1 / 1
お調子者の婚約者にも、外面の良い妹にもうんざりでしたが…今の私は、とても幸せです!
しおりを挟む
「…本当に逞しくて、頼りになりますわ!あなたの様な素敵な方が婚約者だなんて…お姉様が、羨ましいですわね。」
「いやぁ、それ程でも…!」
そう言って鼻の下を伸ばし、だらしない顔をして居るのは…私の婚約者だ。
どうやら偶然、町で買い物帰りの妹を見かけ…荷物を運ぶのを手伝ってあげたらしい。
どうせ私との婚約など、家同士が決めた事だし…何より、可愛い妹にあんな事を笑顔で言われたら…そんな反応にもなるわよね。
でもね…あの子のあの笑顔、あれは偽物だから。
だって以前、あの子私にこう言ったのよ─?
『お姉様の婚約者って…力だけが取り柄の、体力馬鹿ですよね?そんな野獣の様な方が婚約者だなんて…私だったら、絶対お断りですのに─。』
確かに、彼は体力は自慢できるが、賢さの方は…。
お世辞を真に受け、すぐにああして調子に乗ってしまうしね。
そのせいで、一緒に居る私が何度も恥をかいたりして来たわ。
まぁ、妹も妹で外面がいいから…ああして、コロッと騙されてしまうのも分かるけれど─。
妹は、皆の前では可愛らしく愛嬌がある姿で居るが…私の前では、それはもう意地の悪い顔を見せる。
今の彼に言っても、とても信じて貰えないでしょうがね─。
ところが…それから、数か月後の事だ─。
「俺との婚約だが…無かった事にして欲しい!」
「…はい?」
「俺は君と別れ…君の妹を、新たに婚約者に迎える事にした。」
「あの子には、既に婚約の話が出てますが…?」
「だって…以前あの子、言ってただろう?俺の様な素敵な人を、婚約者に持つ君が羨ましいって。あれは、実は密かに俺の事が好きで…それに気付いて欲しくて、あんな事を言ったんじゃないかと思って─。」
「はぁ…。」
「それで…俺はその後、もう一度妹に確認したんだ。俺を本当に素敵だと思うか…俺が婚約者だったら、君はどう思うかって。」
「…妹は、何と?」
「勿論、素敵だと…。俺には、魅力が溢れている…そんな人が婚約者だったら、私は幸せになれると思う。彼女は、そう言ってくれた。だから俺は、あの子の為に色々尽くしたし…何なら、一緒に住む家まで用意したんだ!もう、今更後には引けない!」
色々と、ねぇ…。
「分かりました。あなたと婚約破棄します。」
私の返事に、彼は飛び上がるほど喜び…そして、私の元を去って行った─。
※※※
「お姉様…どうしてです?どうして、あの人を止めてくれなかったんですか!?」
床に崩れ落ち…涙を滲ませ、恨みがましい目で私を見てくる妹。
それはそうだろう。
長年片思いしていた殿方が居て、漸く婚約まで漕ぎつけたと思ったら…横からどうでもいい男が割り込んで来て、婚約の話が無しになってしまったのだから─。
それどころか─。
「あんなむさくるしい男が婚約者だ何て…絶対に嫌よ!私は、美形で賢い男が好きなのよ!?あんな人、全く正反対じゃないの!」
妹は、私の元婚約者と婚約する事になり…彼が用意した家で、二人で住む事になってしまったのだ。
「だって、今更断れないでしょう?あなた…彼にお世辞を言って調子に乗らせ、ドレスやアクセサリーを好きなだけ買って貰ったそうじゃない?極めつけは、家まで買わせちゃうんだから…あなたも、大したものねぇ。」
「あ、あれは、あの人が勝手に─」
「でも、彼が家を見せた時…あなた、素敵な家だって…ここに住めたら幸せだと、そう言ったんでしょう?だったら、有難く住まわせて貰いなさい。それが嫌なら…彼に使わせたお金を全て返し、婚約を破棄したら?」
「そ、そんなお金、持ってないわよ~!」
号泣する妹に、私は溜息を付きこう言った。
「私、前から言ってたでしょう?外面が良いのも大概にしろと…。中にはあなたの言葉を本気で捉え、勘違いする者も居るのだからって─。特に、あの人にそういう事をするのは、辞めておけと…言ったわよね?」
「そ、そうだけど…でも─」
「なのにあなたは、そういう馬鹿を揶揄うのが面白いのだと、ちっとも真面目に話を聞かなくて…それでこんな事になったのなら、自業自得じゃない─。」
こうして妹は…好きでもない、むしろ嫌いな男と結ばれる事になったのだ。
そして、彼の元で生活しているが…以前の様に愛想の無い妹を見た彼は、妹を酷く責め…今では、妹にきつく当たるようになってしまったと言う。
しかし、妹は借りたお金の事もあるので、そんな彼に強く出る事も出来ず…彼の機嫌を損ね酷い目に遭わない様、必死に愛想を振りまく事にしたらしい。
それがもう、辛くて堪らない…。
こんな生活は地獄の様だと、こっそり私に手紙を送って来たが…私は、それを破って捨ててしまった。
だって…私にはもう、既に新しい婚約者が居たから…今更昔の男の話を持ってこられても、迷惑なだけだもの。
今の相手はとても賢く、紳士的な方で…一緒に居ると、とても心が落ち着くわ。
そしてそういう方だから、私が人前で恥をかかされる心配もない。
彼は本当に、私には勿体ない程の自慢の婚約者だわ。
これまで、お調子者の婚約者にも、外面の良い妹にもうんざりしてきた私だったけれど…その二人が共に消えてくれた上に、そのおかげでこうして良縁を手に出来るなんて…本当に幸せだわ─!
「いやぁ、それ程でも…!」
そう言って鼻の下を伸ばし、だらしない顔をして居るのは…私の婚約者だ。
どうやら偶然、町で買い物帰りの妹を見かけ…荷物を運ぶのを手伝ってあげたらしい。
どうせ私との婚約など、家同士が決めた事だし…何より、可愛い妹にあんな事を笑顔で言われたら…そんな反応にもなるわよね。
でもね…あの子のあの笑顔、あれは偽物だから。
だって以前、あの子私にこう言ったのよ─?
『お姉様の婚約者って…力だけが取り柄の、体力馬鹿ですよね?そんな野獣の様な方が婚約者だなんて…私だったら、絶対お断りですのに─。』
確かに、彼は体力は自慢できるが、賢さの方は…。
お世辞を真に受け、すぐにああして調子に乗ってしまうしね。
そのせいで、一緒に居る私が何度も恥をかいたりして来たわ。
まぁ、妹も妹で外面がいいから…ああして、コロッと騙されてしまうのも分かるけれど─。
妹は、皆の前では可愛らしく愛嬌がある姿で居るが…私の前では、それはもう意地の悪い顔を見せる。
今の彼に言っても、とても信じて貰えないでしょうがね─。
ところが…それから、数か月後の事だ─。
「俺との婚約だが…無かった事にして欲しい!」
「…はい?」
「俺は君と別れ…君の妹を、新たに婚約者に迎える事にした。」
「あの子には、既に婚約の話が出てますが…?」
「だって…以前あの子、言ってただろう?俺の様な素敵な人を、婚約者に持つ君が羨ましいって。あれは、実は密かに俺の事が好きで…それに気付いて欲しくて、あんな事を言ったんじゃないかと思って─。」
「はぁ…。」
「それで…俺はその後、もう一度妹に確認したんだ。俺を本当に素敵だと思うか…俺が婚約者だったら、君はどう思うかって。」
「…妹は、何と?」
「勿論、素敵だと…。俺には、魅力が溢れている…そんな人が婚約者だったら、私は幸せになれると思う。彼女は、そう言ってくれた。だから俺は、あの子の為に色々尽くしたし…何なら、一緒に住む家まで用意したんだ!もう、今更後には引けない!」
色々と、ねぇ…。
「分かりました。あなたと婚約破棄します。」
私の返事に、彼は飛び上がるほど喜び…そして、私の元を去って行った─。
※※※
「お姉様…どうしてです?どうして、あの人を止めてくれなかったんですか!?」
床に崩れ落ち…涙を滲ませ、恨みがましい目で私を見てくる妹。
それはそうだろう。
長年片思いしていた殿方が居て、漸く婚約まで漕ぎつけたと思ったら…横からどうでもいい男が割り込んで来て、婚約の話が無しになってしまったのだから─。
それどころか─。
「あんなむさくるしい男が婚約者だ何て…絶対に嫌よ!私は、美形で賢い男が好きなのよ!?あんな人、全く正反対じゃないの!」
妹は、私の元婚約者と婚約する事になり…彼が用意した家で、二人で住む事になってしまったのだ。
「だって、今更断れないでしょう?あなた…彼にお世辞を言って調子に乗らせ、ドレスやアクセサリーを好きなだけ買って貰ったそうじゃない?極めつけは、家まで買わせちゃうんだから…あなたも、大したものねぇ。」
「あ、あれは、あの人が勝手に─」
「でも、彼が家を見せた時…あなた、素敵な家だって…ここに住めたら幸せだと、そう言ったんでしょう?だったら、有難く住まわせて貰いなさい。それが嫌なら…彼に使わせたお金を全て返し、婚約を破棄したら?」
「そ、そんなお金、持ってないわよ~!」
号泣する妹に、私は溜息を付きこう言った。
「私、前から言ってたでしょう?外面が良いのも大概にしろと…。中にはあなたの言葉を本気で捉え、勘違いする者も居るのだからって─。特に、あの人にそういう事をするのは、辞めておけと…言ったわよね?」
「そ、そうだけど…でも─」
「なのにあなたは、そういう馬鹿を揶揄うのが面白いのだと、ちっとも真面目に話を聞かなくて…それでこんな事になったのなら、自業自得じゃない─。」
こうして妹は…好きでもない、むしろ嫌いな男と結ばれる事になったのだ。
そして、彼の元で生活しているが…以前の様に愛想の無い妹を見た彼は、妹を酷く責め…今では、妹にきつく当たるようになってしまったと言う。
しかし、妹は借りたお金の事もあるので、そんな彼に強く出る事も出来ず…彼の機嫌を損ね酷い目に遭わない様、必死に愛想を振りまく事にしたらしい。
それがもう、辛くて堪らない…。
こんな生活は地獄の様だと、こっそり私に手紙を送って来たが…私は、それを破って捨ててしまった。
だって…私にはもう、既に新しい婚約者が居たから…今更昔の男の話を持ってこられても、迷惑なだけだもの。
今の相手はとても賢く、紳士的な方で…一緒に居ると、とても心が落ち着くわ。
そしてそういう方だから、私が人前で恥をかかされる心配もない。
彼は本当に、私には勿体ない程の自慢の婚約者だわ。
これまで、お調子者の婚約者にも、外面の良い妹にもうんざりしてきた私だったけれど…その二人が共に消えてくれた上に、そのおかげでこうして良縁を手に出来るなんて…本当に幸せだわ─!
55
お気に入りに追加
15
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。
王女ですが、冤罪で婚約破棄を迫られています
杉本凪咲
恋愛
婚約破棄させてもらう。
パーティー会場でそう告げたのは、私の愛する彼。
どうやら、私が彼の浮気相手をいじめていたらしい。
しかし、本当にそんなことを言っていいのかしら。
私はこの国の王女だというのに……。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!? 今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!
黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。
そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※
【完結】嗤われた王女は婚約破棄を言い渡す
干野ワニ
恋愛
「ニクラス・アールベック侯爵令息。貴方との婚約は、本日をもって破棄します」
応接室で婚約者と向かい合いながら、わたくしは、そう静かに告げました。
もう無理をしてまで、愛を囁いてくれる必要などないのです。
わたくしは、貴方の本音を知ってしまったのですから――。
どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね
柚木ゆず
恋愛
※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。
あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。
けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。
そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。
【完結】貴方が浮気した病弱な幼馴染、陛下の愛人みたいですよ
冬月光輝
恋愛
「ヘレナには俺が必要で、俺にはヘレナが必要なんだ」
浮気現場を見られてもなお、お互いに愛し合っていると悪びれない婚約者のケイン。
自分の幼馴染のヘレナは病弱で私よりも大事だという。
そんな彼は私と一方的に別れを告げて婚約破棄。どうやらヘレナは妊娠してるらしい。
「ヘレナに騙された!よりを戻してくれ!」
しかし、ケインはすぐに私に復縁を要請する。
どうやら、ヘレナは陛下の愛人で手を出したのがバレてケインはかなり立場を悪くしたのだとか。
貴方なんて、もう知らない……!
婚約者に心変わりされた私は、悪女が巣食う学園から姿を消す事にします──。
Nao*
恋愛
ある役目を終え、学園に戻ったシルビア。
すると友人から、自分が居ない間に婚約者のライオスが別の女に心変わりしたと教えられる。
その相手は元平民のナナリーで、可愛く可憐な彼女はライオスだけでなく友人の婚約者や他の男達をも虜にして居るらしい。
事情を知ったシルビアはライオスに会いに行くが、やがて婚約破棄を言い渡される。
しかしその後、ナナリーのある驚きの行動を目にして──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる