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肆章 氷雪の国・スノーメイル

二十一話、マジ勘弁

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「あ~あ、お前と一緒とか何の罰ゲームだよ」


「それは此方の台詞だ」


「喧嘩か?買うぞ」


風華が見たら呆れて溜息が止まらないであろう口喧嘩をしながら、俺とヴィクトールは山に住んでる奴等に竜の話を聞いて回ってる。曰く、此処に住んでる奴等は信仰が深いんだと。


「先ず年上には敬語を使え。フウカを見習うと言う事をしろ」


「俺、お前の事敬って無いし」


「このクソ餓鬼…」


相変わらず俺と此奴の仲は最悪。風華の先生だから歩み寄ろうかなとか思ったけど無理だったわ。


「次何処?この上?」


「嗚呼、後は上がって行くだけだ。だが足場が急に崩れる事があるから気を付けろ」


「へーい」


何やかんや言う割に、此奴はちゃんと俺の事も心配してくれんだよな。だから風華も懐いたんだろうけど、気に入らん。


「…風華、あれからどうだ?」


「お前、その話題に興味あったのか」


「あるわい!可愛い妹の新着を気にならん兄貴は居ない!」


ヴィクトールが即答した俺の言葉に眉間を押さえて溜息を吐いた。んだよ、何か文句か?


「…順調だ。魔力暴走もあの一度切りだしな。お前に追い付くのだと、毎日鍛錬に励んでいるぞ」


「…」


「何だその変な顔は」


何か複雑だ…風華がそう思ってくれるのは嬉しいが、兄としては無理して欲しく無いし怪我なんて以ての外だし…ってかヴィクトール!俺の御尊顔を変な顔って言ったか!


「俺はいつでもイケメンですぅ。母上遺伝の圧倒的顔面国宝ですぅ」


「中身が伴ってないがな」


「お前さあ、俺を褒めるって言葉知らない訳」


無視を決め込むヴィクトールの背中を睨んで、せめてもの嫌がらせとして、歩くスピードを早めて彼奴の前に立った。


「おいお前」


「へん、こんぐらいで怒んなよバーカ」


「…!足元!!」


「え、______」


ヴィクトールの焦った声に反射的に足元を見ると、さっきまで俺が踏んでた雪が崩れ去って、俺の足は空中に飛び出していた。つまりは


「落ちるっっ!」


慌てて剣を鞘から取り出して、地面に刺したけど、其処も全て積もった雪だった。刺した剣がそのまま重力に従って、俺と一緒に落ちて行く。それを見届けた瞬間に現実から逃れる様に目を閉じた。


(不味った…!どうする…俺はシルフと契約してないから空は飛べない…!)


「クソ!だから貴様は馬鹿なんだ!」


そんな憎たらしい言葉が聞こえたと同時に、俺の手にあったかい物が触れた。閉じていた目を開けると、其処には俺の嫌いな顔があった。


「はあ!?ヴィクトールお前…!」


「良いから目を閉じてろ!」


「はいよ!」


もうヤケクソでヴィクトールの言う事を聞いた。俺は此処でお前と心中とか勘弁だかんな!

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