上 下
1 / 1

私から美形の婚約者を奪った美人の幼馴染ですが…そのせいで、美貌を失い破滅しました。

しおりを挟む
「彼、もうあなたの傍に居たくないんだって。」

「可愛くもないお前にベタベタされるのは、もううんざりだ…お前とは婚約破棄する。」

「そういう事だから、あなたも早く別の相手を見つけて幸せになりなさいよ。」

 美人の幼馴染が、私の婚約者を奪った。
 彼は、この国一の美形と評判の人物だ。

 あの子は、昔から美形の男ばかりを恋人にしていたけど…まさか、幼馴染である私の婚約者にまで目を付けるなんて。

 でも…彼のあの姿は…。

 あれは、所詮は幻のようなもの…きっと、後悔する事になるわよ─?

※※※

 あれから私と彼は、隣の領地に逃げて来ていた。

 だってあそこに居たら、あの女が未練がましく彼を追いかけてくるかもしれないでしょ?
 こんな美形、あの子には勿体ないわ…復縁などさせてやるものですか!

 そして私たちは、彼の持つ別荘で熱い一夜を過ごした。
 駆け落ちし、山奥の別荘で二人きり…盛り上がらない訳がないわ。

 その翌朝…目が覚ました私は、隣で眠る彼の顔を覗き込んだ。

 これから毎日、あの美しい顔を見る事が出来…え!?

 こ、この顔は一体…!?

 そこには、とんでもなく醜い男がいびきをかいて眠っていた。

 私は叫び声を上げ、ベッドから飛び起きた。

「一体どういう事…あなた誰?彼は…あの美形は、どこへ行ったの!?」

「誰って…俺はずっと君の傍に居たじゃないか。」

「じゃあ、本人なの?だって顔が…。」

「俺の本当の顔は、この顔だよ。」

 嘘…この化け物のようなおぞましい顔が?

 これが、本当の顔ですって…?

「俺の一族の男はある呪いを受けて居て…稀に、こんな不気味な顔で生まれてくるんだ。でも…魔力で顔などどうとでも出来る。だから俺は、あの魔力持ちの婚約者の女に、顔を美しく変えて貰って居たんだ。」

 あの子…好きでこの男と居ると思ってたら…まさかそんな事情があったなんて─!

「でも、顔を美しくしてくれるのはいいが…好みでもない女を傍に置くのは、嫌だったんだよ。そしたら、君が俺に迫って来て…俺は君のような美人が好きだったから、本当に嬉しかったよ。君は言ってくれたよね?あなたの全てが好きだと…それって、俺の本当の顔も好きって事だろう?」

「ち、違うわ!全てって言うのは、顔と財力と地位と…とにかく!こんな顔と知ってたら、誰があなたなど好きになるもんですか!」

 私は堪らず、元の領地に逃げ帰ろうとした。

「あなたとは、今日限りでお別れよ!」

 そう言って、私は彼に背を向けたのだが…何故か急に身体に力が入らなくなり、私はその場に崩れ落ちた─。

「目が覚めたか?」

「…私、どうしたの?」

 訳が分からないといった私に、彼が渡したのは…手鏡?
 
「な、何よこの顔…!」

 そこには、彼と全く同じ顔になった私がこちらを見ていた。

「俺たち一族の男はその呪いにより、交わった者を同じ顔に変えてしまうんだ。でもそれこそが、君が俺のものになった証さ。美醜にこだわる君の事…こんな顔じゃあ、もうどこにも行けないはず。だから俺たち…もうこれで、ずっと一緒に居られるね。」

 そ、そんな…私は死ぬまでこの顔で、この男と運命を共にしないといけないのいけないの…?

 余りのショックに、私はその場に泣き崩れた─。

※※※

「─そういえば、隣の領地に住む知人から聞いたんだが…最近、その地の山奥で怪物が出るらしい。」

「え…。」

「山の中にある別荘でね、そこに住む男女がそう言われているらしいが…とても醜い容姿をしているから、そう言われているそうだ。」

「…まぁ、怖い。一体、どこの誰なのかしらね。でも…そこで二人静かに暮らしているならいいんじゃない?そっとしておいてあげればいいわ。」

 何て、素知らぬ振りをしてみたけど…その二人というのは恐らく、駆け落ちした元婚約者と私の幼馴染だわ。
 あの辺りで、私の魔力が完全に消えた気配がしたから。
 
 そしてどうやらあの女は、彼と交わり同じ顔に変えられてしまったようね。

 私は、私を好きでもない癖に、私の魔力だけ利用しようとするあの男が大嫌いだった。
 家同士の約束で婚約させられたとはいえ、いつか必ず婚約破棄しようと思って居たくらいに─。

 そこを、美形が大好きの幼馴染が奪って行ってくれるんですもの…本当に助かったわ。

 あの子は、人の恋人を奪う事が大好きな性悪女だったけれど…時にはそれが、人の役に立つ事もあるのね。
 
 おかげで私は、こんなに優しくて素敵な殿方と出会い…更には婚約までして、幸せになれたんですもの─。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。

朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。  そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。  だけど、他の生徒は知らないのだ。  スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。  真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。

男子から聖女と言われている同級生に彼氏を奪われた。その後、彼氏が・・・

ほったげな
恋愛
私には婚約もしている彼氏がいる。しかし、男子からは聖女と言われ、女子からは嫌われている同級生に彼氏と奪われてしまった。婚約破棄して、彼のことは忘れたのだが、彼氏の友人とばったり会ってしまう。その友人が話す彼氏の近況が衝撃的で……!?

うるさい!お前は俺の言う事を聞いてればいいんだよ!と言われましたが

仏白目
恋愛
私達、幼馴染ってだけの関係よね? 私アマーリア.シンクレアには、ケント.モダール伯爵令息という幼馴染がいる 小さな頃から一緒に遊んだり 一緒にいた時間は長いけど あなたにそんな態度を取られるのは変だと思うの・・・ *作者ご都合主義の世界観でのフィクションです

私の叔母は不倫をして、酷い目に遭った。

ほったげな
恋愛
私の叔母は不倫している。しかし、それが不倫相手の婚約者にバレてしまった。そして婚約者に連れ去られた叔母は、およそ1か月家に帰って来なかった。

義妹が虚言癖で、私を貶めるような嘘を言うんだが。

ほったげな
恋愛
幼馴染と結婚した私。しかし、その幼馴染の妹が私を貶めるような噓を言ってきて…?!

私の家事に何でも文句を言う夫に内緒で、母に家事をしてもらったら…。

ほったげな
恋愛
家事に関して何でも文句を言う夫・アンドリュー。我慢の限界になった私は、アンドリューに内緒で母に手伝ってもらった。母がした家事についてアンドリューは…?!

性悪な友人に嘘を吹き込まれ、イケメン婚約者と婚約破棄することになりました。

ほったげな
恋愛
私は伯爵令息のマクシムと婚約した。しかし、性悪な友人のユリアが婚約者に私にいじめられたという嘘を言い、婚約破棄に……。

不倫相手に捨てられた夫が家にやって来た。

ほったげな
恋愛
夫の不倫が原因で離婚した。その後、夫が私の家を訪ねてきた。なんと、不倫相手は新しい男を作って、夫を捨てたという……。

処理中です...