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第二章 自分の居場所を作りたい!
あらぬ誤解の応酬
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思わず大声で悲鳴を上げたら、ペスが大きな声でウォンウォンと吠えて、普段は家の中に入ってこないミルフェ先輩も飛び込んできた。
「べええええええええええええ!!!!!!」
高く一声威嚇するみたいに叫ぶと、ぼふん、と柔らかなものに抱きこまれる。
んん? いったい何?
「アレン、君一体何をした!?」
うわぁ、ロイ。
あなた、そんな大きな声が出たのね。
「い、いや……俺は何も……」
「嘘つき! チーロちゃんの悲鳴を聞いたわよ! 変態って叫ばれてたじゃないの!」
そうアレンを糾弾する声は女性のもので……誰?
私はすっかり混乱したまま、だけど言うべきことは言ってやらなきゃと顔を上げた。
「あれんが、わたしのむなもとに、てをいれたの!」
指さしてぴしっというと、謎のお姉さんは「ンまぁああああああああ」と叫び、ロイは悍ましいものを見るかのように顔を顰めた。
「……君、婚約者も作らない、結婚もしないと思ったら、幼女趣味が?」
「とんでもない誤解をするな! 結婚しないのはお前だって一緒だろうが!」
「だってロイには私がいるもの」
「はぁあああああ!? っていうか、誰だ、お前!?」
「誤解を招くようなことを言うな」
とんだカオスである。
カオスを生み出しているのは、私を抱きかかえているお姉さんのようなので、私はまじまじと顔を見た。
濡れたように艶のある黒髪は緩くウエーブを作っていて、透った鼻筋に真っ白な肌。宝石みたいな金色の目。頭部には角があり、抱きしめられている感触からするに、お胸は相当豊かなご様子。
かなりの美人さんだ。
「……どなた?」
「あら、寂しいこと言うのねチーロちゃん」
「ひょっとして……みるふぇせんぱい?」
「ご明察♪ 正解よ、チーロちゃん」
なんでわかったかというと、蜜を固めたみたいなトロリとした金色の目の、瞳孔が横長だったのだ。
「じゅうじんかぁ……こんなびじょをぺっとに……」
ロイにじっとりとした目線を向けてしまう。
いくら普段は山羊の姿だとしても、いや、わざわざ山羊の姿をさせているからこそ、こんな美女をペットにしているあたりに性癖のゆがみを感じる。
「あらぁ! 嬉しいことを言ってくれるのね。チーロちゃん、いい子いい子」
嬉しそうにギュギュっと抱き込まれた。
感触としては普段のミルフェ先輩の毛皮と変わりない。
どうなってるんだろ。
「え、ペット!? 学生時代から女を寄せ付けてなかったお前がこんな美女をペットに!? 女不信がそんな歪んだ形で!?」
「今度は私があらぬ誤解を受けている気がする……」
はぁ、と溜息をついてロイがこめかみを押さえた。
ペスがロイを慰めるみたいに寄り添う。
「あら、誤解かしら」
うふふ、とミルフェ先輩が悪戯っぽく笑った。
「彼女には以前迫られたのは事実だが、実力行使された折に調伏し、現在は使い魔として使役している。君も何度も見ているだろう。山羊のミルフェだ」
「へぇええええええ!? ミルフェ!? お前が!? ただの山羊じゃなかったのか!?」
「うふふ」
……考えてみたら、ただの山羊が魔獣を倒したり、あまつさえ食べちゃったりできるものなんだろうか。
そんな生き物がただの山羊なわけがないよね。
「ミルフェはサテュロスとズラトロクのハーフで、ズラトロクの血族という希少性ゆえに周囲からの助命嘆願があった」
「サテュロスとズラトロクのハーフぅ!?」
「そんなものをそこいらに放置するわけにはいかないだろう?」
ミルフェ先輩がタダモノじゃないのはわかったけど、何をそんなに驚いているんだろう。
「なるほどなぁ……」
そして、何を納得しているの?
「べええええええええええええ!!!!!!」
高く一声威嚇するみたいに叫ぶと、ぼふん、と柔らかなものに抱きこまれる。
んん? いったい何?
「アレン、君一体何をした!?」
うわぁ、ロイ。
あなた、そんな大きな声が出たのね。
「い、いや……俺は何も……」
「嘘つき! チーロちゃんの悲鳴を聞いたわよ! 変態って叫ばれてたじゃないの!」
そうアレンを糾弾する声は女性のもので……誰?
私はすっかり混乱したまま、だけど言うべきことは言ってやらなきゃと顔を上げた。
「あれんが、わたしのむなもとに、てをいれたの!」
指さしてぴしっというと、謎のお姉さんは「ンまぁああああああああ」と叫び、ロイは悍ましいものを見るかのように顔を顰めた。
「……君、婚約者も作らない、結婚もしないと思ったら、幼女趣味が?」
「とんでもない誤解をするな! 結婚しないのはお前だって一緒だろうが!」
「だってロイには私がいるもの」
「はぁあああああ!? っていうか、誰だ、お前!?」
「誤解を招くようなことを言うな」
とんだカオスである。
カオスを生み出しているのは、私を抱きかかえているお姉さんのようなので、私はまじまじと顔を見た。
濡れたように艶のある黒髪は緩くウエーブを作っていて、透った鼻筋に真っ白な肌。宝石みたいな金色の目。頭部には角があり、抱きしめられている感触からするに、お胸は相当豊かなご様子。
かなりの美人さんだ。
「……どなた?」
「あら、寂しいこと言うのねチーロちゃん」
「ひょっとして……みるふぇせんぱい?」
「ご明察♪ 正解よ、チーロちゃん」
なんでわかったかというと、蜜を固めたみたいなトロリとした金色の目の、瞳孔が横長だったのだ。
「じゅうじんかぁ……こんなびじょをぺっとに……」
ロイにじっとりとした目線を向けてしまう。
いくら普段は山羊の姿だとしても、いや、わざわざ山羊の姿をさせているからこそ、こんな美女をペットにしているあたりに性癖のゆがみを感じる。
「あらぁ! 嬉しいことを言ってくれるのね。チーロちゃん、いい子いい子」
嬉しそうにギュギュっと抱き込まれた。
感触としては普段のミルフェ先輩の毛皮と変わりない。
どうなってるんだろ。
「え、ペット!? 学生時代から女を寄せ付けてなかったお前がこんな美女をペットに!? 女不信がそんな歪んだ形で!?」
「今度は私があらぬ誤解を受けている気がする……」
はぁ、と溜息をついてロイがこめかみを押さえた。
ペスがロイを慰めるみたいに寄り添う。
「あら、誤解かしら」
うふふ、とミルフェ先輩が悪戯っぽく笑った。
「彼女には以前迫られたのは事実だが、実力行使された折に調伏し、現在は使い魔として使役している。君も何度も見ているだろう。山羊のミルフェだ」
「へぇええええええ!? ミルフェ!? お前が!? ただの山羊じゃなかったのか!?」
「うふふ」
……考えてみたら、ただの山羊が魔獣を倒したり、あまつさえ食べちゃったりできるものなんだろうか。
そんな生き物がただの山羊なわけがないよね。
「ミルフェはサテュロスとズラトロクのハーフで、ズラトロクの血族という希少性ゆえに周囲からの助命嘆願があった」
「サテュロスとズラトロクのハーフぅ!?」
「そんなものをそこいらに放置するわけにはいかないだろう?」
ミルフェ先輩がタダモノじゃないのはわかったけど、何をそんなに驚いているんだろう。
「なるほどなぁ……」
そして、何を納得しているの?
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