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第二章 自分の居場所を作りたい!
ローストビーフの下準備
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アレンがきた翌日、私は彼が残していった肉塊のため、ロイの所持する薬草をひたすらクンクンしていた。
何をしているのか不安なのか、ロイはいつもなら仕事の時間なのに、私がすることを見守っている。
「うぇえ。はなが、ばかになりそう」
ステーキ肉4枚を切り落としてなお、燦然と大きな塊肉として輝くお肉様。
まだまだ肉塊と呼べるそれを、せっかくなら美味しくいただきたい。
そんなわけでお肉に合うスパイスを探しているのだけど……。
「みちは、けわしい……」
ほう、と溜息をついて、とりあえず候補としたスパイスをより分ける。
おそらく胡椒と推察されるパム。
これは汎用性が高いから、多めにキッチンにも置いておくことにした。
パムよりちょっと大きくて、ほんのり甘苦い香りがするのもお肉には合いそうだけど、何もわからないのに冒険する自信はない。
見ただけで私にも判別がついたのは、シナモン。明らかに丸まった木の皮だしね。
後はこれは間違えない、バニラビーンズ!
香りもそうだけど、しわっしわのゴン太ヒジキみたいな形は間違いようがない。
クミンとローズマリーっぽいものも見つけたけど、これがそうでございます、とはとてもじゃないけど言えない。
他のものに関してはお手上げだ。
大体、前世でだってそんなにスパイス使ったことがあるわけじゃない。
おしゃれっぽいかな、って思ってシナモンパウダーを買ったことはあるけど、一、二回ココアに入れてみたら、もう飽きてそれっきりだったし。
あとはレストランとかで、ふーん、って思いながら食べるだけだったもんなー。
この家にあるものだけでカレーが作れそうではあるけど、一から調合できるものかって言ったら無理無理!
カレーはルーを折って煮溶かすものです!
よく見かける赤い缶のアレだって、私にはハードルが高かった。
スパイスから作るカレーはカレー屋さんで食べたことがあるだけだ。
だけど、基本的な調味料が塩と砂糖とはちみつしかない今、スパイスの存在は貴重だ。
使いこなすのは難しいかもしれないけど、ぜひ今後の食卓を彩っていただきたい。
「ロイー、おくすりつぶすやつ、かしてー」
とりあえずローストビーフっぽいものを目指して、今回は、パム(胡椒っぽいやつ)、あと柑橘っぽい爽やかな香りがする葉っぱの乾燥したやつ、ローズマリーっぽいやつ、それとアリンビル(ニンニクっぽいやつ)とショウガっぽいやつを使うことにした。
「薬を潰す……?」
「このごしゅるいを、こんかいはつかいます」
「健胃に消化促進、防腐、抗菌、炎症止めに滋養強壮……なるほど?」
私が選んだスパイスを見てロイは納得しているけど、単純にお肉を美味しくしてくれるかどうかってだけでしか選んでないからね?
「くすりをつぶすどうぐはないの? ごーりごーりって」
いくら何でも薬を飲むとき、まるかじりにはしないよね?
ロイだってそれなりに調合とかしてるみたいな話はしてたし、そのあたりに置いてある本にも、粉にして用いる、みたいなことは書いてあったから、漢方薬みたく粉薬にする文化はあるはず。
「……?」
薬研とかすり鉢みたいなものはないのか。
それなら地道にベキベキ潰していくしかないのか……。
「わかった。おしごとのじゃましてごめんね……」
とぼとぼキッチンに向かった私は、お皿の上で一粒一粒ぎゅっとつまんでスパイスを潰していくことにした。
力持ち万歳。
指先をすり合わせるようにすると、固い実もペキペキと面白いように潰れる。
でもなー。
もっと細かくしたいし、この小さなおててじゃ料理に使うほどの量をすり潰そうと思ったららちが明かない。
「これらを粉にすればいいのかな?」
後ろから私が何をするのかを見ていたロイは、私が持ってきたスパイスを小さな器に入れると、瞬く間にそれらを粉にしてしまった。
「ふぇっ? いまなにをした?」
「薬を粉にしたんだけど」
「まほう」
「ええ。普段と同じように魔法で粉にしたけど、いけなかった?」
あー、そうか。
魔法!
この世界には魔法があるから、薬研とかすり鉢がなくても粉にできるんだ。
「うぇー、まほう、ずるいー」
魔法があれば、あらびきでも粉にでも自由自在じゃないか。
いや、実際のところがどうか知らないけど。
「あぁ。そういえば魔法の使い方を教えると言って、まだ教えていなかった」
「おしえてくれるの!?」
「いいよ。それじゃ……」
「あぁ、まってまって! そのまえにしたごしらえだけしちゃう!」
私はロイが粉にしてくれたスパイスと塩を適当に合わせて、適当な大きさに切ったお肉の塊に擦り付けた。
焼く前だからわかんないけど、適当にやった割にはいい感じじゃないかなー。
美味しくできるといいなー。
「食事の支度にはまだ早すぎるのでは?」
「したごしらえだよ。おにくに、ふうみをなじませるには、じかんがかかるから、いまからやっておくんだよ」
と言っても初めての挑戦だから、上手くいくかどうかは神のみぞ知る!
何をしているのか不安なのか、ロイはいつもなら仕事の時間なのに、私がすることを見守っている。
「うぇえ。はなが、ばかになりそう」
ステーキ肉4枚を切り落としてなお、燦然と大きな塊肉として輝くお肉様。
まだまだ肉塊と呼べるそれを、せっかくなら美味しくいただきたい。
そんなわけでお肉に合うスパイスを探しているのだけど……。
「みちは、けわしい……」
ほう、と溜息をついて、とりあえず候補としたスパイスをより分ける。
おそらく胡椒と推察されるパム。
これは汎用性が高いから、多めにキッチンにも置いておくことにした。
パムよりちょっと大きくて、ほんのり甘苦い香りがするのもお肉には合いそうだけど、何もわからないのに冒険する自信はない。
見ただけで私にも判別がついたのは、シナモン。明らかに丸まった木の皮だしね。
後はこれは間違えない、バニラビーンズ!
香りもそうだけど、しわっしわのゴン太ヒジキみたいな形は間違いようがない。
クミンとローズマリーっぽいものも見つけたけど、これがそうでございます、とはとてもじゃないけど言えない。
他のものに関してはお手上げだ。
大体、前世でだってそんなにスパイス使ったことがあるわけじゃない。
おしゃれっぽいかな、って思ってシナモンパウダーを買ったことはあるけど、一、二回ココアに入れてみたら、もう飽きてそれっきりだったし。
あとはレストランとかで、ふーん、って思いながら食べるだけだったもんなー。
この家にあるものだけでカレーが作れそうではあるけど、一から調合できるものかって言ったら無理無理!
カレーはルーを折って煮溶かすものです!
よく見かける赤い缶のアレだって、私にはハードルが高かった。
スパイスから作るカレーはカレー屋さんで食べたことがあるだけだ。
だけど、基本的な調味料が塩と砂糖とはちみつしかない今、スパイスの存在は貴重だ。
使いこなすのは難しいかもしれないけど、ぜひ今後の食卓を彩っていただきたい。
「ロイー、おくすりつぶすやつ、かしてー」
とりあえずローストビーフっぽいものを目指して、今回は、パム(胡椒っぽいやつ)、あと柑橘っぽい爽やかな香りがする葉っぱの乾燥したやつ、ローズマリーっぽいやつ、それとアリンビル(ニンニクっぽいやつ)とショウガっぽいやつを使うことにした。
「薬を潰す……?」
「このごしゅるいを、こんかいはつかいます」
「健胃に消化促進、防腐、抗菌、炎症止めに滋養強壮……なるほど?」
私が選んだスパイスを見てロイは納得しているけど、単純にお肉を美味しくしてくれるかどうかってだけでしか選んでないからね?
「くすりをつぶすどうぐはないの? ごーりごーりって」
いくら何でも薬を飲むとき、まるかじりにはしないよね?
ロイだってそれなりに調合とかしてるみたいな話はしてたし、そのあたりに置いてある本にも、粉にして用いる、みたいなことは書いてあったから、漢方薬みたく粉薬にする文化はあるはず。
「……?」
薬研とかすり鉢みたいなものはないのか。
それなら地道にベキベキ潰していくしかないのか……。
「わかった。おしごとのじゃましてごめんね……」
とぼとぼキッチンに向かった私は、お皿の上で一粒一粒ぎゅっとつまんでスパイスを潰していくことにした。
力持ち万歳。
指先をすり合わせるようにすると、固い実もペキペキと面白いように潰れる。
でもなー。
もっと細かくしたいし、この小さなおててじゃ料理に使うほどの量をすり潰そうと思ったららちが明かない。
「これらを粉にすればいいのかな?」
後ろから私が何をするのかを見ていたロイは、私が持ってきたスパイスを小さな器に入れると、瞬く間にそれらを粉にしてしまった。
「ふぇっ? いまなにをした?」
「薬を粉にしたんだけど」
「まほう」
「ええ。普段と同じように魔法で粉にしたけど、いけなかった?」
あー、そうか。
魔法!
この世界には魔法があるから、薬研とかすり鉢がなくても粉にできるんだ。
「うぇー、まほう、ずるいー」
魔法があれば、あらびきでも粉にでも自由自在じゃないか。
いや、実際のところがどうか知らないけど。
「あぁ。そういえば魔法の使い方を教えると言って、まだ教えていなかった」
「おしえてくれるの!?」
「いいよ。それじゃ……」
「あぁ、まってまって! そのまえにしたごしらえだけしちゃう!」
私はロイが粉にしてくれたスパイスと塩を適当に合わせて、適当な大きさに切ったお肉の塊に擦り付けた。
焼く前だからわかんないけど、適当にやった割にはいい感じじゃないかなー。
美味しくできるといいなー。
「食事の支度にはまだ早すぎるのでは?」
「したごしらえだよ。おにくに、ふうみをなじませるには、じかんがかかるから、いまからやっておくんだよ」
と言っても初めての挑戦だから、上手くいくかどうかは神のみぞ知る!
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