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婚約者が愛していたのは私でなく姉だった、ならば…あなたは今日をもって不幸になります。

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「君の妹と婚約したのは、あいつの持つ力が目当てだ。」

「あの不思議力ね?」

「あいつが傍に居たら、俺は幸せになれる。その為に婚約しているが、その心は─。」

「ウフフ、あなたが愛しているのは私だものね。」

 神殿の柱に隠れ、抱き合う男と女。
 それは私の婚約者と、美人の姉だった。
 
 あの二人…少し前から仲がいいと思っていたら、こういう関係だったのね。

 あの人が愛しているのは、お姉様。
 あなたは、私を愛していなかったのね…。

 それを知った今、私の力はあなたには─。

※※※

 私は幼い頃に大病を患い、一時生死の境をさ迷った。

 その時に、ある不思議な夢を見た。

 この地を守る神が現れ、私に力を授けてくれたのだ。

「お前は、清らかな魂だ…まるで天使の様だな。そんなお前に、神の力を分けてやろう。お前は神に愛された娘だ…お前の傍に居るだけで、その者には必ず幸せが訪れるだろう。」

「ありがとうございます。私、たくさんの人を幸せにします。」

「それは良い心がけだ。だがよく覚えておけ…その力は─。」

※※※

「俺と、婚約破棄したいだと!?」

「だって…あなたは、私を愛していないでしょう?それが分かった今。私の力はあなたには効かないわ。あなたの望みを叶えられないのに、一緒に居る意味は無いわね。だからもう、婚約破棄してお別れしましょう?」

「あ、愛してないと、効かない?」

「神様がそう言ったのです。その力は、お前の事を愛してくれる者にしか効果が無い。むしろ、お前を利用し傷つける悪者には、不幸となって襲い掛かる、と。」

「何!?」

「そしてその者は、きっと破滅するだろう、とも仰いました。あなたが欲しかったのは、しょせん私の力だけ。自分が幸せになる為に私を利用し、浮気をして私の心を傷つけたあなたを、私は許しません。この事は、この国の王にお伝えしました。すると王は、そんな男とは今すぐ婚約破棄し神殿から追い出せばいいと言って下さいました。」

「そんな…!」

「王はお怒りです。私をこの神殿に迎え入れられる程、私を大事にして下さってますから、当然ですね。」

「そんな…今から愛すから、ちゃんと愛すから、どうかー!」

※※※

 あれから彼は、駆けつけた神官たちによって神殿を放り出された。

 そして王の命令で、浮気相手の姉と一緒にこの国の果てにある死の谷へ送られた。
 そこは、どこまで行っても深い谷が続いていて…そこを、二人はで命果てるまでさ迷う事になるのだ。
 
 一方、私はというと…王に王子を紹介され、すぐに仲良くなった。

 王曰く、彼はずいぶん前から私の事を好きでいてくれたらしい。

「君はその力で、周りを幸せにしてれる。だから俺は俺の愛で、君を幸せにしたいんだ。」

 私自身の幸せを、こんなに望んでくれる人は今までいなかった。
 何より、自分の手で幸せにしたいと言ってくれる人なんて…。

 私は、王子の気持ちに応えようと思う。

 神に愛された娘は、この世界で好きな人に愛され、今度こそ幸せになるのよ─。
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