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<後編>
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「大事な話って?心配しなくても、あなたと彼の婚約なら、取りやめになったわ。だって彼、急に体調を崩して寝込んでしまうんですもの…あの身体では、あなたのお婿さんにはなれないわ。」
そう…婚約者は急に体を壊し、実家へと連れ戻された。
私の婚約話は、綺麗さっぱり消えてなくなった。
「だからあなたは、これからもここに─」
「いいえ、お姉様…私はここを出て行きます。」
「ば、馬鹿言わないで、そんな体で家を出たら─」
「家を出た方が、私は元気になれます。もう、あの薬を飲まなくて済むから。」
「…え?」
「私、あなたと彼の話を聞いてしまいました。それで、あの薬が何なのか調べたんです。そしたらお姉様、あなたが私の主治医に金を渡し、違法薬物を手にしていた事が分かりました。私、そんな秘密を知ってしまった以上、もうここには居られません。」
「お願い…謝るから、出て行かないで!私はあなたが居ないと─」
「私が居なくなれば、私の従者も居なくなるから?…お姉様が心に決めた人って、私の従者だったんですね。お姉様の部屋を探るよう彼に命じたんです、そしたら─。」
私は従者を部屋に呼んだ。
彼の手には、あの薬とお姉様の日記が─。
「俺はあなたの想いに応えられません。あなたが、こんな恐ろしい女だとは思わなかった。こんな事をしていると知っていたなら、もっと早くお嬢様をお助けしたかった。」
「それを読まないで…!あなたがいけないのよ、私の想いに気付いてくれない上に妹ばかり大事にするから…心が手に入らないなら、せめて私の傍に─!」
「その為に私の身体を弱らせこの家に…あなたの元に縛り付けたんですね?」
「そうよ…そうすれば、愛する彼とずっと一緒よ!」
「優しくて自慢のお姉様…でも、全てが嘘だったのね。先程も言いましたが私はここを出て行きます、それがあなたにとって一番望まない事だから。」
「せめて、彼だけは置いて行って!」
「それは無理です、俺はお嬢様の従者…傍に居てお守りしなければ。もう二度とこのような目に遭わないよう、ずっと傍に。何より俺は、昔からお嬢様の事が…。」
「あなたがこの子を…?」
彼の気持ちを知った姉は、その場に崩れ落ち泣き叫んだ─。
※※※
その後姉は、私と婚約者に対し違法薬物を使用した件で捕らえられた。
しかし彼に失恋した事と彼が出て行ったショックで、姉は廃人のようになってしまった。
牢の中で、時々誰も居ない空間に向かって話しかける事があるそうだ。
その姿はまるで、あの家で3人で暮らしていた時と同じだという。
そんな訳ないのに…元気になった私は、もう新しい地で生活を始めているのだから。
それこそ、まるで姉など最初から居なかったかのように。
従者であった彼も、今はもう私の夫だ。
あの家での事は何もかも忘れ、私は彼と新しい人生を歩んで行くわ─。
そう…婚約者は急に体を壊し、実家へと連れ戻された。
私の婚約話は、綺麗さっぱり消えてなくなった。
「だからあなたは、これからもここに─」
「いいえ、お姉様…私はここを出て行きます。」
「ば、馬鹿言わないで、そんな体で家を出たら─」
「家を出た方が、私は元気になれます。もう、あの薬を飲まなくて済むから。」
「…え?」
「私、あなたと彼の話を聞いてしまいました。それで、あの薬が何なのか調べたんです。そしたらお姉様、あなたが私の主治医に金を渡し、違法薬物を手にしていた事が分かりました。私、そんな秘密を知ってしまった以上、もうここには居られません。」
「お願い…謝るから、出て行かないで!私はあなたが居ないと─」
「私が居なくなれば、私の従者も居なくなるから?…お姉様が心に決めた人って、私の従者だったんですね。お姉様の部屋を探るよう彼に命じたんです、そしたら─。」
私は従者を部屋に呼んだ。
彼の手には、あの薬とお姉様の日記が─。
「俺はあなたの想いに応えられません。あなたが、こんな恐ろしい女だとは思わなかった。こんな事をしていると知っていたなら、もっと早くお嬢様をお助けしたかった。」
「それを読まないで…!あなたがいけないのよ、私の想いに気付いてくれない上に妹ばかり大事にするから…心が手に入らないなら、せめて私の傍に─!」
「その為に私の身体を弱らせこの家に…あなたの元に縛り付けたんですね?」
「そうよ…そうすれば、愛する彼とずっと一緒よ!」
「優しくて自慢のお姉様…でも、全てが嘘だったのね。先程も言いましたが私はここを出て行きます、それがあなたにとって一番望まない事だから。」
「せめて、彼だけは置いて行って!」
「それは無理です、俺はお嬢様の従者…傍に居てお守りしなければ。もう二度とこのような目に遭わないよう、ずっと傍に。何より俺は、昔からお嬢様の事が…。」
「あなたがこの子を…?」
彼の気持ちを知った姉は、その場に崩れ落ち泣き叫んだ─。
※※※
その後姉は、私と婚約者に対し違法薬物を使用した件で捕らえられた。
しかし彼に失恋した事と彼が出て行ったショックで、姉は廃人のようになってしまった。
牢の中で、時々誰も居ない空間に向かって話しかける事があるそうだ。
その姿はまるで、あの家で3人で暮らしていた時と同じだという。
そんな訳ないのに…元気になった私は、もう新しい地で生活を始めているのだから。
それこそ、まるで姉など最初から居なかったかのように。
従者であった彼も、今はもう私の夫だ。
あの家での事は何もかも忘れ、私は彼と新しい人生を歩んで行くわ─。
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