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俺を助けて欲しいと涙する婚約者…私はあなたへの愛を捨て、婚約破棄を告げる事にします。

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 ある日私は、婚約者から大事な話があると家に呼ばれた。

 するとそこには、涙を流す彼の姿があった─。

「実は…かなりの借金を抱えてしまったんだ。俺がふがいないばかりに、済まない事になった。だがお前…婚約当初に言ってくれたな?婚約者同士、困った事があれば支え合って行こうと。」

「はい、確かにそう言いました。愛するあなたの為に、私は力を尽くそうと…。」 

「だったら頼みがある…。俺を愛してるなら、この借金、お前が払ってくれないか?」

 そう言って彼は、私の手をギュッと握りしめてきた。

「私が、ですか…?」

「というのもな…お前と結婚した時に事業が軌道に乗っていればと思い、それで作ってしまった借金なんだ。俺の計画通り事が運ばず、こんな事になって…本当に申し訳ない。いつか必ず返すから…だから金を貸してくれ。」

 そう言って、何度も頭を下げる婚約者。

 そんな彼に、私はこう声をかけた。

「それは、お断りします。むしろ…あなたが私に慰謝料を払って下さらないと。そして…私と婚約破棄して下さらないといけませんわ─。」
 
※※※

 今までの私なら…彼のこんな姿を見たら、きっとすぐ手を差し伸べていただろう。
 そして彼の望むままに借金の肩代わりをし、このまま婚約関係を続けていたに違いない。

 でも今の私は。もうそんな事はしない。

 何故なら──。

『本当に、大丈夫なの?』

『大丈夫だって。あいつは俺に惚れてるから、泣いて頼めばすぐ金を出してくれるよ。』

『あなたも、中々の悪人ね。』

『いいんだよ。俺はもう、あの女に飽きたんだ…。俺の心は、今は君にある─。』

 ある日、婚約者と私の幼馴染がそう言って抱き合うのを見てしまった私。

 この二人…最近やたら仲が良いと思ってたけど…そういう関係だったのね…!

 でもだからって、そんな事を考えてたとは…本当に、呆れたわ─。

※※※

「と、いう訳で…私はもう、あなたと彼女の関係に気づいています。」

「そ、そんな…!」

「それに…あなたは事業の為に借金を作ったと仰いましたが…それも嘘ですよね?」

「…えっ!?」

 私は二人の関係を調べると同時に、彼の事業に関しても色々と調べる事にしたのだ。

「あなたの事業は、今十分儲けが出ている状態です。借金など、全くないじゃありませんか。それなのに、どうしてあなたはお金が必要だったのか…。それは、全て幼馴染の為ですね?あの子は昔から、贅沢好きの見栄っ張り。どうせあの子に、高価なドレスや貴金属を強請られたのでしょう?」

 私の追及に、彼は冷や汗を流し、目線をさ迷わせた。

「最近、あの子が私にやたら自慢してくるんですよ。愛する彼に、指輪を贈られただの、ドレスを飼って貰っただの…。私が何も知らないと思って、ペラペラ話してくるんですよ。あなたがどこの店で何を買ったか…おおよそ調べはついてます。あの子が所持する物と照らし合わせれば…あなたが貢いだものだと、すぐ分かりますよ。」

「あ、あいつ…余計な事を…!」

「あなたは私に、十分な慰謝料を払える余力があります。私を裏切り、騙そうとした罪は、きっちり償って貰いますから─。」

※※※

 その後私は、彼から慰謝料をたっぷり貰い、無事婚約破棄する事が出来た。

 私はそのお金で心機一転、自身で事業を始め…それによりある殿方とお知り合いになり、意気投合…すぐに婚約する事が決まった。

 事業も絶好調だし、彼との付き合いも上手く行っているし…あの男とすっぱり別れ、生き方を変えて本当に良かったわ。

 一方私を裏切ったあの男は、私にした仕打ちが世間に知られる事となり、軌道に乗っていた事業はあっという間に傾き始めた。
 そしてそれをどうにかしようにも、私に慰謝料を払ったせいで事業資金が足りず…結局何も手を打てないまま破産してしまった。
 
 彼ったら、今度は本当に借金を背負い困っている、元婚約者のよしみでお金を貸して欲しいと、私に惨めったらしく縋って来たけど…当然追い返してやったわ。

 そしてそんな彼と浮気関係にあった幼馴染だが…彼女には、実は立派な婚約者が居たのだ。
 でも、この出来事を知られ、お相手から拒絶され…ついに婚約破棄されてしまった。

 そしてその相手に、そして私にも慰謝料を払った事で、彼女の家は破産寸前に…怒った両親により、彼女は家から叩き出され、その後は行方不明となってしまった。

 事実を知った当初は、二人も大事な人間を失ったと嘆いたものだけれど…今となっては、こんな愚か者達と縁が切れて本当に良かったと、私は心から思っているわ─。
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