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隣のA子さん、今日も笑ってる。
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またあの2人だ…。
私が利用しているバスの中で、いつも見かける2人組の女の子。
1人はショートカットでボーイッシュな女の子、もう1人は髪の長い女の子だ。
彼女たちはこのバス路線の近くにある、○○女子高校の生徒達だ。
ショートカットの女の子は、「田中さん」というらしい。
バスの中に居た同じ学校の生徒に、そう呼ばれていた。
もう1人の髪の長い女の子は、呼ばれなかったので分からなかった。
なので、私は彼女のことを「隣のA子さん」と名付けることにした。
A子さんはいつも田中さんに寄り添うように、傍にぴたりとくっついている。
そしてニコニコと、いつも可愛らしい笑顔を浮かべていた。
田中さんはそれを嫌がるでもなく、平然と受け入れている。
思春期の女の子同士の戯れというやつなのだろう。
そして彼女たちはそのまま寄り添いながら、高校前のバス停でバスを降りて行った。
私はまだ降りる予定はなかったので、そのまま彼女たちを見送った。
別の日も、あの2人は居た。
田中さんは座席に座り、うとうと居眠りをしていた。
A子さんは隣に座り、そんな田中さんを見て笑っていた。
そうしている間に、彼女たちがいつも降りるバス停が近づいてきた。
田中さんはそれに気づいたようで、目を覚ますと慌ててバスを降りて行った。
A子さんもその後に続き、バスを降りて行った。
…何だか今、A子さんさんがちらりとこちら見た気がする。
いつも同じバスに乗り合わせていることに、彼女も気づいたんだろうか。
それとも、少し見すぎてしまったかもしれない。
失敗したな、と私は思った。
何日かして、私はまたあの2人と同じバスになった。
田中さんのスマホが着信を知らせ、彼女はその相手と話をしていた。
「ごめん、今バスの中。また連絡する。え、今?1人だけど。じゃあ。」
…おや?今、田中さんは1人だと言った。
彼女の傍には、ちゃんとA子さんが居るじゃないか…もしかして、喧嘩中?
わざと隣に居るA子さんに聞こえるように、嫌味のつもりで言ったんだろうか。
でもA子さんは笑っているし…。
やがて彼女たちの降りるバス停が近づき、2人は席を立った。
私の横を、A子さんが通り抜けた時だった。
彼女は私の方を見て、ある言葉を残した。
「私の邪魔をしないで。」
そういえば、あの2人を見ておかしいな、と感じたことはあった。
それは田中さんとA子さんが、全く会話をしないことだ。
あれだけ仲良さそうにA子さんが隣に寄り添っているのに、話をしている所を未いまだ見たことがない。
いや…思い返してみると、笑っているのはA子さんだけで、田中さんは何のリアクションも返さなかった。
その様子は、A子さんの姿などまるで見えていないとばかりに。
…もしかすると、A子さんの正体はこの世の物ではないのかもしれない。
そこであの言葉…もしや彼女は田中さんに取り憑ついて、その命を自分の物にしようとしているのでは…。
私は今度あの2人に会ったら、こちらから話しかけることにした。
田中さんには見えないモノに気をつけろと、A子さんには諦めて彼女から離れろと。
何もせず見過ごすより、そうした方がいいい。
…居た、あの2人だ。
私は早速、田中さんに声をかけた。
ところが彼女は、私に何の反応も示さなかった。
それどころか、こちらを見ようともしない。
聞こえなかったのか…?
そこで私は、彼女の肩を軽く叩こうとした。
「この子に触らないで。」
私のすぐ隣で、地を這うような低い声が聞こえた。
それはA子さんだった。
やっぱり、田中さんの命を狙っていたのか…何て恐ろしい!
私はA子さんを睨んだ。
すると彼女はため息をつきこう言った。
「この子の命を狙っているのは、あなたの方。まだ気づかないの…自分が死んでることに。」
死んでいる…?
この子は、何を言っている?
「疑うなら、バスの窓を見ればいい。映ってないでしょう、あなたの姿。」
私は顔を上げ、窓を見た。
そこには、何も映っていなかった。
そして「隣のA子さん」も。
「あなたは死んでいる、しばらく前に。このバスに乗っていて、心臓発作で倒れてそのまま…。突然のことで自分が死んだことを理解できず、魂だけがこのバスに留まり続けた。そして生命力溢れるこの子に目を付けた。私たちのこと、ずっと見てたでしょ。」
「じゃあ、君は何…君も映ってないだろ。ずっと彼女の隣に居て笑ってたじゃないか!」
「私は、この子の友達。死んでからもずっと、この子の隣に居るの。例え私が見えてなくても、これからもこの子を守り続ける。だから、あなたにその邪魔をされたくない。あなたはあなたの行くべき場所に行って。」
私にそう言い残し、田中さんとA子さんはバスを降りて行った。
私も次のバス停で降りることにする…そのバス停は、私がいつも降りていた場所だから。
そこで降りれば、私の行くべき場所に行けるような気がする…。
※※※
「隣のA子さん」は、今日も田中さんの隣で笑っている-。
私が利用しているバスの中で、いつも見かける2人組の女の子。
1人はショートカットでボーイッシュな女の子、もう1人は髪の長い女の子だ。
彼女たちはこのバス路線の近くにある、○○女子高校の生徒達だ。
ショートカットの女の子は、「田中さん」というらしい。
バスの中に居た同じ学校の生徒に、そう呼ばれていた。
もう1人の髪の長い女の子は、呼ばれなかったので分からなかった。
なので、私は彼女のことを「隣のA子さん」と名付けることにした。
A子さんはいつも田中さんに寄り添うように、傍にぴたりとくっついている。
そしてニコニコと、いつも可愛らしい笑顔を浮かべていた。
田中さんはそれを嫌がるでもなく、平然と受け入れている。
思春期の女の子同士の戯れというやつなのだろう。
そして彼女たちはそのまま寄り添いながら、高校前のバス停でバスを降りて行った。
私はまだ降りる予定はなかったので、そのまま彼女たちを見送った。
別の日も、あの2人は居た。
田中さんは座席に座り、うとうと居眠りをしていた。
A子さんは隣に座り、そんな田中さんを見て笑っていた。
そうしている間に、彼女たちがいつも降りるバス停が近づいてきた。
田中さんはそれに気づいたようで、目を覚ますと慌ててバスを降りて行った。
A子さんもその後に続き、バスを降りて行った。
…何だか今、A子さんさんがちらりとこちら見た気がする。
いつも同じバスに乗り合わせていることに、彼女も気づいたんだろうか。
それとも、少し見すぎてしまったかもしれない。
失敗したな、と私は思った。
何日かして、私はまたあの2人と同じバスになった。
田中さんのスマホが着信を知らせ、彼女はその相手と話をしていた。
「ごめん、今バスの中。また連絡する。え、今?1人だけど。じゃあ。」
…おや?今、田中さんは1人だと言った。
彼女の傍には、ちゃんとA子さんが居るじゃないか…もしかして、喧嘩中?
わざと隣に居るA子さんに聞こえるように、嫌味のつもりで言ったんだろうか。
でもA子さんは笑っているし…。
やがて彼女たちの降りるバス停が近づき、2人は席を立った。
私の横を、A子さんが通り抜けた時だった。
彼女は私の方を見て、ある言葉を残した。
「私の邪魔をしないで。」
そういえば、あの2人を見ておかしいな、と感じたことはあった。
それは田中さんとA子さんが、全く会話をしないことだ。
あれだけ仲良さそうにA子さんが隣に寄り添っているのに、話をしている所を未いまだ見たことがない。
いや…思い返してみると、笑っているのはA子さんだけで、田中さんは何のリアクションも返さなかった。
その様子は、A子さんの姿などまるで見えていないとばかりに。
…もしかすると、A子さんの正体はこの世の物ではないのかもしれない。
そこであの言葉…もしや彼女は田中さんに取り憑ついて、その命を自分の物にしようとしているのでは…。
私は今度あの2人に会ったら、こちらから話しかけることにした。
田中さんには見えないモノに気をつけろと、A子さんには諦めて彼女から離れろと。
何もせず見過ごすより、そうした方がいいい。
…居た、あの2人だ。
私は早速、田中さんに声をかけた。
ところが彼女は、私に何の反応も示さなかった。
それどころか、こちらを見ようともしない。
聞こえなかったのか…?
そこで私は、彼女の肩を軽く叩こうとした。
「この子に触らないで。」
私のすぐ隣で、地を這うような低い声が聞こえた。
それはA子さんだった。
やっぱり、田中さんの命を狙っていたのか…何て恐ろしい!
私はA子さんを睨んだ。
すると彼女はため息をつきこう言った。
「この子の命を狙っているのは、あなたの方。まだ気づかないの…自分が死んでることに。」
死んでいる…?
この子は、何を言っている?
「疑うなら、バスの窓を見ればいい。映ってないでしょう、あなたの姿。」
私は顔を上げ、窓を見た。
そこには、何も映っていなかった。
そして「隣のA子さん」も。
「あなたは死んでいる、しばらく前に。このバスに乗っていて、心臓発作で倒れてそのまま…。突然のことで自分が死んだことを理解できず、魂だけがこのバスに留まり続けた。そして生命力溢れるこの子に目を付けた。私たちのこと、ずっと見てたでしょ。」
「じゃあ、君は何…君も映ってないだろ。ずっと彼女の隣に居て笑ってたじゃないか!」
「私は、この子の友達。死んでからもずっと、この子の隣に居るの。例え私が見えてなくても、これからもこの子を守り続ける。だから、あなたにその邪魔をされたくない。あなたはあなたの行くべき場所に行って。」
私にそう言い残し、田中さんとA子さんはバスを降りて行った。
私も次のバス停で降りることにする…そのバス停は、私がいつも降りていた場所だから。
そこで降りれば、私の行くべき場所に行けるような気がする…。
※※※
「隣のA子さん」は、今日も田中さんの隣で笑っている-。
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