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本編
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「成海くん、そっち行っていい?」
「ん? ……うん」
初日以降、ふたりとも就寝のタイミングが同じ日は、自然と一緒にベッドで寝るようになっていた。
いまだに気恥しさが大きいけど、それ以上に俺は喜びを感じている。
同じベッドで寝るということは、明は昔と変わらずに俺に気を許してくれているのだろう。それに明の体がそばにあると、俺はどきどきとすると同時に安心した。
こっちに擦り寄ってきた明が、いつものように俺の腹に手をまわす。しかし今日は足の間にも足を差し込まれ、ふくらはぎに明の足が絡まった。
いつも以上の密着に、俺は内心慌てる。こんなの、普通の友達だといえるんだろうか。まるで恋人と寝ているみたいじゃないか。
呼吸は浅くなり、自分の心音がうるさかった。
「……成海くん、眠れないの? ここ、どきどきしてる」
「っ」
腹にあった手が移動し、今度は胸に置かれる。大きな手は俺の心音を確かめるかのように、じっと動きを止めた。
痛いくらいにどきどきしていることがバレてしまい、恥ずかしさが込み上げる。それでも明から離れようとは思わなかった。
「なんか、緊張して……」
「大丈夫、リラックスして。ここには俺と成海くんのふたりだけ」
それが原因なのだとは言えずに、俺は目を閉じた。暗闇の中、触れている明の熱を感じる。
俺を落ち着かせるように、置かれていた手が胸をさすった。
「ゆっくり呼吸して……そう、じょうず」
耳元で優しく囁かれた声。あ、まずい、と思った。
俺の体は一瞬で熱くなり、腹の奥がむずむずとする。胸を掻きむしりたくなる衝動に襲われた。
微かに熱を宿してしまった下半身に、明への気持ちをもう自分に隠せなくなった。
本当は、子供の頃からこの想いはあったのだ。でも今更認めるのが怖かった。明はきっと、俺のことを兄のように思っているだろうから。
俺は器用じゃないし、一度好きだと認めたら、以前のようには振る舞えない。
「どう? 落ち着いた?」
胸に置いてある手に俺は手を重ねる。初めて自分から明に触れた。
明の質問には答えずに、俺はひとつの疑問を確かめる。
「なぁ、あっちでもこうやって誰かと寝てたのか?」
「……え?」
「いやほら、恋人とかとさ……」
明は俺のことをどう思っているんだろうと考えるときはいつも、俺を撮影に誘った明の、「家族とか親しい人ならいいって言われてる」という言葉を思い出した。
明は家族だと思っているから俺と密着しても平気なのか? こうやって抱きついて寝る相手は、俺だけじゃないのか?
明が俺に甘ったるい視線を向けたり、密着する度、いるかどうかわからない明の恋人が脳裏に浮かんでいた。
「……」
俺の問いに、しばらく明は口を開かなかった。
プライベートをあまり公表していないから、きっとそのあたりを聞かれるのは嫌なのだろうと予想はついていた。
突然の個人的な質問に、怒っただろうかと不安になる。しかし、たとえ怒らせたとしても、ハッキリと聞いておきたかった。
いつの間にか口の中がからからに乾いている。
「ん? ……うん」
初日以降、ふたりとも就寝のタイミングが同じ日は、自然と一緒にベッドで寝るようになっていた。
いまだに気恥しさが大きいけど、それ以上に俺は喜びを感じている。
同じベッドで寝るということは、明は昔と変わらずに俺に気を許してくれているのだろう。それに明の体がそばにあると、俺はどきどきとすると同時に安心した。
こっちに擦り寄ってきた明が、いつものように俺の腹に手をまわす。しかし今日は足の間にも足を差し込まれ、ふくらはぎに明の足が絡まった。
いつも以上の密着に、俺は内心慌てる。こんなの、普通の友達だといえるんだろうか。まるで恋人と寝ているみたいじゃないか。
呼吸は浅くなり、自分の心音がうるさかった。
「……成海くん、眠れないの? ここ、どきどきしてる」
「っ」
腹にあった手が移動し、今度は胸に置かれる。大きな手は俺の心音を確かめるかのように、じっと動きを止めた。
痛いくらいにどきどきしていることがバレてしまい、恥ずかしさが込み上げる。それでも明から離れようとは思わなかった。
「なんか、緊張して……」
「大丈夫、リラックスして。ここには俺と成海くんのふたりだけ」
それが原因なのだとは言えずに、俺は目を閉じた。暗闇の中、触れている明の熱を感じる。
俺を落ち着かせるように、置かれていた手が胸をさすった。
「ゆっくり呼吸して……そう、じょうず」
耳元で優しく囁かれた声。あ、まずい、と思った。
俺の体は一瞬で熱くなり、腹の奥がむずむずとする。胸を掻きむしりたくなる衝動に襲われた。
微かに熱を宿してしまった下半身に、明への気持ちをもう自分に隠せなくなった。
本当は、子供の頃からこの想いはあったのだ。でも今更認めるのが怖かった。明はきっと、俺のことを兄のように思っているだろうから。
俺は器用じゃないし、一度好きだと認めたら、以前のようには振る舞えない。
「どう? 落ち着いた?」
胸に置いてある手に俺は手を重ねる。初めて自分から明に触れた。
明の質問には答えずに、俺はひとつの疑問を確かめる。
「なぁ、あっちでもこうやって誰かと寝てたのか?」
「……え?」
「いやほら、恋人とかとさ……」
明は俺のことをどう思っているんだろうと考えるときはいつも、俺を撮影に誘った明の、「家族とか親しい人ならいいって言われてる」という言葉を思い出した。
明は家族だと思っているから俺と密着しても平気なのか? こうやって抱きついて寝る相手は、俺だけじゃないのか?
明が俺に甘ったるい視線を向けたり、密着する度、いるかどうかわからない明の恋人が脳裏に浮かんでいた。
「……」
俺の問いに、しばらく明は口を開かなかった。
プライベートをあまり公表していないから、きっとそのあたりを聞かれるのは嫌なのだろうと予想はついていた。
突然の個人的な質問に、怒っただろうかと不安になる。しかし、たとえ怒らせたとしても、ハッキリと聞いておきたかった。
いつの間にか口の中がからからに乾いている。
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