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中央大陸編

南大陸行きの船に乗ります

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「マスター、専用武器が完成致しました」

 どうやら渡しておいた素材を使ってリンが武器を完成させたらしい。差し出されたのはオリハルコン製とアダマンタイト製の双剣に合金製のハンドガン2丁。双剣についてはどちらも素晴らしい出来なのは勿論、オリハルコンの方は魔法剣としての性能に優れており、アダマンタイトの方はより切れ味が鋭いらしい。

「凄くいいね、めちゃくちゃ好みの剣だよ。こっちの銃はどういう仕組み?」

 剣は美しく地球でも異世界でもトップクラスの芸術品と言えるだろう、それに比べるとハンドガンはやや近代的な見た目になっている。

「こちらは各素材を贅沢に使ったマスター専用の銃となっておりまして、引き金を引くだけでマスターの魔力を銃弾として打ち出します。その効率は魔力1に対して銃弾100発、ほぼ無限に打ち続ける事が出来ます」

「これこっちの世界じゃ普通なの?」

 性能としては素晴らしいかもしれないが果たして銃というのはこの異世界で一般的なのだろうか、あまり目立ち過ぎても困るのだが。

「これまでの転生者が残した物やダンジョンから発見された物が存在しますので珍しいですが悪目立ちする事はないようです。調子に乗って撃ちまくらなければ大丈夫でしょう」

「なら折角だし装備しておこうかな」

 目立たないのな使わせて貰おう、こういう武器って実は憧れてたんだよね。詳しい性能を聞くと普通に引き金を引けば魔力が弾として発射されるらしく、威力としてはゴブリン位なら当たれば即死らしい。威力とか形は込めるイメージと魔力で無制限に変動するらしく睡眠や麻痺等の状態異常系から回復まで様々な効果を生み出せるらしい。リンのオススメは氷系の魔弾で敵の足元を凍らせる使い方らしい。後は雷系で気絶とか麻痺も使い易いという事だ。

「ご主人様、私の方も装備が出来上がっておりますので宜しければご覧下さい」

 アンナが仕上げてくれたのはダークドラゴンの革を使った厨二病溢れるハーフコートにミスリル糸で織り込まれた着心地も柔らかく魔法防御に優れるインナー、コートと同じくダークドラゴンの革で作られたズボンを始めとした普段着を含めた衣類数十点。それにブーツや小物を受け取った。
 細部まで拘った非常にかっこいい装備が出来上がったと思う、思わず笑みがこぼれる。

「ご満足頂けたようですね。リクエストがあればいつでもおっしゃって下さい」

「二人とも有難う、どれも俺好みで凄くいい装備だよ。これからも装備は任せるからね」

「ご主人様、ご提案なのですがご主人様も馬車を持つべきではないでしょうか。馬は召喚獣で賄えますし、商売面でも信用に繋がるかと思われますのでメリットは十分にあるかと」

 確かにニッターさんの様に個人で馬車と馬を所有していれば移動も早いし、商売面でも冒険者としても利点はあるだろう。ちょっとした移動も馬が居れば速いし、馬車も駆け出しを卒業した商人には必要な物だ。

「そうしようか、俺もそろそろ駆け出し商人は卒業しないとだしね」

 いざ召喚するとなると迷う。目立たないという面では普通の馬なんだろうけど、戦闘面やら考えるとちょっと物足りない。本当はグリフォンとか呼びたいけど、行き成り村にグリフォンが現れたら驚かれるだろうから厳しいよな。後は馬のモンスターって言ったらユニコーンやらスレイプニルが有名所か、ペガサスとか空飛べる系もいいんだけど空飛べる系の召喚獣は希少で目立つんだよなぁ。馬系モンスターで一番多いのはバイコーンらしい、商人にはスレイプニルが力が強く足も速くて雑食なので人気があるみたいだ。

「よし、スレイプニル君に決めた!」

 通常のスレイプニルは闇か雷属性のどちらかを持っているようだが今回は亜種で2つの属性を併せ持った個体を呼び出した。だって普通じゃつまらないもんね。

「君の名前はトールだ。宜しくね」

『ヒヒーン』

 嬉しそうに鳴くトール。名前の由来は雷様的な感じで、見た目は黒の体毛に紫の鬣で体長は大体2.5mはあるのだろうか、筋肉質でありながら艶があってめちゃくちゃかっこいい。

「普段はこっちに居てもらう事になると思うから後で君の場所を作ろうね」

 トールの為に厩舎を新調して自由に島の中を移動出来るようにして上げた。運動不足にならない様に毎日一定の距離を走る必要があるらしく、普通の庭だけじゃ足りないそうだ。人が来る可能性も少ないし、この島にモンスターが現れたとしてもトールの方が強いので危険は少ないだろう。念の為に結界も張ってあるし出来るだけ自然な環境で自由に遊ばせたい。

「よし、じゃあ明日からは一緒に西大陸を目指そうね。今日はゆっくりお休み」

 翌日は朝から移動を開始する。いつもなら護衛依頼を受けるのだがトールの試運転も兼ねて港街まで一直線に進む事にした。取り合えず馬車も用意してあるが今回はなし、トールの従魔登録は南大陸に着いてからにする予定なので街から少し離れた所で召喚して、着いたら一旦帰ってもらう予定だ。
 どうやら南大陸には従魔に出来るモンスターが多く生息していて、中央大陸にいる従魔や召喚獣も殆どが南大陸産らしい。なので俺くらいの冒険商人が南大陸でスレイプニルを捕まえたとしてもそれなりに実力がある冒険者と見られるだけで違和感は少ないそうだ。ただ、これがこの街で登録してしまうと状況が変わってしまうらしい、直接スレイプニルを召喚出来る冒険者はAランク以上らしく、Cランクの若者が呼び出すのは違和感が大きすぎるらしい。それこそ転生者くらいだと集まる君が情報を教えてくれた。

 結論からいうとトールの移動速度は半端じゃなかった。今までの普通の馬と比べると5倍は速い、更に休憩も殆ど必要ない為に一度に移動出来る距離も長い。

「いやートールは凄いな、速くて賢くてかっこいい最高の相棒だよ」

『ヒ、ヒヒーン』

 どうやらちょっと照れているようだ。かわいい。ただ、問題は全力を出すと違和感が凄すぎる。今回は街道から少し逸れて目立たない場所を移動したから良かったものの万が一全速力で馬車を引いて普通の行商人とかを追い抜いてしまったら後から面倒な事になるのは間違いない。

「だけど、普段はもうちょっとスピード落としてくれよな?せめて普通の馬の2倍くらいにしておかないと俺が困っちゃうんだ。なるべく2人の時は全力出せるようにするからお願い出来るかい?」

『ヒン!』

 ちゃんと伝わったらしい。素直な子で本当に助かった。従魔達にも個性や感情があるから納得してくれなかったら困ってしまう所だったよ。

「さて、予定よりめちゃくちゃ早く着いちゃったから数日は自宅でゆっくりしようか。一緒に島を走ろうな」

 商人として申請している為にギルドがある街では通過の報告義務がある。今回のようにあまりにも速いと辻褄が合わなくなってしまう、逆に遅い分にはいいのだが数ヶ月報告を放置すると行方不明として実家に報告された後、更に報告がないと不明人としてギルドから捜索依頼が出されてしまうシステムになっている。普通の人からすれば便利なシステムなのだろうが俺からするとちょっとだけ迷惑なシステムだ。なんせ転移で移動し放題だし、トールもいるし、やろうと思えば自分で空飛んで移動だって出来るんだから距離や時間なんて殆ど関係ないし。

 取り合えず怪しくないくらいの日数を自宅で過ごしてから各ギルドに報告して南大陸へと渡る船に乗り込む。ここから南大陸までは船で大体3日くらい、東大陸と中央大陸との距離とほぼ同じだ、種明かしをすると他の大陸間もほぼ3日の場所に位置する。大陸の広さも殆ど同じくらいなのだ。この辺りに神の力を感じる事が出来る。

「またすぐ戻ってくるけど一旦中央大陸とはお別れか、またいい人と出会えたらいいなぁ」

 なんだかいつも同じ様なセリフを言ってる気がするけど、旅の中で出会いが欲しいのは間違いないしどんな人と出会えるかが楽しみだ。出来れば猫耳のお嫁さん候補に出会いたいな。
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