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幕間Ⅲ
十二回目
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「僕の推し、ユーリィ……っ!」
自分が葬送洞にいると認識した瞬間、ユーリィを抱き締めた。ユーリィは「閣下?」と目を白黒させているが、離してやらない。
(もう会えないかと――転生できないかと思った)
僕は情けなくも、十回目に疲れ果ててしまった。
『死者蘇生設定はないのか! くそゲーめ。……ここまで失敗続きとなると、私の存在自体が、ユーリィの死亡フラグに違いない。いっそ何もせず死ねば、君を守れる』
異世界に転生して即、命を絶った。
『だめ宮。おい、目ぇ開けて寝てんのか?』
にもかかわず、日本の庁舎に戻っていた。当然だが上司はいつまでも老けない。
思えばなぜ毎回同じ異世界に転生できるのだろう? それも毎回滑落事故の日に、エドゥアルドとして。
ユーリィを救いたい一心だったけれど、何か別の条件も絡んでいるのかもしれない。
(転生は最大十回まで、とか)
一度気づいたら気に掛かって、考察と情報集めにも身が入らない。
車のヘッドライトに照らされる。ただ誰にも顧みられず死ぬだけだったりして、とはじめて跳ね飛ばされたときの恐怖が数年ぶりに這い上がる。
(怖い。どうか、もう一度……)
「ひとまず、侍医を呼びましょう」
神様、感謝します。どこのどんな神かわからないけれど。
禁忌を犯した、と後ろ指を指されようが構わず、ミロシュ領へとんぼ返りする。転生できたからには、十回分の反省を活かして、差し戻し箇所0のユーリィ救出計画を練ろう。
手段は選ぶまい。自分の目的を最優先する。
「何だか、生まれたときからエドゥアルド・ミロシュだったような考えだな。実際、年単位でエドゥアルドとして生きているし」
独り言ちつつ私室に入るや、異変に気づいた。
一画が、明らかに過去十回と違っている。
寝台の枕元。「始まりの魔法遣いたち」が描かれた絵の横に――
[ニコを殺してはならない]
と書かれていた。
それもこの異世界の言語ではなく、日本語で。
ぞわりと鳥肌が立つ。だが、ニコを殺した覚えはない。王太子の伴侶の座をめぐって退けたくらいだ。その座を明け渡した回も、基本的に彼を補佐した。
(もしや。今は十一回目ではなく、十二回目なのか)
自分が葬送洞にいると認識した瞬間、ユーリィを抱き締めた。ユーリィは「閣下?」と目を白黒させているが、離してやらない。
(もう会えないかと――転生できないかと思った)
僕は情けなくも、十回目に疲れ果ててしまった。
『死者蘇生設定はないのか! くそゲーめ。……ここまで失敗続きとなると、私の存在自体が、ユーリィの死亡フラグに違いない。いっそ何もせず死ねば、君を守れる』
異世界に転生して即、命を絶った。
『だめ宮。おい、目ぇ開けて寝てんのか?』
にもかかわず、日本の庁舎に戻っていた。当然だが上司はいつまでも老けない。
思えばなぜ毎回同じ異世界に転生できるのだろう? それも毎回滑落事故の日に、エドゥアルドとして。
ユーリィを救いたい一心だったけれど、何か別の条件も絡んでいるのかもしれない。
(転生は最大十回まで、とか)
一度気づいたら気に掛かって、考察と情報集めにも身が入らない。
車のヘッドライトに照らされる。ただ誰にも顧みられず死ぬだけだったりして、とはじめて跳ね飛ばされたときの恐怖が数年ぶりに這い上がる。
(怖い。どうか、もう一度……)
「ひとまず、侍医を呼びましょう」
神様、感謝します。どこのどんな神かわからないけれど。
禁忌を犯した、と後ろ指を指されようが構わず、ミロシュ領へとんぼ返りする。転生できたからには、十回分の反省を活かして、差し戻し箇所0のユーリィ救出計画を練ろう。
手段は選ぶまい。自分の目的を最優先する。
「何だか、生まれたときからエドゥアルド・ミロシュだったような考えだな。実際、年単位でエドゥアルドとして生きているし」
独り言ちつつ私室に入るや、異変に気づいた。
一画が、明らかに過去十回と違っている。
寝台の枕元。「始まりの魔法遣いたち」が描かれた絵の横に――
[ニコを殺してはならない]
と書かれていた。
それもこの異世界の言語ではなく、日本語で。
ぞわりと鳥肌が立つ。だが、ニコを殺した覚えはない。王太子の伴侶の座をめぐって退けたくらいだ。その座を明け渡した回も、基本的に彼を補佐した。
(もしや。今は十一回目ではなく、十二回目なのか)
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