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3章 すろうらいふを目指しましょう
10話 書簡と喜劇と期限①
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「一貴族の私に知らせたい大事な話とは何でしょうか、ユーリィ殿下」
翌週、私室に宰相子息のシメオンを招いた。わたしの傍らにエドゥアルド公爵が控えるのを見て、伯爵家の彼はやや肩肘ばる。
「よい知らせですよ」
心を開いてもらうべく、爽やかな香りの紅茶を勧める。その実、わたしも緊張している。
わたしの死亡ふらぐに、シメオンも関わっているというのだ。
これまで第二王子ゆえ軽く見られていると感じこそすれ、議会中に対立したこともないのだが。とにかく、気を引き締める。
「最近、ステヴァン殿下と個人的に書簡をやり取りしていまして」
「ほう」
「その中で、魔力について新たな発見があったのです」
「と言うと?」
シメオンの鼻眼鏡の奥の目が、ぎらりと光る。
彼はいわゆるフセスラウ派――魔法戦争時代への逆戻りを防ぐため、禁忌破りは厳しく取り締まるべきと考える貴族の、筆頭だ。
(公爵の言うとおり、食いつきましたね)
なお、わたしたちフセスラウ王族も魔力封印を肯定的に捉えている。わたしが魔法遣いに憧れたのは幼い頃の話だ。今では危険性をきちんと理解した。
その上で、魔法を正しく遣う公爵への尊敬がやまない。
ちらりと公爵を見れば、公爵もわたしを見ていて、小さく頷いてくれる。身体に力が漲り、凛と息を吸い込む。
「王族の血に刻まれた魔力源は、四十五年間使用されなかった場合、消えるのです」
「なんと……! 私の人生いちばんの朗報です」
シメオンはたちまち満面の笑顔になった。彼がこんなふうに感情を露わにするのは滅多にない。
「終戦の実現も夢ではなくなります」
「はい。二国間協議を持てればと。兄の婚約式後になると思いますが、我が国の協議団の中心となる卿には、先に知らせておきたかったのです」
「お任せください。ちなみに、ステヴァン殿下側は何と言っておられますか」
またも公爵と目を見合わせ、ほんのり口角を持ち上げる。
パルラディは、王族も貴族も、魔法を有効活用して国を豊かにしようという考えだ。たとえ魔力の封印を解こうと戦争にかまける暇はない、祖父王に課された反省は充分した、と。
始まりの二人である「パルラディ」と「フセスラウ」の考えの違い、そのままだ。「魔法を人間にもっと広げよう」「乱用はよくない」と対立したとか。
ステヴァン殿下は、積極的に魔力解放方法を調べてさえいる。書簡で友好を図る中、とある持ち掛けで判明した。
[我が王宮所蔵の魔法書に、封印の解き方が記されているかもしれない。解読を手伝ってくれないか]
翌週、私室に宰相子息のシメオンを招いた。わたしの傍らにエドゥアルド公爵が控えるのを見て、伯爵家の彼はやや肩肘ばる。
「よい知らせですよ」
心を開いてもらうべく、爽やかな香りの紅茶を勧める。その実、わたしも緊張している。
わたしの死亡ふらぐに、シメオンも関わっているというのだ。
これまで第二王子ゆえ軽く見られていると感じこそすれ、議会中に対立したこともないのだが。とにかく、気を引き締める。
「最近、ステヴァン殿下と個人的に書簡をやり取りしていまして」
「ほう」
「その中で、魔力について新たな発見があったのです」
「と言うと?」
シメオンの鼻眼鏡の奥の目が、ぎらりと光る。
彼はいわゆるフセスラウ派――魔法戦争時代への逆戻りを防ぐため、禁忌破りは厳しく取り締まるべきと考える貴族の、筆頭だ。
(公爵の言うとおり、食いつきましたね)
なお、わたしたちフセスラウ王族も魔力封印を肯定的に捉えている。わたしが魔法遣いに憧れたのは幼い頃の話だ。今では危険性をきちんと理解した。
その上で、魔法を正しく遣う公爵への尊敬がやまない。
ちらりと公爵を見れば、公爵もわたしを見ていて、小さく頷いてくれる。身体に力が漲り、凛と息を吸い込む。
「王族の血に刻まれた魔力源は、四十五年間使用されなかった場合、消えるのです」
「なんと……! 私の人生いちばんの朗報です」
シメオンはたちまち満面の笑顔になった。彼がこんなふうに感情を露わにするのは滅多にない。
「終戦の実現も夢ではなくなります」
「はい。二国間協議を持てればと。兄の婚約式後になると思いますが、我が国の協議団の中心となる卿には、先に知らせておきたかったのです」
「お任せください。ちなみに、ステヴァン殿下側は何と言っておられますか」
またも公爵と目を見合わせ、ほんのり口角を持ち上げる。
パルラディは、王族も貴族も、魔法を有効活用して国を豊かにしようという考えだ。たとえ魔力の封印を解こうと戦争にかまける暇はない、祖父王に課された反省は充分した、と。
始まりの二人である「パルラディ」と「フセスラウ」の考えの違い、そのままだ。「魔法を人間にもっと広げよう」「乱用はよくない」と対立したとか。
ステヴァン殿下は、積極的に魔力解放方法を調べてさえいる。書簡で友好を図る中、とある持ち掛けで判明した。
[我が王宮所蔵の魔法書に、封印の解き方が記されているかもしれない。解読を手伝ってくれないか]
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