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第4話
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互いに欲望を吐き出した後、俺たちは並んでベッドに横たわっていた。
暫く落ちていた沈黙を破って、京一郎が俺の顔をじっと見ながら口を開いた。
「それで、俺たちは運命の番なわけだが」
「いや、それって本当かよ? 確かに、突発的にヒート起こしたけど」
「間違いない。俺は嗅覚には自信がある。他にも自信はあるが」
「そうかよ……」
いちいち鼻につく奴だな、と思いながら相槌を打つ。すると京一郎はむくっと起き上がり、「近くのカフェにでも行くか」と言って俺を誘った……。
京一郎の家から徒歩五分くらいの場所に、大手カフェチェーンのス◯バがある。ドライブスルー付きの店舗だから、バイパスを駅方面へ向かって走る車がどんどん入って来る。
近くだから俺たちは歩きで店へ向かった。
テラス席のガーデンチェアに上着を置いて席取りすると、ドリンクを注文しに店内へ入った。
「何が飲みたい?」
「え? 奢ってくれんの?」
「当たり前だ」
「えっと、じゃあ……」
奢りなら思い切り高いものにしてやろうと、期間限定の焼き芋味のス◯バ名物ドリンク、「プラベチーノ」を頼むことにした。京一郎はカフェモカのMサイズ。意外に甘いのが好きなようだ。
ようやく二人ともドリンクを受け取って席に着くと、京一郎はゴホン、と咳払いして話し始めた。
「すっかり順番があべこべになってしまったが、改めて自己紹介する。俺は田中京一郎といって、二十九歳だ。もちろん結婚はしていない。主に家賃収入で暮らしている」
「家賃収入ゥ!?」
金持ちだとは分かっていたが、不労所得で暮らすセレブだと聞いて叫んでしまった。俺だって働いていないが、働かずに金が入るのはとても羨ましい。
「親が資産家だった。それでお前は何をしているんだ」
「ニート!」
俺はあっけらかんと答えた。職業を尋ねられたときはいつもそうしている。すると、京一郎は驚きもせずに「やっぱりな」と言ったので、そんなに無職っぽく見えるのかな、と思って俺は着ている服を見下ろした。
「年は」
「二十四!」
「ふうん」
自分で聞いたくせに、京一郎は然程興味が無さそうに相槌を打った。それからカフェモカをズズッと飲む。
「あの、もう聞きたいこと無いんなら、帰って良い?」
黙っているのが気不味くなってそう聞くと、京一郎はきれいな眉を寄せて「良いわけないだろう」と答えたから、立ち上がり掛けていた俺は再び腰を下ろした。
「単刀直入に聞くが、今すぐ項を噛まれたいか?」
「はえっ!?」
とんでもないことを聞かれて、変な声が出た。俺は思わず項カバーに手を遣りながら答える。
「今すぐって、そんな訳ないじゃん。アンタのこと、何にも知らないんだし……」
「では、結婚を前提に付き合う気はある?」
「は?」
もしかして、交際を申し込まれたのだろうか。
京一郎は真面目な顔で俺を見ているから、とりあえず「意味分かんないんだけど」と答えた。
「俺たちは運命の番で、互いに独身だろう。年も五歳しか離れていないし、普通結婚すると思わないか?」
そんなことを真剣に聞かれて、俺はちょっと頭が痛くなった。それから両手を挙げ、降参ポーズを取って言う。
「とにかく、ヒートのときはアンタが必要だ。でも、結婚とかそういうのは、今は保留で」
「保留?」
理解出来ない、という風に京一郎は眉を寄せた。
しかしその時、ドクッと心臓が鼓動した。すぐにヒートがぶり返したのだと分かったから、震える手で京一郎の手を掴み、「なあ……」と囁いた。
すぐに彼は異変に気が付いて、俺の腕をグイと引いて立たせると「負ぶうぞ」と言って屈んだ。もう股はぐっしょり濡れていたから、あれこれ悩んでいる暇は無かった。
そうして、俺を背負った京一郎は来た道を走って戻った……。
暫く落ちていた沈黙を破って、京一郎が俺の顔をじっと見ながら口を開いた。
「それで、俺たちは運命の番なわけだが」
「いや、それって本当かよ? 確かに、突発的にヒート起こしたけど」
「間違いない。俺は嗅覚には自信がある。他にも自信はあるが」
「そうかよ……」
いちいち鼻につく奴だな、と思いながら相槌を打つ。すると京一郎はむくっと起き上がり、「近くのカフェにでも行くか」と言って俺を誘った……。
京一郎の家から徒歩五分くらいの場所に、大手カフェチェーンのス◯バがある。ドライブスルー付きの店舗だから、バイパスを駅方面へ向かって走る車がどんどん入って来る。
近くだから俺たちは歩きで店へ向かった。
テラス席のガーデンチェアに上着を置いて席取りすると、ドリンクを注文しに店内へ入った。
「何が飲みたい?」
「え? 奢ってくれんの?」
「当たり前だ」
「えっと、じゃあ……」
奢りなら思い切り高いものにしてやろうと、期間限定の焼き芋味のス◯バ名物ドリンク、「プラベチーノ」を頼むことにした。京一郎はカフェモカのMサイズ。意外に甘いのが好きなようだ。
ようやく二人ともドリンクを受け取って席に着くと、京一郎はゴホン、と咳払いして話し始めた。
「すっかり順番があべこべになってしまったが、改めて自己紹介する。俺は田中京一郎といって、二十九歳だ。もちろん結婚はしていない。主に家賃収入で暮らしている」
「家賃収入ゥ!?」
金持ちだとは分かっていたが、不労所得で暮らすセレブだと聞いて叫んでしまった。俺だって働いていないが、働かずに金が入るのはとても羨ましい。
「親が資産家だった。それでお前は何をしているんだ」
「ニート!」
俺はあっけらかんと答えた。職業を尋ねられたときはいつもそうしている。すると、京一郎は驚きもせずに「やっぱりな」と言ったので、そんなに無職っぽく見えるのかな、と思って俺は着ている服を見下ろした。
「年は」
「二十四!」
「ふうん」
自分で聞いたくせに、京一郎は然程興味が無さそうに相槌を打った。それからカフェモカをズズッと飲む。
「あの、もう聞きたいこと無いんなら、帰って良い?」
黙っているのが気不味くなってそう聞くと、京一郎はきれいな眉を寄せて「良いわけないだろう」と答えたから、立ち上がり掛けていた俺は再び腰を下ろした。
「単刀直入に聞くが、今すぐ項を噛まれたいか?」
「はえっ!?」
とんでもないことを聞かれて、変な声が出た。俺は思わず項カバーに手を遣りながら答える。
「今すぐって、そんな訳ないじゃん。アンタのこと、何にも知らないんだし……」
「では、結婚を前提に付き合う気はある?」
「は?」
もしかして、交際を申し込まれたのだろうか。
京一郎は真面目な顔で俺を見ているから、とりあえず「意味分かんないんだけど」と答えた。
「俺たちは運命の番で、互いに独身だろう。年も五歳しか離れていないし、普通結婚すると思わないか?」
そんなことを真剣に聞かれて、俺はちょっと頭が痛くなった。それから両手を挙げ、降参ポーズを取って言う。
「とにかく、ヒートのときはアンタが必要だ。でも、結婚とかそういうのは、今は保留で」
「保留?」
理解出来ない、という風に京一郎は眉を寄せた。
しかしその時、ドクッと心臓が鼓動した。すぐにヒートがぶり返したのだと分かったから、震える手で京一郎の手を掴み、「なあ……」と囁いた。
すぐに彼は異変に気が付いて、俺の腕をグイと引いて立たせると「負ぶうぞ」と言って屈んだ。もう股はぐっしょり濡れていたから、あれこれ悩んでいる暇は無かった。
そうして、俺を背負った京一郎は来た道を走って戻った……。
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