1 / 1
天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。
しおりを挟む
「お父様…私、このドレス飽きちゃったわ!」
「よし、すぐ新しい物を買いに行こう。」
「お嬢様、ぜひ私もお連れ下さい!」
妹はお父様と私の従者を引き連れ、部屋を出て行き…私はいつものように、一人家に取り残された。
妹は、この前も新しいドレスを買って貰ったばかりなのに…どうして、そんな我儘が許されるの?
お父様も従者も、私よりあの子が大好きで優先してばかりだ。
でも…私には彼が居る。
だから、寂しくなんてないわ。
そう、思っていたのに─。
「そのドレス、よく似合うよ。」
「ウフフ、あなたに褒められたくてこれを選んだのよ?」
「何て可愛い事を…俺は、そんな君が愛おしくて仕方ない。もうあいつとは別れる…だから俺と─!」
ある日、妹と婚約者がそんな会話をしているのを、私は見てしまった。
あなたは…そんな天使のような笑みを浮かべ、悪魔のような行いをするのね。
私は、涙を流し天を仰ぎ見た。
神様…私も少しで良いから、誰かに愛されたい─。
すると…一筋の光が私に降り注ぎ、ある不思議な声を聞いた。
そう…そういう事だったんですね─。
※※※
「俺と、婚約破棄してくれ。」
「私たちは、深く愛し合ってるの。だからお姉様…彼の事は、もう諦めて頂戴。」
二人は私を呼び出し、そう迫った。
「…そんなに、この子が好きなの?」
「あぁ…。彼女を見ていると、胸の高まりが止まらないんだ!」
「ね?彼は、こんなにも私が好きで─」
「それは、あなたが天使の力を使ったからでしょう?」
「…え。」
「神様は許しませんよ?天使の力を悪用し、人の心を操るなど…。」
「な、何言ってるんだ…彼女がそんな悪行を──」
「私は、以前から不思議だったの。こんな我儘な子が、どうして皆に愛され、好かれるのか。あなた…天使を幽閉し、その力を悪用して居るわね?」
その言葉に、妹はビクリと肩を揺らした。
「この前、私は神様から天啓を受けた。あなたは地上に落ちてしまった天使を捕え、監禁し…その力を利用し、他人を魅了しているのだと。」
「な、何!?そんな恐れ多い事を、彼女が…?」
「地下室に閉じ込められていた天使は、先程私が救い出し空へお返ししました。私はあの天啓を受けたと同時に、聖女の力も授かりましたので。」
「な、何て事してくれたのよ…せっかく術師を雇い、あそこに閉じ込めたのに!天使は愛される存在で…その力を手にしていれば、私は全ての者を魅了出来たと言うのに…!」
その瞬間、天から光の柱が降りて来て…妹の顔を照らした。
すると…天使のように愛らしかった妹の顔は急に形が崩れ、とてつもなく醜い顔へと変わった。
その姿を見た彼は、その場で腰を抜かしてしまった。
そして庭の池に映った自身の顔を見た妹は、わなわなと震え叫んだ。
「何よこれ…お願い、元に戻して!」
「無理よ、あなたはもう一生そのままです。神の罰を受け、それを背負い生きて行かなければならない。」
「な、何ですって!?」
「あなたは天使の力を持っていても、その行いは悪魔そのものだった。だから…神がそれにふさわしい姿形にして下さったのよ。」
「お願い…お姉様は聖女になったんでしょう?だったら、私を元に戻して…あの可愛かった私に─!」
妹は泣き叫び、ガクリとその場に崩れ落ちた─。
※※※
その後妹は、騒ぎを聞き駆けつけた父と従者に助けを求めた。
しかし二人は、顔が変わってしまった妹を本人とは思えなかったようで…声を荒げこう言った。
「お前のような醜い娘など、私は知らん!どこから入ったんだ、こいつは!」
「私がすぐに追い出します。おい、さっさと立て!」
「何で分からないの、私よ?い、嫌─!」
無駄よ。
もうあなたは天使の力を失ったから…二人はあなたを愛さない。
あなたを愛した者たちによって、あなたは捨てられるわ。
この二人だけでなく、彼もね─。
「…ちょっと、見てないで、私を助けてよ!」
「あ…お、俺は…もうお前など知らない!」
そう言って、元婚約者は家を飛び出して行った。
その後家を追い出された妹は、顔を隠し、夜の街で身を売っているそうだ。
あの顔では、とても昼間は出歩けないし…そうするしか、彼女に生きて行く道は無いのでしょう。
そして、聖女となった私は神殿に入り…そして加護を授かりに来たこの地の領主様から、見初められる事となった。
するとお父様も従者も、共に大喜びで祝福してくれた。
私は…神殿の泉に映る自身を見た。
皆に囲まれ幸せそうに微笑む私の背中には、白く美しい羽根がある。
これはあの天啓を受けた際に、神様から頂いた加護だ。
それがこの天使の羽ような形となり、聖女となった私にだけ視えて居る。
この輝き…これはまるで、私の明るい未来を暗示しているようだわ─。
「よし、すぐ新しい物を買いに行こう。」
「お嬢様、ぜひ私もお連れ下さい!」
妹はお父様と私の従者を引き連れ、部屋を出て行き…私はいつものように、一人家に取り残された。
妹は、この前も新しいドレスを買って貰ったばかりなのに…どうして、そんな我儘が許されるの?
お父様も従者も、私よりあの子が大好きで優先してばかりだ。
でも…私には彼が居る。
だから、寂しくなんてないわ。
そう、思っていたのに─。
「そのドレス、よく似合うよ。」
「ウフフ、あなたに褒められたくてこれを選んだのよ?」
「何て可愛い事を…俺は、そんな君が愛おしくて仕方ない。もうあいつとは別れる…だから俺と─!」
ある日、妹と婚約者がそんな会話をしているのを、私は見てしまった。
あなたは…そんな天使のような笑みを浮かべ、悪魔のような行いをするのね。
私は、涙を流し天を仰ぎ見た。
神様…私も少しで良いから、誰かに愛されたい─。
すると…一筋の光が私に降り注ぎ、ある不思議な声を聞いた。
そう…そういう事だったんですね─。
※※※
「俺と、婚約破棄してくれ。」
「私たちは、深く愛し合ってるの。だからお姉様…彼の事は、もう諦めて頂戴。」
二人は私を呼び出し、そう迫った。
「…そんなに、この子が好きなの?」
「あぁ…。彼女を見ていると、胸の高まりが止まらないんだ!」
「ね?彼は、こんなにも私が好きで─」
「それは、あなたが天使の力を使ったからでしょう?」
「…え。」
「神様は許しませんよ?天使の力を悪用し、人の心を操るなど…。」
「な、何言ってるんだ…彼女がそんな悪行を──」
「私は、以前から不思議だったの。こんな我儘な子が、どうして皆に愛され、好かれるのか。あなた…天使を幽閉し、その力を悪用して居るわね?」
その言葉に、妹はビクリと肩を揺らした。
「この前、私は神様から天啓を受けた。あなたは地上に落ちてしまった天使を捕え、監禁し…その力を利用し、他人を魅了しているのだと。」
「な、何!?そんな恐れ多い事を、彼女が…?」
「地下室に閉じ込められていた天使は、先程私が救い出し空へお返ししました。私はあの天啓を受けたと同時に、聖女の力も授かりましたので。」
「な、何て事してくれたのよ…せっかく術師を雇い、あそこに閉じ込めたのに!天使は愛される存在で…その力を手にしていれば、私は全ての者を魅了出来たと言うのに…!」
その瞬間、天から光の柱が降りて来て…妹の顔を照らした。
すると…天使のように愛らしかった妹の顔は急に形が崩れ、とてつもなく醜い顔へと変わった。
その姿を見た彼は、その場で腰を抜かしてしまった。
そして庭の池に映った自身の顔を見た妹は、わなわなと震え叫んだ。
「何よこれ…お願い、元に戻して!」
「無理よ、あなたはもう一生そのままです。神の罰を受け、それを背負い生きて行かなければならない。」
「な、何ですって!?」
「あなたは天使の力を持っていても、その行いは悪魔そのものだった。だから…神がそれにふさわしい姿形にして下さったのよ。」
「お願い…お姉様は聖女になったんでしょう?だったら、私を元に戻して…あの可愛かった私に─!」
妹は泣き叫び、ガクリとその場に崩れ落ちた─。
※※※
その後妹は、騒ぎを聞き駆けつけた父と従者に助けを求めた。
しかし二人は、顔が変わってしまった妹を本人とは思えなかったようで…声を荒げこう言った。
「お前のような醜い娘など、私は知らん!どこから入ったんだ、こいつは!」
「私がすぐに追い出します。おい、さっさと立て!」
「何で分からないの、私よ?い、嫌─!」
無駄よ。
もうあなたは天使の力を失ったから…二人はあなたを愛さない。
あなたを愛した者たちによって、あなたは捨てられるわ。
この二人だけでなく、彼もね─。
「…ちょっと、見てないで、私を助けてよ!」
「あ…お、俺は…もうお前など知らない!」
そう言って、元婚約者は家を飛び出して行った。
その後家を追い出された妹は、顔を隠し、夜の街で身を売っているそうだ。
あの顔では、とても昼間は出歩けないし…そうするしか、彼女に生きて行く道は無いのでしょう。
そして、聖女となった私は神殿に入り…そして加護を授かりに来たこの地の領主様から、見初められる事となった。
するとお父様も従者も、共に大喜びで祝福してくれた。
私は…神殿の泉に映る自身を見た。
皆に囲まれ幸せそうに微笑む私の背中には、白く美しい羽根がある。
これはあの天啓を受けた際に、神様から頂いた加護だ。
それがこの天使の羽ような形となり、聖女となった私にだけ視えて居る。
この輝き…これはまるで、私の明るい未来を暗示しているようだわ─。
33
お気に入りに追加
17
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
格上の言うことには、従わなければならないのですか? でしたら、わたしの言うことに従っていただきましょう
柚木ゆず
恋愛
「アルマ・レンザ―、光栄に思え。次期侯爵様は、お前をいたく気に入っているんだ。大人しく僕のものになれ。いいな?」
最初は柔らかな物腰で交際を提案されていた、リエズン侯爵家の嫡男・バチスタ様。ですがご自身の思い通りにならないと分かるや、その態度は一変しました。
……そうなのですね。格下は格上の命令に従わないといけない、そんなルールがあると仰るのですね。
分かりました。
ではそのルールに則り、わたしの命令に従っていただきましょう。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
私、聖女じゃありませんから
まつおいおり
恋愛
私、聖女クリス・クロスは妹に婚約者を寝取られて婚約破棄される…………しかし、隣国の王子様を助けて悠々自適に暮らすのでいまさら戻って来いって言われても戻る訳ないですよね?、後は自分達でなんとかしてください
かなり短く締めました……話的にはもうすでに完結と言っても良い作品ですが、もしかしたらこの後元婚約者のざまぁ視点の話を投稿するかもです
結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。
困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?
柚木ゆず
恋愛
「アン! お前の礼儀がなっていないから夜会で恥をかいたじゃないか! そんな女となんて一緒に居られない! この婚約は破棄する!!」
「アン君、婚約の際にわが家が借りた金は全て返す。速やかにこの屋敷から出ていってくれ」
新興貴族である我がフェリルーザ男爵家は『地位』を求め、多額の借金を抱えるハーニエル伯爵家は『財』を目当てとして、各当主の命により長女であるわたしアンと嫡男であるイブライム様は婚約を交わす。そうしてわたしは両家当主の打算により、婚約後すぐハーニエル邸で暮らすようになりました。
わたしの待遇を良くしていれば、フェリルーザ家は喜んでより好条件で支援をしてくれるかもしれない。
こんな理由でわたしは手厚く迎えられましたが、そんな日常はハーニエル家が投資の成功により大金を手にしたことで一変してしまいます。
イブライム様は男爵令嬢如きと婚約したくはなく、当主様は格下貴族と深い関係を築きたくはなかった。それらの理由で様々な暴言や冷遇を受けることとなり、最終的には根も葉もない非を理由として婚約を破棄されることになってしまったのでした。
ですが――。
やがて不意に、とても不思議なことが起きるのでした。
「アンっ、今まで酷いことをしてごめんっ。心から反省しています! これからは仲良く一緒に暮らしていこうねっ!」
わたしをゴミのように扱っていたイブライム様が、涙ながらに謝罪をしてきたのです。
…………あのような真似を平然する人が、突然反省をするはずはありません。
なにか、裏がありますね。
夫が幼馴染みと不倫をしている上に妊娠させてしまったので私に離婚をしてほしいと本気てるし迫って来ます。
マミナ
恋愛
夫・ジェイムズは結婚した当初から、
「お前は私の妻として相応しくない、本当に妻として相応しいのはアリシアだけだ。」
とずっといい続けていた。
ジェイムズは夫でありながら幼馴染みであるアリシアと不倫をしていて、その上私に対しては常に敵意を向き出しながら見下す様な態度をとる最低な男性だった。
私としても本当は一緒になんてなりたく無かったが、親同士が決めた結婚だったので仕方なしに同意し、今に至っている。
そんな状態が続いたある日、ジェイムズから呼び出され、彼の口から不倫相手であるアリシアを妊娠させてしまったので今すぐ離婚してほしいと告げて来てー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる