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呪われた私が愛されないのは、仕方がないと諦めてた…でもあなたのその裏切りは駄目です。

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 私はいつからか、呪われた娘だと忌み嫌われるようになった
 というのも、私に近づけばその身に不幸が降りかかるからだ。

 だけどそんな私にも、婚約者は居た。
 ただ…愛されているとは程遠い。

『俺に愛されたいなど、分不相応な望みは持つな。婚約者が居るだけでも有難いと思え。』

 婚約してすぐ、彼にそう言われた時は辛かったけど…確かに彼という存在がなければ、私は一生独り身だっただろう。
 呪われた私など、愛されないのは仕方のない事。
 婚約出来ただけでも、感謝しないと…。

 そう思い、私はこれまで過ごしてきた。

 彼の、ある裏切りを知るまでは─。

※※※

 その日私は、珍しく町へと出かけていた。
 もうすぐ彼の誕生日で、その贈り物を買う為だ。

 周りの視線を避ける様、私は俯き加減で歩いていたのだが…その視界の端に、彼が飛び込んできた。
 更に、その傍らには見知った顔が─。
 
 それは、血の繋がらない私の妹だった。

「私が教えたおまじない、ちゃんと効果があったでしょう?」

「あぁ、今やあいつは呪われし娘だ。だけど、どうして周りの者が不幸になるんだろうな?あいつ自身に何かがある訳じゃないのは、どうしてだ?」

「そこまでは…。でも直接的じゃないにしろ、不幸になってるのは間違いないんだし。あの女をもっともっと不幸にして、最後には手酷く捨ててやってね?お姉様の澄ました顔が涙でぐしゃぐしゃになるの、楽しみにしてるんだから。」

「分かってるよ、愛する君の望むままに─。」

 あの二人、そういう仲だったの?
 そして私がこんなふうになってるのは、そのまじないとやらのせいで…。

 あなたは、私を裏切っていた。
 そしてその裏切りは、とても許す事など出来ないものだわ─。

※※※

 全く…せっかくの誕生日に、こいつの顔を見ないといけないとは─。

 父の手違いで、好きでもないこいつと婚約させられたのが運の尽きだ。
 その上、世間体があるから婚約破棄はするなと父に言われ…だから仕方なく、まじないとやらに頼ったのだ。

 この女がその餌食になり、いっそこの世から消えてくれれば…。
 そしたら、すぐにでも妹を迎える事が出来るのに─!

「今日はあなたの誕生日、是非お祝いをと思いましてね。素敵なプレゼントも用意しましたよ?」

「そうか、ならさっさと渡してくれ。俺は色々と忙しくてな。」

「私と別れた後、妹と会う約束をしているからですね?」

「お前、俺たちの関係に気が付いて…!?」

 驚く俺に、彼女はニコリと笑いこう言った。

「その妹ですが、先程憲兵に連れて行かれました。今頃は牢の中でしょうね。」

「どうしてそんな事に!?」

「あの子があなたに教えたのは、この国で禁止されてる黒魔術。おまじないなどという、可愛いものじゃないわ。実はあの子、この家の娘になる前に自国で黒魔術を習得していたらしくて…それであなたに教える事が出来たのよ。そんな恐ろしいものにうっかり手を出して…あなたには不幸が訪れるわ。」

「ふ、不幸なのはお前だろう!お前の話が本当なら、お前は黒魔術にその身を侵されている事に─」

「それなんですが…私、この呪いを解く事が出来たんです。」

「何!?」

※※※

「呪いがかけられた事を知った私は、藁にも縋る思いで神殿へ出向きました。すると、神官長がこう仰るのです。あなたには聖女の力が秘められている。だから呪いをかけられても、自身が危険な目に遭う事はなかった、と。私は神官長のおかげで聖女の力が覚醒…見事呪いを解く事が出来ました。」

 私は神官長から頂いた教典を手に取ると、彼に差し出した。

「軽々しく人を呪った者には、必ず罰が下るわ。」

 そしてそれを開くと中から黒いもやが現れ、それは彼の体の中へと消えた。

「い、今の…?」

「これがプレゼントです。それから─」

 部屋のドアが開き、控えていた兵が彼を取り押さえた。

「な、何をする!」

「抵抗すれば、それだけ刑が重くなりますよ?この騒動の実行犯のあなたが捕まるのは、当然じゃない─。」

 彼は、妹と同じく牢に入れられた。
 そして牢の中で、自身の呪いに苦しめられている。

 そう…あの黒いもやは、彼が私にかけた呪いだったのだ。
  
 彼は呪いにより命を落とすし、妹は魔女として近く処刑される。
 私を陥れた二人には、もうすぐ死が待っている─。

 その後覚醒した聖女の力のおかげで、私は呪われた娘という汚名を無事に晴らす事が出来た。
 
 そしてご神託により、素敵な殿方と縁を結ぶ事に─。
 今はその方と共に、幸せな毎日を送っている。
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