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第二章 普通の男の子に戻ります! 戻してください!

今の俺にできること

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 ……と、言っても、心の中でいくら高笑いをしたところで、何ができるっていうわけでもないんだよな。

 とりあえずは女装したおかげで、俺だと気付かれずに近づくことはできるだろうけど、これでバレたら、相当かっこ悪い。
 幼馴染なだけに気が付く可能性は、他のヤツより格段に高い。
 下手をしたら女装して幼馴染にコナを掛けたヤバい奴だ。
 脱退したショックでおかしな方向に目覚めちゃったと誤解されたらどうしよう。
 近づいたりしないで、見つからないうちに別の町にさっさと移ろうかな。

 迷って、物陰から顔を出したり引っ込めたりしていたら、通りすがりの人に不審な目で見られた。
 へら、と笑って会釈をすると首を傾げて返される。
 ……っぐ、グダグダしてたら衛兵に通報されちまう。

「……どーしよ」

 上手いことバレないでガリオンに接触できたとしても、そこからどうすんだ、って話でもある。
 スターカの町で俺に貢いでくれた連中のように女の子に縁がないならいざ知らず、今まで女の子の方が多いパーティのリーダーをしているガリオンにどこまで通用するものやら。

 別に『アディちゃん』はとびっきりの美少女ってわけでもない。
 あくまでも王都ならその辺にいそうなランク。外見だけで言うなら、好みによっては『暁の星』の面々の方がいいってヤツも少なくはないだろう。
 だからこそ。手を伸ばしたら届きそうだから、男たちは『アディちゃん』に夢中になったに違いない、と俺は踏んでいる。
 これがとびっきりの美女、美少女になると、高嶺の花っていうか、見てるだけで満足できちゃって、話しかけようとか仲良くしたいとか、恐れ多い感じなるんだよな。
 あとちょっとで届きそう、他の連中も気にかけていそう、本当の良さはオレだけがわかって上げられるって勘違い、そんなものが合わさって、あらゆる男があれこれ貢がずにはいられない『アディちゃん』が爆誕してしまった。
 ……我ながら恐ろしい。

 話しかけるべきか、退散すべきか、それが問題だ。
 悩んでいるうちに、ガリオンはギルドへと入っていった。

 とりあえず、せっかくここまで来たし、持ってきた素材だけでも買取してもらうか。
 心機一転やってくつもりだったのに、女装してギルドに入ることになったのは痛いけど、別の町へさらに移動するのに気持ちが傾いている今、どうでもいい。
 冒険者なんて星の数ほどいるんだから、一度素材買取に来た程度の相手、すぐに忘れてくれるだろう。
 予定とは違うけど、しばらく他の町でレベル上げをしてから、また改めてここに来てみたっていい。
 腹をくくって素材買取清算を頼み、見積もりを出してもらっている間に、未練がましく依頼書を貼りだしている壁を眺める。
 ガリオンはD級依頼の辺りをうろうろしている。

 ……何やってんだ、あいつ。

「アディさん。清算、終わりました」
「あ、ど、ども……」
「こちらが討伐報酬と買取の内訳で……今回の報告で、冒険者ランクがDに上がりますよ。おめでとうございます」

 受付のギルド職員さんが小さく拍手してくれる。

「え、あ、ありがとうございます……!」

 そうか、レベルのことは気にしていたけど、冒険者ランクのことは気にしてなかったな。
 冒険者ランクは討伐対象に対するポイント加算方式だから……今までこいつも横取りされていたんだろうか。
 そうかもしれない。
 スターカの町で貢いでくれた連中も、とどめだけ刺した『アディちゃん』の討伐記録をいちいちギルドに報告しないだろうしな。
 ……けど、ってことはこのD級は、ソロでの俺の実績なわけで……素直にそれは嬉しい。
 見習いのG、駆け出しのF、初心者のE、そして一人前の冒険者と認められるD級。
 やっとここまできた。

「……ありがとうございます」

 俺、頑張ってたんだな。
 喜びをじっくりかみしめながら俺はギルド職員さんに頭を下げた。
 ……しかし、何でこんな時にまで俺は女装してんだよ。
 しまらねーな!
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