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思春期のはじまり
12歳と26歳 ②
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「マリアさん、別に僕は怒ってるわけでも責めてるわけでもないんだよ」
嘘だ。
「たださ、どうするのか気になるんだ。許嫁としてね」
シュヤンは先程から嘘ばかりついている。
手紙を隠したマリアを責めているし、顔には出さないが手紙の差出人の男には腸が煮えくりかえりそうなほど怒っている。
「断る」以外の選択肢をマリアに与える気もない。
顔を真っ赤にして泣きそうな表情を浮かべるマリアにゾクゾク感じながら、さらに責め立てる。
「ね?教えて?どうするの?」
「お、お断りします…」
そう小さな声でもじもじと言ったマリアの頭を撫でる。このもふもふで最高の触り心地の髪の毛がシュヤンは堪らなく好きだ。
「うん、偉いね」
マリアは俯きながら膝の上で手をもにもにしている。
駄目だ、楽しい。
子供から卒業しようとしている彼女は今、完全にシュヤンを異性として意識している。
(これは隠し事をしたお仕置きだから…)
心の中でそんな虐めるための言い訳をする。
「でも、なんでこの子はマリアさんのこと好きになったのかな」
「そんなこと…わかりませんよ…」
マリアは懸命に顔を背けるが、その分その可愛らしい耳がシュヤンから見える。
このふっくらとした愛らしい福耳を吸ったらどんな声を出すのか…そんな欲望を懸命に堪える。
「心当たりとかないの?」
「ないです…」
「まあでもマリアさんは可愛いからね」
そう言うと耳まで真っ赤になる。
(ああ可愛い…可愛いよ…)
「ねえマリアさん、」
今はピンクに染まっている丸くて柔らかい頬っぺたを撫でる。なんでこの人は全身どこを触ってもふわふわなんだろう。
「キスしようよ」
「はっ?へ?!き?!」
シュヤンの思いがけない言葉に驚いたマリアは可愛らしい耳を可愛らしい狼の耳に変えた。ついでに尻尾まで生えてきている。
「で、でも…そんな…だって…」
動揺してまともな言葉が出てこないようだ。
シュヤンはそんなマリアに畳み掛ける。
「ね、いいでしょ?
もしマリアさんが他の男と付き合うことになっても、ファーストキスは僕が貰ったって思えばなんとか正気を保てるかもしれない」
まあ、ほんの少し可能性が上がるだけに過ぎないが。
「で、でも…」
「大丈夫、僕がちゃんとリードするから」
そう言って唇に指をはわせると、信じられないくらい柔らかい。
断られても絶対キスする。こんなの触ってしまったらそうせずにはいられない。
彼女の体温が上がっていることが服越しでもわかる。手がしっとりとして、また首筋から汗が流れている。
その顎を掴むと、案外抵抗なくこちらを向いた。
金色の目は伏せて下を向いている。
我慢の限界だ。
限界まで己を抑制しながら唇を重ねる。
(あっ…やっっっっっばいこれ…)
柔らかすぎる。ずっとくっついていたい。もはや食べてしまいたい。
一瞬でそんな感情が全身を駆け巡るが、鋼の精神でなんとか自ら離れる。
マリアはぽーっと蕩けるような顔をしていた。
(いやほんとやばいこれはやばい)
理性が働くうちに撤退しないと何をしでかすかわからない。
マリアの身体はまだまだ子供だ。シュヤンがこのテンションのまま好きにしたら壊れてしまう。
「ありがとう、ごちそうさま」
それだけ言うと惚け続けるマリアを置いて早足に部屋を出る。
オリビアやシオンとすれ違ったが無言で家を飛び出した。
一方、残されたマリアは表面上は極優しい触れるだけの口づけのされた自分の唇に触れる。
凄くぽわぽわする気持ちだ。
「…変なの……」
嘘だ。
「たださ、どうするのか気になるんだ。許嫁としてね」
シュヤンは先程から嘘ばかりついている。
手紙を隠したマリアを責めているし、顔には出さないが手紙の差出人の男には腸が煮えくりかえりそうなほど怒っている。
「断る」以外の選択肢をマリアに与える気もない。
顔を真っ赤にして泣きそうな表情を浮かべるマリアにゾクゾク感じながら、さらに責め立てる。
「ね?教えて?どうするの?」
「お、お断りします…」
そう小さな声でもじもじと言ったマリアの頭を撫でる。このもふもふで最高の触り心地の髪の毛がシュヤンは堪らなく好きだ。
「うん、偉いね」
マリアは俯きながら膝の上で手をもにもにしている。
駄目だ、楽しい。
子供から卒業しようとしている彼女は今、完全にシュヤンを異性として意識している。
(これは隠し事をしたお仕置きだから…)
心の中でそんな虐めるための言い訳をする。
「でも、なんでこの子はマリアさんのこと好きになったのかな」
「そんなこと…わかりませんよ…」
マリアは懸命に顔を背けるが、その分その可愛らしい耳がシュヤンから見える。
このふっくらとした愛らしい福耳を吸ったらどんな声を出すのか…そんな欲望を懸命に堪える。
「心当たりとかないの?」
「ないです…」
「まあでもマリアさんは可愛いからね」
そう言うと耳まで真っ赤になる。
(ああ可愛い…可愛いよ…)
「ねえマリアさん、」
今はピンクに染まっている丸くて柔らかい頬っぺたを撫でる。なんでこの人は全身どこを触ってもふわふわなんだろう。
「キスしようよ」
「はっ?へ?!き?!」
シュヤンの思いがけない言葉に驚いたマリアは可愛らしい耳を可愛らしい狼の耳に変えた。ついでに尻尾まで生えてきている。
「で、でも…そんな…だって…」
動揺してまともな言葉が出てこないようだ。
シュヤンはそんなマリアに畳み掛ける。
「ね、いいでしょ?
もしマリアさんが他の男と付き合うことになっても、ファーストキスは僕が貰ったって思えばなんとか正気を保てるかもしれない」
まあ、ほんの少し可能性が上がるだけに過ぎないが。
「で、でも…」
「大丈夫、僕がちゃんとリードするから」
そう言って唇に指をはわせると、信じられないくらい柔らかい。
断られても絶対キスする。こんなの触ってしまったらそうせずにはいられない。
彼女の体温が上がっていることが服越しでもわかる。手がしっとりとして、また首筋から汗が流れている。
その顎を掴むと、案外抵抗なくこちらを向いた。
金色の目は伏せて下を向いている。
我慢の限界だ。
限界まで己を抑制しながら唇を重ねる。
(あっ…やっっっっっばいこれ…)
柔らかすぎる。ずっとくっついていたい。もはや食べてしまいたい。
一瞬でそんな感情が全身を駆け巡るが、鋼の精神でなんとか自ら離れる。
マリアはぽーっと蕩けるような顔をしていた。
(いやほんとやばいこれはやばい)
理性が働くうちに撤退しないと何をしでかすかわからない。
マリアの身体はまだまだ子供だ。シュヤンがこのテンションのまま好きにしたら壊れてしまう。
「ありがとう、ごちそうさま」
それだけ言うと惚け続けるマリアを置いて早足に部屋を出る。
オリビアやシオンとすれ違ったが無言で家を飛び出した。
一方、残されたマリアは表面上は極優しい触れるだけの口づけのされた自分の唇に触れる。
凄くぽわぽわする気持ちだ。
「…変なの……」
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