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現実へと続く夢
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夢をみていた……。
荘厳な、しかし、楽しげでもある音楽が奏でられるなか、パレードを歩く王女とオレを、オレは道ばたから見ている。二人はどんどんと近づいてくる。
やがて、オレは気づく……王女ではない栗髪のエリルだ! なんで? 王女なんかに変装しているんだ? 彼女はぐんぐんと歩みをすすめ……オレがいる場所で立ち止まる。そして僕をみつめていう。
「救国士アル……ううん……アっちゃん……ずっとずっと気持ちを隠していたの……大好き!」
そう言って彼女は僕に抱きついてくる! きゅーっと力強く……。
オレも彼女を抱き返す……。彼女は王宮で香っていたあの高貴なやわらかい女性らしい香水をしているように思えた……。
……え?……ちょっと待てよ? ……エリルちゃんは……香水嫌っていなかったか?
と気づく……。これ半分夢じゃない……。まさかと思うが……オレの腕の中に小柄な女性がいる?
「…………お願い……このまま……このまま……ずっとハグしていてください……」
どこか安心したような声でリファイア王女が耳元でささやく。
「って……その声は……王女さま?」
「……はい」
「ここオレの寝室だよな……」
「……うん。干し草の良い匂い……。おひさまの匂いだね?」
それだけじゃなくて、かすかに王女さまの高貴な香りもしているんだけどな……。
「ごまかすなよ……。なんで、ここに王女さまが居るんだ?」
「……その……いいづらいんですけど……大臣たちに……早く……魔方陣の向こうに行けと……追い立てられまして……」
「!」
「だから、帝国の貴族と……そういう関係になってもらわないと……この国はひどいことになってしまいますから……。仕方ありませんよね? 王女の宿命です……」
「……とりあえず、おれはベッドから出るよ、王女さまはゆっくり寝ていてくれ」
「あ、ああ……そんな! そんないいんです! アルさんが本当に村人なのはわかりました。本当に申し訳ないです! ……私は帝国の貴族と結ばれるのはイヤです……まして……人を傷つけるような嘘をつく人が私は大嫌いなのです」
「……ああ。まあオレは見ての通り、ただの村人だ」
「それで……アルさんは……本当のことを言っていただけで、私は勘違いで……」
王女は飛び起きると……ベットから出る。
「でもさ……なにもオレのベット入るのは……ちょっと女の子としてはうっかりさんすぎるのでは?」
「……良いんです! ずっと心細かった……。王宮ではみんな私の心配なんて誰もしてないんです」
「なるほど……でも……男のベットに入るのはまずいよ?」
「……全部覚悟の上です……」
「覚悟って?」
「言わせないでください……そうなっても構わないと思ったのです……」
つまり、帝国の貴族に傷物にされるぐらいなら……オレの方がマシってことか……。
「まあ、よくわからんけど……自分は大事にしとけよ?」
……おい……もう朝じゃないか! どのぐらい長く彼女とは一緒に寝ていたんだろうか? 変な寝言とか発してないといいんだが……。
「エリルさんって……誰ですか……アルさん……うなされていました……」
「……ああ、まあ、知り合いだよ、知り合い」
「……本当に?」
不思議そうな顔で僕を見つめる王女……
「アルさんの大事なひとなのではないか……と推察しておりました」
「まあ、大事なひと。だったよ……」
そうだ……あの場所に行くか……、こんなむさ苦し場所よりはマシだ……。
「なあ、景色の良い場所があるんだ……。そこで朝食でも一緒に食べよう……ずっと寝ていてすまなかったよ。おなか減っているだろ?」
「ありがとう……。本当に……うれしい」
そうしてオレはお気に入りの携帯食であるパオを二人分持って、果樹園の丘の上のとっておきの場所へと、彼女をエスコートした。
そこでオレは帝国の企てについて聞かされることになる……。
そして救国の英雄と呼ばれる……隣国の皇帝の策略とえげつない性格について知るのだ……。だれでも……それを聞いたら……許せないと感じるだろう。
だからオレも……ガラにもなく……この国を救わないといけないと思ってしまった。
荘厳な、しかし、楽しげでもある音楽が奏でられるなか、パレードを歩く王女とオレを、オレは道ばたから見ている。二人はどんどんと近づいてくる。
やがて、オレは気づく……王女ではない栗髪のエリルだ! なんで? 王女なんかに変装しているんだ? 彼女はぐんぐんと歩みをすすめ……オレがいる場所で立ち止まる。そして僕をみつめていう。
「救国士アル……ううん……アっちゃん……ずっとずっと気持ちを隠していたの……大好き!」
そう言って彼女は僕に抱きついてくる! きゅーっと力強く……。
オレも彼女を抱き返す……。彼女は王宮で香っていたあの高貴なやわらかい女性らしい香水をしているように思えた……。
……え?……ちょっと待てよ? ……エリルちゃんは……香水嫌っていなかったか?
と気づく……。これ半分夢じゃない……。まさかと思うが……オレの腕の中に小柄な女性がいる?
「…………お願い……このまま……このまま……ずっとハグしていてください……」
どこか安心したような声でリファイア王女が耳元でささやく。
「って……その声は……王女さま?」
「……はい」
「ここオレの寝室だよな……」
「……うん。干し草の良い匂い……。おひさまの匂いだね?」
それだけじゃなくて、かすかに王女さまの高貴な香りもしているんだけどな……。
「ごまかすなよ……。なんで、ここに王女さまが居るんだ?」
「……その……いいづらいんですけど……大臣たちに……早く……魔方陣の向こうに行けと……追い立てられまして……」
「!」
「だから、帝国の貴族と……そういう関係になってもらわないと……この国はひどいことになってしまいますから……。仕方ありませんよね? 王女の宿命です……」
「……とりあえず、おれはベッドから出るよ、王女さまはゆっくり寝ていてくれ」
「あ、ああ……そんな! そんないいんです! アルさんが本当に村人なのはわかりました。本当に申し訳ないです! ……私は帝国の貴族と結ばれるのはイヤです……まして……人を傷つけるような嘘をつく人が私は大嫌いなのです」
「……ああ。まあオレは見ての通り、ただの村人だ」
「それで……アルさんは……本当のことを言っていただけで、私は勘違いで……」
王女は飛び起きると……ベットから出る。
「でもさ……なにもオレのベット入るのは……ちょっと女の子としてはうっかりさんすぎるのでは?」
「……良いんです! ずっと心細かった……。王宮ではみんな私の心配なんて誰もしてないんです」
「なるほど……でも……男のベットに入るのはまずいよ?」
「……全部覚悟の上です……」
「覚悟って?」
「言わせないでください……そうなっても構わないと思ったのです……」
つまり、帝国の貴族に傷物にされるぐらいなら……オレの方がマシってことか……。
「まあ、よくわからんけど……自分は大事にしとけよ?」
……おい……もう朝じゃないか! どのぐらい長く彼女とは一緒に寝ていたんだろうか? 変な寝言とか発してないといいんだが……。
「エリルさんって……誰ですか……アルさん……うなされていました……」
「……ああ、まあ、知り合いだよ、知り合い」
「……本当に?」
不思議そうな顔で僕を見つめる王女……
「アルさんの大事なひとなのではないか……と推察しておりました」
「まあ、大事なひと。だったよ……」
そうだ……あの場所に行くか……、こんなむさ苦し場所よりはマシだ……。
「なあ、景色の良い場所があるんだ……。そこで朝食でも一緒に食べよう……ずっと寝ていてすまなかったよ。おなか減っているだろ?」
「ありがとう……。本当に……うれしい」
そうしてオレはお気に入りの携帯食であるパオを二人分持って、果樹園の丘の上のとっておきの場所へと、彼女をエスコートした。
そこでオレは帝国の企てについて聞かされることになる……。
そして救国の英雄と呼ばれる……隣国の皇帝の策略とえげつない性格について知るのだ……。だれでも……それを聞いたら……許せないと感じるだろう。
だからオレも……ガラにもなく……この国を救わないといけないと思ってしまった。
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