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肆章 氷雪の国・スノーメイル
三十話、取り敢えず、全員無事
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「お、ライハも起きたか」
「ん。良い匂いする」
「今日はトマトシチューにパン、サラダです。デザートにチョコレートプリンをご用意してます」
トマトシチューは鶏肉や野菜。それに豆類が多く入った具沢山で、パンはクロワッサンやバゲットとか、色んな種類がある。マキアがお留守番中にパンを焼いてくれたみたいで、良い匂いが辺りを包んでる。プリン作りは私もお手伝いをした。上手く出来てると良いんだけど…
「うまそ!」
「野菜は、此処の連中達から貰ったんじゃ!何でも、畑仕事を手伝ってくれたオマエ達への御礼なんじゃと」
そっか、この前魔獣避けとか土の栄養補給の魔術とかを掛けた所かな。結構色々な人のお家を巡ったから、何処の人までは分からないけど。
「他にも、子供達からお花を頂きました。遊んでくれてありがとう。だそうです」
「お前等あんなに忙しかったのにそんな依頼やってたのか」
「嗚呼。いつもこんな感じだ」
兄さんは子供達と追いかけっことかをして、私はお花で押し花を作ったりしたんだよね。花冠を上げたら凄く喜んでくれた。
「お前達は良く好かれるな。俺達も依頼を引き受けた時に良く噂を聞く」
「ヴィクトールさん。もう腕は平気ですか?」
「問題無い。フウカの処置が適切だったからな。大事に至らなかった。ありがとう」
ヴィクトールさんの手が私の頭に置かれた。優しく左右に動く手には、さっきまでの冷たさは無くて、とても暖かい。
「明日は私とマキアが調査に行くので、皆さんはゆっくり休んで下さい」
「嗚呼。お言葉に甘えよう。まだ少し怠さが残ってるんだ」
「俺達はヴィクトールとライハの見張りだな。頼んだぞ、レオン」
「任された!」
レオンは張り切りながらシチューとパンを頬張っている。うん、アルさんやヴィクトールさんと仲良くなれたみたいで良かった。兄さんみたいに喧嘩になる事も無さそうだし…でも、兄さんって意外と皆と喧嘩してるな。レオンやヴィクトールにアデルバード…何でだろう。
「はあ…一日暇かあ」
「俺が居る限りは宿から出さねえかんな」
「鬼!!!」
うん、アルさんが居るから安心して任せられるな。目を離したらすぐに脱走しそうだったからね。明日は気にする事無くマキアと調査に行けそう。
「何かあれば引き返してくるんだぞ。今日のフウカの様に俺達は直ぐに助けに行く事が出来ない」
「分かってます。ありがとうございます、ヴィクトールさん」
「そう言えばフウカ。ヴィクトールを愛称で呼ぶ件はどうなってるんだ?」
その瞬間、兄さんとヴィクトールさんの視線が私に向くのが分かった。思っても無かった事を掘り出されて、自分の顔が真っ赤になるのが分かる。
「え、あ…それは…」
「愛称!?風華!それはどう言う事だ」
「確かに先程からフウカはアデルバードの事をアルと呼んでいたな。ふむ…何と呼んでくれるんだ?」
兄さんからの圧の籠った目にヴィクトールさんの揶揄う様な目。そしてアルさんの楽しげな目からの視線に耐えられず、不思議そうなマキアを盾にした。お行儀は悪いけど、でも無理!!
「ん。良い匂いする」
「今日はトマトシチューにパン、サラダです。デザートにチョコレートプリンをご用意してます」
トマトシチューは鶏肉や野菜。それに豆類が多く入った具沢山で、パンはクロワッサンやバゲットとか、色んな種類がある。マキアがお留守番中にパンを焼いてくれたみたいで、良い匂いが辺りを包んでる。プリン作りは私もお手伝いをした。上手く出来てると良いんだけど…
「うまそ!」
「野菜は、此処の連中達から貰ったんじゃ!何でも、畑仕事を手伝ってくれたオマエ達への御礼なんじゃと」
そっか、この前魔獣避けとか土の栄養補給の魔術とかを掛けた所かな。結構色々な人のお家を巡ったから、何処の人までは分からないけど。
「他にも、子供達からお花を頂きました。遊んでくれてありがとう。だそうです」
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兄さんは子供達と追いかけっことかをして、私はお花で押し花を作ったりしたんだよね。花冠を上げたら凄く喜んでくれた。
「お前達は良く好かれるな。俺達も依頼を引き受けた時に良く噂を聞く」
「ヴィクトールさん。もう腕は平気ですか?」
「問題無い。フウカの処置が適切だったからな。大事に至らなかった。ありがとう」
ヴィクトールさんの手が私の頭に置かれた。優しく左右に動く手には、さっきまでの冷たさは無くて、とても暖かい。
「明日は私とマキアが調査に行くので、皆さんはゆっくり休んで下さい」
「嗚呼。お言葉に甘えよう。まだ少し怠さが残ってるんだ」
「俺達はヴィクトールとライハの見張りだな。頼んだぞ、レオン」
「任された!」
レオンは張り切りながらシチューとパンを頬張っている。うん、アルさんやヴィクトールさんと仲良くなれたみたいで良かった。兄さんみたいに喧嘩になる事も無さそうだし…でも、兄さんって意外と皆と喧嘩してるな。レオンやヴィクトールにアデルバード…何でだろう。
「はあ…一日暇かあ」
「俺が居る限りは宿から出さねえかんな」
「鬼!!!」
うん、アルさんが居るから安心して任せられるな。目を離したらすぐに脱走しそうだったからね。明日は気にする事無くマキアと調査に行けそう。
「何かあれば引き返してくるんだぞ。今日のフウカの様に俺達は直ぐに助けに行く事が出来ない」
「分かってます。ありがとうございます、ヴィクトールさん」
「そう言えばフウカ。ヴィクトールを愛称で呼ぶ件はどうなってるんだ?」
その瞬間、兄さんとヴィクトールさんの視線が私に向くのが分かった。思っても無かった事を掘り出されて、自分の顔が真っ赤になるのが分かる。
「え、あ…それは…」
「愛称!?風華!それはどう言う事だ」
「確かに先程からフウカはアデルバードの事をアルと呼んでいたな。ふむ…何と呼んでくれるんだ?」
兄さんからの圧の籠った目にヴィクトールさんの揶揄う様な目。そしてアルさんの楽しげな目からの視線に耐えられず、不思議そうなマキアを盾にした。お行儀は悪いけど、でも無理!!
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