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天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。

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「お父様…私、このドレス飽きちゃったわ!」

「よし、すぐ新しい物を買いに行こう。」

「お嬢様、ぜひ私もお連れ下さい!」

 妹はお父様と私の従者を引き連れ、部屋を出て行き…私はいつものように、一人家に取り残された。

 妹は、この前も新しいドレスを買って貰ったばかりなのに…どうして、そんな我儘が許されるの?
 お父様も従者も、私よりあの子が大好きで優先してばかりだ。

 でも…私には彼が居る。
 だから、寂しくなんてないわ。

 そう、思っていたのに─。

「そのドレス、よく似合うよ。」

「ウフフ、あなたに褒められたくてこれを選んだのよ?」

「何て可愛い事を…俺は、そんな君が愛おしくて仕方ない。もうあいつとは別れる…だから俺と─!」

 ある日、妹と婚約者がそんな会話をしているのを、私は見てしまった。

 あなたは…そんな天使のような笑みを浮かべ、悪魔のような行いをするのね。

 私は、涙を流し天を仰ぎ見た。

 神様…私も少しで良いから、誰かに愛されたい─。

 すると…一筋の光が私に降り注ぎ、ある不思議な声を聞いた。

 そう…そういう事だったんですね─。

※※※

「俺と、婚約破棄してくれ。」

「私たちは、深く愛し合ってるの。だからお姉様…彼の事は、もう諦めて頂戴。」

 二人は私を呼び出し、そう迫った。

「…そんなに、この子が好きなの?」

「あぁ…。彼女を見ていると、胸の高まりが止まらないんだ!」

「ね?彼は、こんなにも私が好きで─」

「それは、あなたが天使の力を使ったからでしょう?」

「…え。」

「神様は許しませんよ?天使の力を悪用し、人の心を操るなど…。」

「な、何言ってるんだ…彼女がそんな悪行を──」

「私は、以前から不思議だったの。こんな我儘な子が、どうして皆に愛され、好かれるのか。あなた…天使を幽閉し、その力を悪用して居るわね?」

 その言葉に、妹はビクリと肩を揺らした。

「この前、私は神様から天啓を受けた。あなたは地上に落ちてしまった天使を捕え、監禁し…その力を利用し、他人を魅了しているのだと。」

「な、何!?そんな恐れ多い事を、彼女が…?」
 
「地下室に閉じ込められていた天使は、先程私が救い出し空へお返ししました。私はあの天啓を受けたと同時に、聖女の力も授かりましたので。」

「な、何て事してくれたのよ…せっかく術師を雇い、あそこに閉じ込めたのに!天使は愛される存在で…その力を手にしていれば、私は全ての者を魅了出来たと言うのに…!」

 その瞬間、天から光の柱が降りて来て…妹の顔を照らした。

 すると…天使のように愛らしかった妹の顔は急に形が崩れ、とてつもなく醜い顔へと変わった。
 
 その姿を見た彼は、その場で腰を抜かしてしまった。

 そして庭の池に映った自身の顔を見た妹は、わなわなと震え叫んだ。

「何よこれ…お願い、元に戻して!」

「無理よ、あなたはもう一生そのままです。神の罰を受け、それを背負い生きて行かなければならない。」

「な、何ですって!?」
 
「あなたは天使の力を持っていても、その行いは悪魔そのものだった。だから…神がそれにふさわしい姿形にして下さったのよ。」

「お願い…お姉様は聖女になったんでしょう?だったら、私を元に戻して…あの可愛かった私に─!」

 妹は泣き叫び、ガクリとその場に崩れ落ちた─。

※※※

 その後妹は、騒ぎを聞き駆けつけた父と従者に助けを求めた。

 しかし二人は、顔が変わってしまった妹を本人とは思えなかったようで…声を荒げこう言った。

「お前のような醜い娘など、私は知らん!どこから入ったんだ、こいつは!」

「私がすぐに追い出します。おい、さっさと立て!」

「何で分からないの、私よ?い、嫌─!」

 無駄よ。

 もうあなたは天使の力を失ったから…二人はあなたを愛さない。
 あなたを愛した者たちによって、あなたは捨てられるわ。

 この二人だけでなく、彼もね─。

「…ちょっと、見てないで、私を助けてよ!」

「あ…お、俺は…もうお前など知らない!」

 そう言って、元婚約者は家を飛び出して行った。

 その後家を追い出された妹は、顔を隠し、夜の街で身を売っているそうだ。
 あの顔では、とても昼間は出歩けないし…そうするしか、彼女に生きて行く道は無いのでしょう。
 
 そして、聖女となった私は神殿に入り…そして加護を授かりに来たこの地の領主様から、見初められる事となった。
 するとお父様も従者も、共に大喜びで祝福してくれた。

 私は…神殿の泉に映る自身を見た。

 皆に囲まれ幸せそうに微笑む私の背中には、白く美しい羽根がある。

 これはあの天啓を受けた際に、神様から頂いた加護だ。
 それがこの天使の羽ような形となり、聖女となった私にだけ視えて居る。
 
 この輝き…これはまるで、私の明るい未来を暗示しているようだわ─。
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