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弐章 蒸気の国・エンジーム

二十七話、説明して貰おうか

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「さあ、説明してくれ。納得いく理由じゃなかったら怒るからな」


「もう怒ってるじゃん」


「風華、兄ちゃん怒ってないから。な?」


宿に着いてすぐ風華とマキアを正座させて、通信結晶の向こうでジャックも正座させてる。因みに部屋に居るのは正座してる二人+画面の向こう一人。そして俺とナルシ野郎の五人だ。


「…森に調査に行ったらアクリスが襲われそうだったから助けた…それだけ」


「何で調査に行った」


「必要だから」


…風華は最近こう言って重要な事をはぐらかすんだ。余程答えたくねぇんだろうけど…俺が泣くぞ風華。


「…ボクから説明するよ」


「ジャック!?」


「大丈夫。それに、もうボク達だけじゃ手に負えなくなってきた。分かるでしょ?フウカちゃん。巻き込みたく無いのは分かる。でも、もう危ないよ」


ジャックの言葉に風華が黙って俯いた。何はともあれ、一応説明する事は止めないらしい。俺的には風華から聞きたかったけど…仕方ねぇかな。


「…事の発端は数週間前。凶暴化したフィアスボアから採取された石だ。あれの成分がステンリアで目撃されたフェイクガルムと完全に一致したんだ。そしてその石には何個かの強力な呪いが掛かっている事が分かった。特に狂化と不死身。この二つが大きく出ていたんだ。そしてこの呪いは約数秒の間でも周りに広がり、其処に居た魔獣を凶暴化させた。でも石を回収したらすぐに元に戻ったんだ」


「…成程…つまりはエンジームで起きている魔獣…ひいてはボアの凶暴化はその石が関係あると言う事だね。しかもその元凶を取り除けば呪いは無くなる…だとしたらまだ此処にはその元凶があると言う事だ」


「うん。アデルバードさんの言う通りだよ。ボク達は、ボアの頭領…つまりはエンジームに生息するボア全てのリーダーが元凶なのではないかって言う仮説を立てたんだ。呪いは広まる。だったらボアが凶暴化している理由はそれしか無い。でもまだ確証も無い。だからボク達は皆に不安を与えない為に秘密裏に調査をしていたんだ」


…成程な…俺が知らないとこでそんな難しい事が起こってたのか…正直半分くらいしか理解出来てないけどな!!


「それに…あのボアはまだ呪いに染まってなかったと思う。フェイクガルムと戦った時とは全く生態が異なっていたから」


「黙っていた事は謝罪するよ。けど、それはフウカちゃんの思い遣りだって言うのは忘れないで」


「…分かってんよ。風華も悩んだんだろ?内緒にされたのは悲しいけど、こんな事、頭悪い俺には中々言えないよな」


屈んで風華と視線を合わせる。綺麗な目が不安気にゆらゆらと揺れていた。


「これからは話せよ。俺等も手伝う」


「無論私もだ。其方で分かった事は共有してくれ給え。此方も分かったらすぐに報告しよう」


「分かったよ。ありがとう」


風華もジャックも頷き、マキアは安心したように息を吐いていた。何か…想像を絶する理由だったから…怒る気…失せたな。
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