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冒険者になる

東大陸の旅

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 さて、今は東大陸を護衛依頼を受けながら旅している途中です。基本的にモンスターと鉢合わせた時の駆除と野盗への対処がお仕事。依頼者の規模にもよるけどソロから多い時は6人くらいで即席パーティーを組む事もある。

「ジョージ君、またラビットの群れだ。頼むよ」

「はーい、お任せあれ」

 お仕事の時間になるとぱぱっとスノーとエンが飛んで行って倒してくれるのでゆっくりと戦利品の回収に向います。スノーとエンが周囲を警戒しているので襲われる事は少ないんだけどたまに群れと遭遇してしまうのである。

「いやぁ、最初はどうなるかと思ったけどジョージ君は本当に強いねぇ。おじさんも長い事護衛の冒険者を見て来たけど君みたいに若くて強い子は初めてだよ」

「ありがとうございます。無事に目的地に着ける様頑張りますね」

「ははは、頼んだよ」

 今回は行商人の親子をソロで護衛しているので気楽でいい。モンスター素材や報酬の分け前で揉める事もないし、スノーとエンに任せて楽してても変な目で見られないからね。
 目的地は連合に所属する港街で島と島を繋ぐ船が頻繁に出ている場所でもある。護衛とは別に個人的に目的もあって今回は貯まったお金で拠点になる土地を買う予定だ。小さな島も沢山あって比較的安価で所有権を買えるらしい、勿論水があるかなんて分からないし電気なんて当たり前のようにない。さらに言えばモンスターがいるかもしれないし、島から街までの船だって自分でどうにかしなきゃいけない。そういった事もあって所有者がいない小島が多い為に値段が安いのだ。

 今回も無事に街へ到着したので行商人親子と別れて冒険者ギルドへ依頼の達成報告へと向う。メインの目的は拠点確保なので報告を終わらせたら新しい依頼は受けずに商業ギルドへと行く事にしよう。

「すいません、商業権の確認をお願いします。あと島を1つ欲しいのですが担当者さんに繋いで頂けますか?」

「はい、確認致しました。不動産管理部の担当者が参りますので少々お待ち下さい」

 実は故郷を出る前に商業ギルドへも登録していたのだ。冒険者ギルドと同じように全世界共通のギルドなので身分保証にも役に立つし実績と信用があればギルドと直接売買が出来るようになるので非常にメリットが大きい。今はまだ冒険者がメインだが年齢を重ねたらお店を持ってもいいなと、今の内からコツコツと実績を積んでいる。

「お待たせ致しました、準備が出来ましたのでこちらへどうぞ」

 直ぐに小部屋へ通されて商談が始まる。希望としては回りに島が少ない事、ある程度大陸から離れており人が訪れない事、なおかつ若い冒険者兼商人が買ってもおかしくない事。ちょっと微妙かもしれないがその辺りは話術で乗り越えるしかないかな。

「移動用の船は持っていますので大陸から少し離れた場所でも構いません、出来るだけ安く抑えたいのでいくつか候補がありませんか?」

「そうですね、大陸から離れれば離れる程不人気で安くはなりますけど本当に大丈夫ですか?」

 担当者さんの心配は航行の安全だろう、この世界ではある程度航海の技術は発展しているのだがなんせモンスターが生息しているからね、強力な海のモンスターに襲われて沈没する船も結構多い。

「問題ないです、冒険者やってますし僕の従魔達は飛行タイプなので戦闘力にも影響しません」

「そうですか、でしたら少し離れたこの島か、沖合いのこの島あたりでしょうか・・・」

 この世界の不思議システムなのがこの世界地図だ。非常に高価ではあるが個人での購入も可能で国の名前は勿論、こういった島の所有者の有無も分かるようになっている。更にギルドのは特別製らしく所有者の名前とギルドの登録情報まで分かるらしい。個人の所有している島への立ち入りは基本的に問題ないが、窃盗等の事件を起こしたり不法占拠等は国の軍隊が厳しく取り締まるようになっているので隠れてこっそり住むのは簡単だが万が一見付かった時が非常に面倒なので正規の方法で所有権を取得する必要があるという訳だ。

「でしたら一番安い、この端っこの島をお願いします」

 一番端っこにぽつんと浮いてる全長800m位の島を金貨50枚で購入しました。話しによると海流は比較的穏やかでモンスターも少ないので近隣の海ではそれなりの漁場になっているらしいが回りに島もなく、船を着ける場所が少ないので立ち寄る漁師はいないのだとか。今まで人が住んだ事が無く現地確認も長い間されていないので野生のモンスターには十分気を付ける様に言われてギルドを出た。

「うっし、早速行きますか!」

 ちなみに転移魔法があるので普段の行き来は問題ないのだが気分で地球産の豪華クルーザーを万能変換で準備してしまった、トイレにシャワーも付いているので何日でも泊まれる。むしろこの世界の宿屋よりも豪華かもしれないくらいだ。その船をこの世界の一般的な商船の見た目に偽装して港へと浮かべる。
 船自体は既に魔道具化させているので当然の様に目的地までは自動運転で簡易的な結界も張ってあるので雑魚くらいなら寝てても問題はない。

「ふーなんだか金持ちになった気分だな」

 取り合えず雰囲気を出すためにデッキに出てパンツ一丁で日焼け中です。従魔達と優雅な船旅としゃれ込みましょうかね。まぁ、スノーは魚が気に入ったのかカジキマグロ見たいな奴を狩って食ってるので従魔達も楽しんでくれているのだろう。

 島自体は小さな砂浜が2つあるだけで回りは結構高い岩で囲まれていた、木が生い茂り野生動物がそれなりにいるようだがモンスターの姿は無かった。どうやら水場も無く地下水も出ないようなので島の中央付近をある程度聖地して家を建てる広場を作った。
 万能変換は同じジャンルのものなら変換可能なのだが、その為の家を作る必要がある。今回の場合だと自分で家と認識されるようなログハウスを作る必要があるので若干面倒臭い。取り合えず島には結界と偽装の魔道具を設置してゆっくり家を作る事になる。その間はクルーザーで寝泊りしつつ街で買い物したり依頼をこなしたりと急がずのんびりやったので完成まで3ヶ月くらい掛かってしまった。

「さてと、やっと出来たこのログハウスを『万能変換』といきましょうかね!」

 イメージするのは前世で見た日本のビッグスターが建てたらしいハワイ風の豪華でおしゃれな現代建築物。妥協も遠慮もなく全力で住み易い豪邸を生み出す。

「ふぅ、今更だけど万能変換強すぎる」

 現れたのは不思議パワーで動く現代家電が揃った、正に豪邸と言えるような家。吹き抜けや大きなガラス窓によって開放感を演出し、全体的に木の温もりを感じるハワイアンと和風の融合。地下にはカラオケにシアタールームも完備、銭湯のように広い風呂にプールだってある。

「完璧だな、正に理想の住処だ」

 地球で生活していた頃からは考えられないような環境の変化だが本当に異世界に転生して良かったと思う。これからも自由気ままに楽しく生きて行こうと改めて思った日だった。


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