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醜い白豚と罵られ婚約破棄された私は、後に幸せと美しさの両方を手にする事が出来ました。

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「お前…最近ますますふとましくなったな。これじゃあ、ただの白豚じゃないか!」

「婚約前は、そこまで太ってなかったんでしょう?ちっとも痩せないから、彼に嫌われるのよ。」
 
 醜い白豚と、婚約者とその愛人に罵られる私。

 婚約後にかなりふとましく変わってしまった私に嫌気が差した彼は、少し前に愛人を家に囲うようになったのだ。

 私だって、早く痩せてスッキリしたいけど…そうならないのは、それもこれも私の努力不足…ではなく、もっと別の所に原因がある─。

 そして彼が愛人を家に住まわせ、三ヶ月程たった頃。
 大事な話があると、私は彼に呼び出された。

「お前…その内、本当の豚になるつもりじゃないだろうな?俺の家は代々続く名家…不健康の女を妻に迎えては、後々が大変だ。それか病気じゃないなら、お前は呪われてそんな姿になって居るんじゃないのか?どちらにしろ、そんな女はご免だ。もう、俺と婚約破棄してくれ。」

「…で、でも─」

「俺とお前の婚約を決めた父も死んだ。お前と別れても、文句を言う者は居ない。それに…俺はもう、彼女と婚約する事を決めたんだ。」

 そう言って、愛人を抱き締める彼。

「分かりました…では私は、もうここを去ります。」

 そして私は、彼の家を後にした─。

※※※

 しかしそれからすぐ、彼の身に次々と不幸が襲い掛かった。

 今まで上手く行っていた事業が急に傾き始め…それと同時に、愛人が彼の家のお金を奪い逃げてしまい、元婚約者は病に倒れてしまったのだ。

 そしてその頃になり、私は彼に呼び出された。
 
「…お前、誰だ?」

「分かりませんか?あなたの元婚約者ですよ。」

「嘘だ…このほっそりとした可憐な娘が、あの醜い白豚だなんて!?な、何故こんな短期間に、そんな身体に戻なるんだ!?」

「私があれ程ふとましかったのは、体の中に幸運を蓄えていたから。私の一族の娘は、幸運をこの身に溜め込んでおき…将来を共にする方に、この幸運を授ける事が出来るの。だから私、婚約してすぐあなたにこの幸運を授けようとしたんだけれど…あなたが本当は、私を愛して居ない事を知ってしまった。あなたお父様に、本当は別の女と婚約したかったと文句を言ってたでしょう?」

「そ、それは…。」

 後から分かったが、その女というのがあの愛人だったのだ。

「だから私、あなたに幸運を授ける事が出来ないままで居たら…その幸運が余りに蓄積されすぎ、体までふとましく変化してしまったの。そのせいであなたは、益々私を嫌い大事にしなくなり…ついには私に婚約破棄を告げた。今のあなたの不幸は、私を捨てたせいです。」

「何!?」

「あなたは生まれながらの不運体質。今までは魔道具に頼ってらしたとお父様が仰ってましたが、その魔道具も古くなり困って居た所、私のような娘を見つけた。それで、あなたの婚約者に迎える事にしたそうですよ。」

「そんな…!だったら、今すぐ俺にその幸運をくれよ!そしたら俺は─」

「それは無理です。見ての通り、私はこんなに痩せて美しくなったでしょう?それは、もう別の方に幸運を捧げ、その方にとても愛され幸せに生きているからです。」

 私は彼と別れてすぐ、ある殿方と婚約した。

 彼は魔術師で、不思議な力を持って居た為か…私を一目見て、私の身体に詰まっているのは脂肪ではなく幸運なのだと見抜いた。
 そして私が神に愛された幸運の娘だと言い、婚約者にして下さったのだ。

「じゃあ、もうお前の幸運は…。」

「はい、全てその方に捧げました。ですから今の私は、あなたにあげる幸運など持ち合わせておりません。あなたはどうせ、私に自身の世話をさせるつもりで呼んだんでしょうが…私はそんなのご免ですよ。では、私はもう失礼させて頂きますね。」

「た、頼む、謝るから行かないでくれ─!」

 それから少しして、彼の家はあっという間に没落し、彼自身も二度とベットから起き上がれない身体になってしまった。

 今では山奥の診療所に送られ、そこに私が再び現れやしないか待っているそうだが…それは残念だけど、あり得ないわね。

 だって私はもうあの彼と結婚し、王都で幸せに暮らして居るのだから。

 実は彼はお城に仕える魔術師で、とても偉い方だった。
 妻になった私は、おかげでとてもいい暮らしをさせて貰って居る。

 そんな方に見染められ、傍に置いて貰えて…私はとても幸運だわ。

 私の身の内に秘められていた幸運は、知らない内に、私自身にも幸せをもたらしてくれたみたいね─。
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