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5、丸の付く日
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「由美ちゃん、その手帳、可愛いね。」
「ありがとう。これ、お気に入りなの。」
「ねえ、中見てもいい?」
「じゃあ…来月のページね。そこならいいよ。」
「やった、ありがとう。…うわ~、中も可愛いね。私も来年は、このキャラの手帳にしようかな。」
「うん…。」
「あれ…由美ちゃん、この丸印は何?何か、日付の所に丸が付いてる。…もしかして、デートの日とか!?」
「それ…!ううん…そんなんじゃないよ。」
「何だ、違ったか~。」
※※
これは、そんなんじゃない。
でも、何よりも大事な日だ。
この日を忘れたら、私は大変なことになる。
あの家に、あの部屋に住むようになって、よく分かった。
あそこは、おかしい。
だから、私がちゃんと対処しなくては。
また引っ越すのは嫌だ、せっかく友達ができた。
それに、お父さんとお母さんも、前みたいに仲良くなってきてる。
もう、生活がかき回されるのは嫌だ。
その為だったら、私は何でもする-。
※※※
「いや~、特に何も居ませんね。どうです、この映像、分かりますか?動物が餌を食べた形跡や、糞尿も見られません。綺麗なものですよ。」
「そうですか…。」
「これを見る限り、害獣の可能性は低いですよ。まあ、もし心配なら、外の通風孔の所に罠を仕掛けたりもできますけど、それだとまた別料金でして…。」
私は駆除業者の方にお礼を言い、今日は帰って頂くことにした。
あまり事を荒立てて、夫に文句を言われるのも嫌だ。
とりあえず、動物の可能性は消えた。
また音が聞こえてきたら、考えよう。
「ママ、お仕事の人帰った?お姉ちゃんのお部屋で、何かあったの?」
「ああ、大丈夫よ。勝手に入ると、お姉ちゃん怒るから。さあ、おやつにしよう。」
私は部屋に入って来た息子の手を引き、この部屋を出ようとした。
すると、息子がくるりと振り返って、壁を見た。
「ママ…あのシミ。」
「ああ、汚れてるでしょ。」
「ううん。そうじゃなくて…可哀そうだね。」
「…何が、可哀そうなの?」
「出れなくて、可哀そう。あそこ小さいもんね。あんなとこから、出れないよね。」
…この子は何を言っているのだ?
私には、何の変哲もないシミにしか見えない。
この子には、一体何が見えているの…?
この家、お化け屋敷なんだって-。
その言葉がふいに浮かんで、私の背中に冷たいものが走った。
※※※
「お前は、勝手に業者まで呼んで…。この請求、誰が払うんだよ。今の職場になって給料が下がったんだから…ちょっとは使い方を考えてくれ。」
「悪かったわよ。それは、私の貯金から払う。」
「お前さ、家に一日中居るから、気になるんだ。息子ももう小学生なんだし、午前中だけでも、パートに出たらどうだ?ゆう君ママのお店で働くのはどうだ、誘われてるんだろう?」
「まあ…。そうね、考えておく。」
お金の話になると、いつも喧嘩になる。
そもそもお金が無いのは、あの婚約者に多額の慰謝料を払ったからじゃない。
そんなことになったのは、あなたが不倫を…辞めよう、こんなこと思っていたら、またあの人を責めてしまう。
今責めたら、私たちはお終いだ。
もう溝は、埋められなくなる…。
「ありがとう。これ、お気に入りなの。」
「ねえ、中見てもいい?」
「じゃあ…来月のページね。そこならいいよ。」
「やった、ありがとう。…うわ~、中も可愛いね。私も来年は、このキャラの手帳にしようかな。」
「うん…。」
「あれ…由美ちゃん、この丸印は何?何か、日付の所に丸が付いてる。…もしかして、デートの日とか!?」
「それ…!ううん…そんなんじゃないよ。」
「何だ、違ったか~。」
※※
これは、そんなんじゃない。
でも、何よりも大事な日だ。
この日を忘れたら、私は大変なことになる。
あの家に、あの部屋に住むようになって、よく分かった。
あそこは、おかしい。
だから、私がちゃんと対処しなくては。
また引っ越すのは嫌だ、せっかく友達ができた。
それに、お父さんとお母さんも、前みたいに仲良くなってきてる。
もう、生活がかき回されるのは嫌だ。
その為だったら、私は何でもする-。
※※※
「いや~、特に何も居ませんね。どうです、この映像、分かりますか?動物が餌を食べた形跡や、糞尿も見られません。綺麗なものですよ。」
「そうですか…。」
「これを見る限り、害獣の可能性は低いですよ。まあ、もし心配なら、外の通風孔の所に罠を仕掛けたりもできますけど、それだとまた別料金でして…。」
私は駆除業者の方にお礼を言い、今日は帰って頂くことにした。
あまり事を荒立てて、夫に文句を言われるのも嫌だ。
とりあえず、動物の可能性は消えた。
また音が聞こえてきたら、考えよう。
「ママ、お仕事の人帰った?お姉ちゃんのお部屋で、何かあったの?」
「ああ、大丈夫よ。勝手に入ると、お姉ちゃん怒るから。さあ、おやつにしよう。」
私は部屋に入って来た息子の手を引き、この部屋を出ようとした。
すると、息子がくるりと振り返って、壁を見た。
「ママ…あのシミ。」
「ああ、汚れてるでしょ。」
「ううん。そうじゃなくて…可哀そうだね。」
「…何が、可哀そうなの?」
「出れなくて、可哀そう。あそこ小さいもんね。あんなとこから、出れないよね。」
…この子は何を言っているのだ?
私には、何の変哲もないシミにしか見えない。
この子には、一体何が見えているの…?
この家、お化け屋敷なんだって-。
その言葉がふいに浮かんで、私の背中に冷たいものが走った。
※※※
「お前は、勝手に業者まで呼んで…。この請求、誰が払うんだよ。今の職場になって給料が下がったんだから…ちょっとは使い方を考えてくれ。」
「悪かったわよ。それは、私の貯金から払う。」
「お前さ、家に一日中居るから、気になるんだ。息子ももう小学生なんだし、午前中だけでも、パートに出たらどうだ?ゆう君ママのお店で働くのはどうだ、誘われてるんだろう?」
「まあ…。そうね、考えておく。」
お金の話になると、いつも喧嘩になる。
そもそもお金が無いのは、あの婚約者に多額の慰謝料を払ったからじゃない。
そんなことになったのは、あなたが不倫を…辞めよう、こんなこと思っていたら、またあの人を責めてしまう。
今責めたら、私たちはお終いだ。
もう溝は、埋められなくなる…。
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