上 下
1 / 1

お得意の嘘泣きで男を惑わす義妹ですが…肝心の愛する彼に嫌われては、お終いですね。

しおりを挟む
「あの子は、私を虐める酷い女なのに…。」

 悲しみのなみだを流し、男に訴える義妹。

「分かったから、もう泣かないで?君が泣きやんでくれるなら、あいつとは婚約破棄こんやくはきするよ。」

うれしい!」

 義妹の涙に、男は落ちた─。

※※※

「いい加減、その涙で男をまどわすのは辞めなさい!いくら自分より人気のある令嬢が気に喰わないからって、婚約破棄させるなど…。」

「うるさいわね!女の涙は最大の武器だから、使わないとそんよ。まぁ、私の様に外見にめぐまれた女にしか出来ない事よね。お姉様のような地味女には…フフッ、一生かかっても無理ね。」

「…ところであなた、彼の事は本気なの?」

勿論もちろんお姉様の婚約者は私が奪うわ…この得意の嘘泣きでね!だから、あきらめて早く他の男を探してよ。まぁどうしても諦められないなら…私の様に嘘泣きして、すがってみたら?」

 義妹はケラケラと笑いながら、って行った。

 義妹の本命は、私の婚約者だ。
 いつか私から彼を奪ってやろうと、虎視眈々こしたんたんと狙っている。

 あなたは、いつだって本気で泣いた事などない。
 悲しみや絶望ぜつぼうの涙がどんなものかなど、全く知らずにいる。

 だけどもうすぐ、あなたは本気で泣く事になるわ。
 
 そして後悔しても、私は知らないから─。

※※※

 血も繋がってないのに姉ぶって…偉そうに!
 あんな女、私に婚約者を奪われ泣きを見ればいい─。

「…あの人はね、気に喰わないからとすぐ小言を言って来て…私を泣かす酷い女なの。あんな女とは、すぐに婚約破棄なさった方が良いわ。」

 私は姉の婚約者の元を訪ね、得意の嘘泣きでそう訴えて見せた。

「彼女が、そんな事を…?」

「あの人は、自分より可愛い私が憎いんです。だから虐めの様な真似を…!私なら、そんなおろかな事はしません。姉と婚約破棄したら、新しい婚約者は是非ぜひこの私を─」

「お断りだ。」

 彼は私の手を取ると、私の指から指輪を抜き取った。

 すると…指輪から光が放たれ、その中にある映像が浮かび上がった。

 私がお姉様からこの指輪を貰う所から始まり…そして令嬢の婚約者を奪う所と─。

『女の涙は最大の武器だから、使わないと損よ。』

『お姉様の婚約者は私が奪うわ…この得意の嘘泣きでね!』

「嫌だ…辞めてよ!一体何なのよ、これは!?」

「これは、俺の魔力をめた魔道具だ。俺はこれを彼女に渡し、そして君に付けさせるように頼んだ。」

「な、何でそんな事…。」

「君の嘘泣きの証拠を集め…嘘つきな君の真の姿を公のものにしようと思って。それに…君が俺を手に入れる為に、何かしてくるんじゃないかと警戒していた。」

「私の嘘泣きは完璧なのに、どうしてあなたは─!」

「俺はただ、愛している婚約者の言葉を信じただけさ。そして俺は…こんな汚い涙を流す嘘つき女など、大嫌いだ。」

「そんなぁ…。」

※※※

 そして家へと戻ってきた義妹は、私の前で号泣。
 私に恨み言を言っていたけど…やがて怒った表情で部屋に入って来たお父様に、連れて行かれてしまった。
 きっとお父様、彼から義妹の事を聞かされ、あの証拠を見たのね…。

 そして義妹は親子の縁を切られ、そのまま家から追放されたのだ。
 
 というのも、あの指輪が元で、これまで嘘泣きをしていた事…それと、令嬢を婚約破棄させた事がバレてしまったからだ。

 余り知られてはいないが、あの令嬢の家は王家とも繋がりがあるそうだからね。
 義妹にはそれ相応の罰を受けさせねば、この家も大変な事になるから仕方ないわ。

 その後義妹はその令嬢の元で、使用人としてタダ働きの上に毎日こき使われ、後悔の涙を流しているそうよ。

 まぁ…完全に他人となった私には、もう関係のない話だけどね。

 義妹の事が片付くと、私は彼から改めて正式に貰う筈だった指輪を渡され、プロポーズを受けた。

 私は嬉しくて、思わず涙ぐんだ。
 そんな私の涙を、彼は優しく指でぬぐってくれた。

 そして涙を流す私を、彼は美しいと言って抱きしめてくれた。

 こういう時の女の涙って、最大の武器ね…義妹の嘘泣きなど目じゃないわ─。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

姉の引き立て役にされている私。だけど、姉が狙っている男に告白されて?!

ほったげな
恋愛
私は姉の引き立て役にされている。ある日、姉が狙っている男との食事会に呼ばれたのだが、その男に告白されて……??!

獣の娘だと皆から迫害されていた私は、真の愛を得る為にこの地を出て行く事にします─。

coco
恋愛
幼い頃に森で拾われた私。 その傍らには大きな獣が居たと言う。 そのせいで獣の娘と呼ばれ、迫害されてきた私だけど…? 私は真の愛を得る為に、この地を出て行く事にします─。

力を失くした無能聖女だと王に捨てられましたが…その後、彼は破滅の道を辿りました。

coco
恋愛
失敗続きの私は、王に無能聖女と罵られ、城から追放された。 でもその結果、彼は破滅の道を辿る事となった─。

王子に婚約破棄され生贄になった私ですが、人外愛されスキルで神様の花嫁になれました。

coco
恋愛
王子により婚約破棄され、生贄になった私。 愛人の聖女の代わりに、この国の神に捧げられるのだ。 「お前など、神に喰われてしまえ!」 そうあなたたちは言うけど…それは大丈夫だと思います。 だって私には、人外愛されスキルがあるんだから。 昔から何故か人には嫌われるけど、不思議なものには愛されてた。 だから生贄になっても、きっと幸せになれるはず─。

夫に惚れた友人がよく遊びに来るんだが、夫に「不倫するつもりはない」と言われて来なくなった。

ほったげな
恋愛
夫のカジミールはイケメンでモテる。友人のドーリスがカジミールに惚れてしまったようで、よくうちに遊びに来て「食事に行きませんか?」と夫を誘う。しかし、夫に「迷惑だ」「不倫するつもりはない」と言われてから来なくなった。

野心家な王は平和を愛する私を捨て義姉を選びましたが…そのせいで破滅してしまいました。

coco
恋愛
野心家な王は、平和を死する聖女の私を捨てた。 そして彼が選んだのは、望みを何でも叶えると言う義姉で…?

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

処理中です...