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病弱な妹に婚約者を奪われお城に居場所がなくなったので家出したら…結果、幸せになれました。
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今から、数年前の事だ─。
「今日からこの男がお前を守ってくれる、そして婚約者になるんだよ。」
お父様にそう紹介され、一人の青年が私に跪いた。
「命に代えても、あなたを守り愛し抜く事を誓います。」
その言葉を聞いて、私はとても嬉しかった。
私のような地味で華のない姫に、こんな素敵な方が…。
しかし、その幸せは壊された。
可愛い妹が婚約破棄され…この城に戻って来た事で─。
「…あの方は私を病弱だと言って、一方的に捨てたの。お姉様は良いわね、こんなに優しい騎士兼婚約者様が居て。」
するとそれを聞いていた彼は、妹に向かってこう言った。
「あなたのような美しい姫を捨てるなんて酷い男だ。どうか安心して下さい…これからは、私があなたを守りましょう!」
「まぁ…!素敵な騎士様、あなたを頼りにしていますね。」
そしてその日から、彼は妹だけに付き従うようになったのだ。
私がそれを咎めても、彼は聞く耳を持たなかった。
「あの子もこの城の姫…ならば俺は、ちゃんと務めを果たして居る事になるじゃないか。それに…どうせ守るなら、あの子のような美少女がいいに決まっている。」
「お姉様…醜い嫉妬で彼を困らせちゃダメよ?ねぇ…いい機会だから、彼を私に頂戴?」
「な、何を言ってるの!」
「病弱で可愛い姫の私は、いつ誰に狙われるか分からいでしょう?だから、常に私を守ってくれる騎士様が必要だわ。」
「彼女の言う通りだ。お前みたいな地味で何の取り柄もない姫など、放っておいても誰も狙わん。」
そして、その会話を居た周りの者達も聞いていた為だろう。
私は城で粗末に扱われるようになり…そして、自分の居場所がなくなって行った。
私はとうとうそれに耐えきれず、ある日自ら城を出た─。
※※※
「まさか、お姉様が家出とはね。」
「いいじゃないか、これで邪魔者は消えたんだから。」
「そうね。」
そして彼に抱き着いた時だった。
私の胸に突然痛みが走り…私はその場に崩れ落ちた。
「な…何、この痣。」
見れば、私の胸には妙な痣が浮き上がって居た。
すると、それを見た彼は突然真っ青な顔になり、私から後退った。
「そ、その痣は悪魔の紋章じゃないか!お前、悪魔の化身だったのか…?」
悪魔の紋章…聞いた事がある。
この国には百年に一度、悪魔に魅入られた娘が現れる。
ただし、聖なる力を持った娘が傍に居てその悪魔の力を抑えているので、恐ろしい事は起きないはずだ、と─。
「わ、私は悪魔じゃないわよ…!だから、そんなに怖がらないで?」
そう言っているのに、彼は怯え私から去ろうとする。
「お、俺は騎士だ。形あるものが相手なら何とかなるが、悪魔は斬れん!それに俺は…悪魔が怖くて堪らないんだ!」
「な、何て情けない男なの!?あなたがそんな弱虫だとは思わなかった!」
怒る私に彼は一目散に逃げだしたが…その先の階段から足を滑らせ、転がり落ちてしまった。
私は慌てて彼に駆け寄ったが…彼は、もう息をしていなかった。
そしてそこに運悪く兵が駆けつけ…悪魔の紋章を持った私は騎士殺しを疑われ、その場で捕らえられてしまったのだ─。
※※※
「君の妹は、悪魔の化身…騎士殺しの姫だとされ、次期に処刑になるらしい。」
「…私が居なくなった事で、あの子の痣が浮かんでくる事は分かってました。ですが…あなたはどうして、妹がそういう娘だと分かったのです?」
城を出た私は、偶然にも妹の婚約相手だった隣国の王子に拾われ、お城に招かれたのだ。
「この国の王家の者は、真実を見抜く目を持って居るからね。だからあの子が、そういう悪しき娘だとすぐに分かったんだ。ただ、それを本人に言うと絶対に否定して面倒な事になるから、病弱だからという理由で婚約を破棄したんだよ。」
聞けば妹は、毎日ぐうたら過ごし寝てばかり居たから、病弱だと言われても何も言い返せなかったらしい。
「…あの子が、ご迷惑をおかけしてすみません。そして、私を拾って下さりありがとうございました。」
妹がそんな醜態を晒したと言うのに…彼は本当に私に優しく接してくれて、とてもいい人だ。
妹の件を謝罪すると、彼は妹と君は別の人間だよと言い、逆に私を慰めてくれた。
「実は…俺は昔から君が好きだったんだ。その聖なる力があるからだけじゃない、君はとても清楚で優しくて…俺の理想の姫なんだ。でも君はあの騎士と婚約する事になってしまい、一度はこの恋を諦めたが…もう自分の気持ちに嘘はつかない。どうか俺を好きになってくれ…そして、ずっと俺の傍に居て欲しい。」
少しの間だけど…彼の傍に居て、彼がどれだけ素敵な人かはもう分かったわ。
だから、私は─。
「私も、あなたの傍に居たいです。だから私は…この先、生涯あなただけを愛すると誓います。」
その言葉を聞いた彼は幸せそうに微笑むと、私を優しく抱きしめた─。
「今日からこの男がお前を守ってくれる、そして婚約者になるんだよ。」
お父様にそう紹介され、一人の青年が私に跪いた。
「命に代えても、あなたを守り愛し抜く事を誓います。」
その言葉を聞いて、私はとても嬉しかった。
私のような地味で華のない姫に、こんな素敵な方が…。
しかし、その幸せは壊された。
可愛い妹が婚約破棄され…この城に戻って来た事で─。
「…あの方は私を病弱だと言って、一方的に捨てたの。お姉様は良いわね、こんなに優しい騎士兼婚約者様が居て。」
するとそれを聞いていた彼は、妹に向かってこう言った。
「あなたのような美しい姫を捨てるなんて酷い男だ。どうか安心して下さい…これからは、私があなたを守りましょう!」
「まぁ…!素敵な騎士様、あなたを頼りにしていますね。」
そしてその日から、彼は妹だけに付き従うようになったのだ。
私がそれを咎めても、彼は聞く耳を持たなかった。
「あの子もこの城の姫…ならば俺は、ちゃんと務めを果たして居る事になるじゃないか。それに…どうせ守るなら、あの子のような美少女がいいに決まっている。」
「お姉様…醜い嫉妬で彼を困らせちゃダメよ?ねぇ…いい機会だから、彼を私に頂戴?」
「な、何を言ってるの!」
「病弱で可愛い姫の私は、いつ誰に狙われるか分からいでしょう?だから、常に私を守ってくれる騎士様が必要だわ。」
「彼女の言う通りだ。お前みたいな地味で何の取り柄もない姫など、放っておいても誰も狙わん。」
そして、その会話を居た周りの者達も聞いていた為だろう。
私は城で粗末に扱われるようになり…そして、自分の居場所がなくなって行った。
私はとうとうそれに耐えきれず、ある日自ら城を出た─。
※※※
「まさか、お姉様が家出とはね。」
「いいじゃないか、これで邪魔者は消えたんだから。」
「そうね。」
そして彼に抱き着いた時だった。
私の胸に突然痛みが走り…私はその場に崩れ落ちた。
「な…何、この痣。」
見れば、私の胸には妙な痣が浮き上がって居た。
すると、それを見た彼は突然真っ青な顔になり、私から後退った。
「そ、その痣は悪魔の紋章じゃないか!お前、悪魔の化身だったのか…?」
悪魔の紋章…聞いた事がある。
この国には百年に一度、悪魔に魅入られた娘が現れる。
ただし、聖なる力を持った娘が傍に居てその悪魔の力を抑えているので、恐ろしい事は起きないはずだ、と─。
「わ、私は悪魔じゃないわよ…!だから、そんなに怖がらないで?」
そう言っているのに、彼は怯え私から去ろうとする。
「お、俺は騎士だ。形あるものが相手なら何とかなるが、悪魔は斬れん!それに俺は…悪魔が怖くて堪らないんだ!」
「な、何て情けない男なの!?あなたがそんな弱虫だとは思わなかった!」
怒る私に彼は一目散に逃げだしたが…その先の階段から足を滑らせ、転がり落ちてしまった。
私は慌てて彼に駆け寄ったが…彼は、もう息をしていなかった。
そしてそこに運悪く兵が駆けつけ…悪魔の紋章を持った私は騎士殺しを疑われ、その場で捕らえられてしまったのだ─。
※※※
「君の妹は、悪魔の化身…騎士殺しの姫だとされ、次期に処刑になるらしい。」
「…私が居なくなった事で、あの子の痣が浮かんでくる事は分かってました。ですが…あなたはどうして、妹がそういう娘だと分かったのです?」
城を出た私は、偶然にも妹の婚約相手だった隣国の王子に拾われ、お城に招かれたのだ。
「この国の王家の者は、真実を見抜く目を持って居るからね。だからあの子が、そういう悪しき娘だとすぐに分かったんだ。ただ、それを本人に言うと絶対に否定して面倒な事になるから、病弱だからという理由で婚約を破棄したんだよ。」
聞けば妹は、毎日ぐうたら過ごし寝てばかり居たから、病弱だと言われても何も言い返せなかったらしい。
「…あの子が、ご迷惑をおかけしてすみません。そして、私を拾って下さりありがとうございました。」
妹がそんな醜態を晒したと言うのに…彼は本当に私に優しく接してくれて、とてもいい人だ。
妹の件を謝罪すると、彼は妹と君は別の人間だよと言い、逆に私を慰めてくれた。
「実は…俺は昔から君が好きだったんだ。その聖なる力があるからだけじゃない、君はとても清楚で優しくて…俺の理想の姫なんだ。でも君はあの騎士と婚約する事になってしまい、一度はこの恋を諦めたが…もう自分の気持ちに嘘はつかない。どうか俺を好きになってくれ…そして、ずっと俺の傍に居て欲しい。」
少しの間だけど…彼の傍に居て、彼がどれだけ素敵な人かはもう分かったわ。
だから、私は─。
「私も、あなたの傍に居たいです。だから私は…この先、生涯あなただけを愛すると誓います。」
その言葉を聞いた彼は幸せそうに微笑むと、私を優しく抱きしめた─。
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