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愛される資格って顔の事?それしか見てないから、あなたはハズレ嫁を迎える事になるのよ。

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「不細工なお前に、愛される資格はない!」

「…え?」

「やはり妻に迎える女は美しくないとな。そうじゃなきゃ、愛する資格も意味もない。俺は彼女に出会い、それを教えられた。」

「彼女って…まさか!」

「そう、お前の幼馴染だ。俺はもう彼女の虜…だから、お前とは婚約破棄する。」

 私がいくら彼を引き留めても、彼の心は私に戻る事はなかった。

 彼は手切れ金だと言って私に金を渡し、去って行った─。

※※※

 それから何日かして…私は街で幼馴染に会った。

「彼と婚約破棄しちゃったんだって?ごめんね、私の美しさがまたあなたの恋を邪魔しちゃったみたい。」

「…仕方ないわ、人の心は縛れないから。」

「彼ね、私を妻に迎えたいんですって。私もそろそろ一人の男に落ち着きたいと思ってたし、丁度いいわ。あなたの分まで彼と幸せになるから、あなたも早く新しい男を見つけなさいよ!」

 そう言って、彼女は人ごみの中に消えて行った。

 そろそろ、落ち着く…。
 あなたが大人しく家庭に収まり、良妻になれるとは思えないけど─。

※※※

 それから三ヶ月程経った頃、私はまた街で彼女を見た。

「あなた…その身体。」

「あ、あぁ…コレ?ちょっとふっくらして来たから分かっちゃった?私ね、お腹の中に子が居るの。でも彼には内緒にして…お楽しみは、もう少し後に取っておきたいから。」

 彼には内緒、楽しみは先に…。

 あの見栄っ張りの女が、子が出来た事を内緒にし報告しないでいるのはおかしい。
 すぐさま彼に報告し、でかしたとお褒めの言葉の一つでも欲しがるはずなのに。

 去って行った幼馴染の背中を、私は訝し気に見つめた─。
 
※※※

 それから暫くして…私はまた街で幼馴染に出くわした。

 彼女のお腹は…一切の膨らみもなく、元のスレンダーな体に戻っていた。

「もしかして…。」

「…見た通りよ。彼が悲しむから、今後は子の話はしないで…蒸し返すような事しないでよ。」

 そうか、駄目だったのか。
 これにはさぞや、彼も心を痛めているだろう。

 そう思っていたのだが…事態は意外な事に。

 彼が私の家に駆け込んで来て、私に復縁を迫ったのだ─。

「あんな女、妻にするんじゃなかった…!家の事は何もせず遊び歩いてばかり…少しでも注意すれば、離縁してやると喚き…あのヒステリーにはもううんざりだ!それに比べ、お前は控えめで穏やかで…お前が妻なら、どれだけ心が休まったか。」

「子を失ったばかりで、そんな事を言うのは…。」

「…子?一体何の話だ?」

「彼女から聞いてないんですか!?」

 私は、町での彼女とのやり取りを、彼に説明した。

「そんな事は知らん!そもそも、子など出来るはずが…結婚してすぐ、彼女は体調がすぐれないと言って、抱かせてくれなくて…。否…その体調が悪いと言うのは、もしや子が原因で…?」

「これは憶測ですが…町で彼女を見かけた時、近くに同じ男が居たんです。私を見て急に他人の振りをしてましたが、あれは男女の仲です。子は、その男の子かも知れませんね。」

「彼女は俺の妻だ、俺と結婚してるんだぞ!?そんな不貞を働く訳が─」

「彼女はその美しさを武器に、昔から私や友人の恋を何度も邪魔しました。そして次から次に男を手玉に取り、飽きたら捨てるを繰り返した悪女。結婚したからと言って、急に真っ当な人間になる訳ないじゃないですか。」

 私の言葉に、彼はショックで固まっている。

「あなたは、美しくないと愛される資格がないと仰いましたが…顔の美しさばかり気にし、心の美しさ…内面は全く見ていなかったんですね。顔しか見てないから、あなたはあんなハズレ嫁を迎える事になるのよ。」

「ハ、ハズレ嫁…。」

 彼はガクリと肩を落とし、涙を流した─。

※※※

 その後家に戻った彼は、幼馴染を問い詰めた。
 するとやはり私の睨んだ通り、お腹の子は彼の子ではなく、街で見かけた男…愛人の子だった。

 子は流れてしまったから、これで私の罪も綺麗さっぱり流れた事にして─!

 そう言って開き直る幼馴染に、彼は離縁を突き付けた。

 そかしその晩、幼馴染は彼の家からお金を持てるだけ持ち、愛人と姿を消した。
 その後漸く二人は捕らえられ、罰を受ける事になったが…持ち逃げされたお金は、全て使われてしまった後だった。
 
 多くの財産を失った彼は、それが元で事業が傾き…このまま行ったら破産してしまうそうだ。

 俺の結婚生活は何だったんだと嘆く彼だが…自分の見る目の無さと、歪んだ思考がこんな結果を招いたのよ…自業自得ね─。
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