誂えた防具を着込むことで致命的な怪我を避けるというのが学園の安全対策となる。
特に貸しだされる魔導具についてはアシュリー先生の期待を裏切らないためにも使用方法をしっかりと覚えておくべきだろう。
ルールの説明が終われば次は対戦相手。
これは事前に学園から組み合わせが発表されている。
「初戦の相手はフィルディナンドクラスです。これは事前に決まっていた事なので学園の一部ではすでに噂になっていましたね」
以前エリオンに詳しく教えてもらったマーガレットさん率いるフィルディナンドクラス。
しかし、俺たちアシュリークラスの対戦相手となるのはニつのクラスだ。
女帝マーガレット率いるフィルディナンドクラスと……もう一つ。
――――リリアンクラス。
すみません更新遅れます。
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

ゲームの悪役に転生した俺が、影の英雄ムーブを楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった
木嶋隆太
ファンタジー
ブラック企業の社畜だった俺は気が付けば異世界に転生していた。それも大好きだったゲームの悪役に……。このままでは将来主人公に殺されるという破滅の未来を迎えてしまうため、全力で強くなるための行動を開始する。ゲーム内知識を活かしながら、とにかく、筋トレ! 領民に嫌われたままも嫌なので、優しく! そんなことをしていると、俺の評価がどんどん上がっていっていき、気づけばどこに行っても褒められるような人間へとなっていた。そして、正体隠してあちこちで魔物を狩っていたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまい……おや? 様子がおかしいぞ?

神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~
波 七海
ファンタジー
※毎週土曜日更新です。よろしくお願い致します。
アウステリア王国の平民の子、レヴィンは、12才の誕生日を迎えたその日に前世の記憶を思い出した。
自分が本当は、藤堂貴正と言う名前で24歳だったという事に……。
天界で上司に結果を出す事を求められている、自称神様に出会った貴正は、異世界に革新を起こし、より進化・深化させてほしいとお願いされる事となる。
その対価はなんと、貴正の願いを叶えてくれる事!?
初めての異世界で、足掻きながらも自分の信じる道を進もうとする貴正。
最強の職業、無職(ニート)となり、混乱する世界を駆け抜ける!!
果たして、彼を待っているものは天国か、地獄か、はたまた……!?
目指すは、神様の願いを叶えて世界最強! 立身出世!

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜
心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】
(大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話)
雷に打たれた俺は異世界に転移した。
目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。
──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ?
──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。
細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。
俺は今日も伝説の武器、石を投げる!

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる