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第二章 普通の男の子に戻ります! 戻してください!

成長しない男

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「あの……はじめまして。まだ、私パーティ加入するとは決めてないんだけど……」

 戸惑いながら、メンバーの顔を確認する。
 ……うん。メイクが違う、とか、髪形を変えた、とか、そういうわけじゃない。
 メンバーが俺の知るものからそっくり入れ替わっている。
 一体何が『暁の星』に起きたんだ?

「あぁ、ガリオンに無理やり連れてこられた? うちのリーダーがごめんねぇ?」

 さっき、軽ーく「どーもー」で済ませていた妖艶な美女が苦笑いする。

「うちもつい最近騎士が抜けたばっかりでさ、それで焦ってたのよね。すぐに加入しろとは言わないから、何度か依頼を手伝ってくれないかな? それとも、すでにどこかのパーティに所属済み?」
「あ、いや……今はソロだけど……」

 無意識なのか、前かがみに顔を覗き込まれて、あらわになっている胸の谷間に目が行ってしまう。
 すっげー谷間!
 挟まれてみてー!

「そうなんだ! ちょうどよかった! 何度かやってみて具合が良かったら……」
「ヨナ! 無理に迫らないで。彼女困ってる」

 神官さんが止めてくれたけど、ヨナと呼ばれた女性は面白くなさそうに唇を尖らせているし、魔術師っぽい子は探るような目つきで俺をじろじろと見ている。
 ひとりだけほわほわとした笑顔の子は肩に乗せたリスを撫でていて、何を考えているんだかさっぱり掴めない。

「ごめんなさいね。私はジョーイ。16歳よ。神官のギフトを貰って、人々を守るために冒険者になった。今はE級だけど、すぐにでもD級に上がるつもり。とりあえず、あなたの名前と冒険者ランクを聞いてもいいかしら」

 まっすぐな姿勢と眼差しでパキパキと挨拶しながら、ジョーイは手を差し出してくる。
 俺は少しだけ迷って、その手を握った。

「私は……アディ。同じく16歳で剣士のギフトを受けたわ。一応魔法も使うから、魔法剣士と名乗ってもいいかな。冒険者ランクはDになったばかり」

 俺が自己紹介をすると、ガリオンは驚いた様子で目を見張ったけど、それだけだった。
 ……本当に欠片も気が付く様子もねーな。
 お前と俺、どんだけ長い付き合いだと思ってんだよ。
 さすがに傷つくわ。

「D級の魔法剣士? やるじゃない、ガリオン! これでリマッチできるわ。あんな役立たずの騎士より、よっぽど戦力になりそう! あ、私はヨナ、22歳よ。私もD級。ギフトは盗賊だけど、仲間から物を盗んだりはしないから安心してね」

 茶目っ気たっぷりにヨナがウインクしてくる。
 一応俺は同性に見えているはずだけど、圧倒されてたじたじとしてしまう。

「私はリズ、この子はティナ。テイマーで、ティナは使い魔なの。冒険者ランクはE級だけど、索敵は任せて」
「そうそう、戦闘はさっぱりだけど、索敵はなかなかのものよ。これでもう少し戦闘向きの魔獣をティムしてくれたら、もう少し戦闘力も底上げできるんだけど、大型魔獣は食費もかかるものね」

 ヨナが褒めているのかいないのか微妙なことを言いながら、リスのティナをつつこうとして威嚇されている。
 小さくだけど舌打ちしたのが聞こえて、なんだか嫌な予感がした。
 親切ぶっているだけで、このヨナって人、裏があるな。
 ……オッパイに惑わされないようにしなければ。

「モイラ……魔術師。E級」

 やっぱり魔術師だった子は自己紹介すると、俺のことを拒むみたいに被ったフードの胸元を握って、一歩下がる。
 引っ込み思案なのか、疑り深いのか、少なくとも仲良くする気はなさそうだ。

「そして『暁の星』のリーダーはこの俺ガリオン。アディと一緒で剣士のギフトを受けてる。まぁ、俺は剣一筋だけどな。あと歳も一緒だし! 俺もD級なんだ。なぁ、レベルは? 俺は今、レベル34!」

 自分から話したわけでもないのにスキルやレベルについて聞くのは、一般的に失礼だ。スキルやレベルといった情報が、命を左右する場面もあるからだ。自分に自信のある者は、平気で口にしたりもするけど、何らかの理由がなければ他人に聞いたりはしない。
 なんでか『暁の星』では、普通にオープンにされたけど。
 俺が『惑う深紅』の面々に明らかにしていたのは、レベルの変化が依頼に密接に関係していたからで、彼らがパーティ内でレベル情報を共有していたのは信頼の証だろう。
 それを、まだパーティ加入するとも言っていない俺に聞くなんて、本当にこいつは全然成長していない。

「……私もそんなところ」

 曖昧に笑って見せると、ガリオンは「早速なんだけど」と一枚の依頼書を取り出した。
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