上 下
102 / 115

ノアーウイルス

しおりを挟む
フォリー「ノアーウイルスとは生物が誕生する前時代より存在する巨大ウイルスの一種です。巨大ウイルスとは光学顕微鏡でも確認出来るほど大きなウイルスのことです。実は、我々の身近にある川や池などにありふれています。ミルクさん」

ミルク「え、あ、はい!」

フォリー「ノアの方舟が登場する神話を聞いたことはありますか?」

ミルク「動物さん達を乗せた大きな船のこと、だったかな」

イチゴ「うん。カルポスさんが寝る前に読んでくれた絵本の話じゃ」

フォリー「結構。要約しますと、この惑星で世界規模の大洪水が起きたときに種を存続させるためノアが方舟を作り、彼の家族と、様々な動植物をペアで方舟へ乗せて危機を乗り越えたという神話です」

イチゴ「分かりました!」

フォリー「よろしい。ノアーウイルスは太古より遺伝子情報を蓄積して、今では551万にも及ぶ種々様々な遺伝子情報を保存しています。これがノアの方舟から名を取った由縁です」

ココア「なるほど」

フォリー「ノアーウイルスから様々な生物が誕生したのかも知れない。稀にノアーウイルスは生体に感染すると、相手の遺伝子情報を盗むことがあり、逆に渡すことだってあります。そうして生物と共進化を遂げてきたのかも知れない。学者達はノアーウイルスから生命の謎を解き明かそうと今なお研究を続けております。さて、ココアさん」

ココア「はい」

フォリー「魔改造されたノアーウイルスが持つ遺伝子情報の総数はご存知ですか?」

ココア「不明です。ウイルスに魔術師が仕掛けをしているからです」

フォリー「よろしい。魔術師は遺伝子情報を読み取れないよう細工を施しているのです。それには非常に高度な、いや、もはや別次元の技術が用いられており、量子コンピューターや人工知能の力を借りても困難を極めております。しかし」

ブルスコ「おお!まさか判明したのですか!」

フォリー「魔改造ウイルスが持つ遺伝子情報は基本的に平均して15369あると判明しました。しかしその総数には誤差があります。イチゴさん」

イチゴ「はい!」

フォリー「どうして誤差があるのでしょうか?あなたは、今までどのようなアンデットと出会ってきましたか?」

イチゴ「クマイノシシとかワニとか人とか、あ、わんわんとか鳥とか巨人もおったし、虫が合体したやつもおったし、んーとミイラじゃろう、えーとエスカルゴじゃろう。あと、人と蜘蛛と牛さんが合体した妖怪もおった!」

フォリー「よろしい」

イチゴ「やった!正解じゃ!」

ココア「しっ、声が大きい」

フォリー「イチゴさんが話してくれたようにアンデットには種類があります。一つの遺伝子情報だけを持つアンデット。そして、二つ以上の異なる生き物の遺伝子情報を持ち、自然的と人工的、この二つで区別されたキメラアンデットとハイブリッドアンデット。大きく分けて三種に分かれます。これらはそれぞれ動物型が最も多く、その次に人型で、超能力を扱うサイコタイプの人型が発見されたことが記憶に新しいでしょう。それは、このチビちゃん達のお手柄です」

イチゴ「お手柄じゃと」

ココア「しっ」

フォリー「また、大型や巨大型と呼ばれる規格外のアンデットも存在します。つまるところ魔改造ウイルスは、アンデットは、現在進行形で進化しているということです。その過程で新たな遺伝子情報を作り出している。それこそが総数の誤差なのです。間違いなくこれからも、遺伝子情報の数は、進化のために増していくことでしょう」

ミルク「あの。どんどん増えたらどうなるんですか?」

フォリー「いい質問です。黒魔術師の目的の一つがそれなのです。どんどん遺伝子情報を増やして、良いところだけを残して、それを重ねて進化させ、人工的に究極の生物を造ろうとしているようです」

ミルク「ちょーヤバいじゃん……」

イチゴ「どんどん強くなるってことですか」

フォリー「その通りです。しかしアンデットは死体だからこそ基本的に脆い。死体が激しく損傷したり強いショックを受ければ再度と絶命します。どんなアンデットも倒せないことはないのです。また、宿主が絶命すれば魔改造ウイルスはたちまち死滅していきます。宿主の肉体もそれと同じく腐敗してしまいます。教会は魔改造ウイルスを何としても回収したい。そこでココアさん」

ココア「死体はすぐにダメになるので、ウイルスがなくなるのが遅い骨を優先して回収します」

ミルク「そういうことだったんだ」

イチゴ「知らんかったのう」

フォリー「二人もよく覚えておきなさい。以上で、年末アンデット大掃除の作戦会議は終わりにします。帰る時間なので質問は受け付けません。みなさんの無事と健闘を祈っています。さようなら、お元気で」

イチゴ「さようならー!」

ココア「風のように去っていきました」

イチゴ「わしらも進化して強くならないとあかんのう」

ミルク「このお仕事で終わりなんだから、これ以上は強くならなくて大丈夫だよ」

ココア「危険なことは、大人に任せればよいのです」

ミルク「うん。私達は私達に出来ることをしよう」

イチゴ「分かった」

ココア「私も賛成です。精一杯がんばりましょう」

ミルク「じゃ、さっそく今日やることやろう」

ココア「お見舞い作戦開始ですね」

イチゴ「へっへっへっ。美味しいもの食べさせてやるぞ」

ミルク「ふっふっふっ」

ココア「ほっほっほっ」

のりこ「お見舞い作戦ですって」

さちよ「可愛いらしいね」

オパンティヌス「彼女達のおかげで緊張がほぐれるよ」

ゆずる「まったく有難い」

ミルク「恥ずかしいから行こう」

ココア「反省です」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。 その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。 落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。

武田義信に転生したので、父親の武田信玄に殺されないように、努力してみた。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 アルファポリス第2回歴史時代小説大賞・読者賞受賞作 原因不明だが、武田義信に生まれ変わってしまった。血も涙もない父親、武田信玄に殺されるなんて真平御免、深く静かに天下統一を目指します。

月宮殿の王弟殿下は怪奇話がお好き

星来香文子
キャラ文芸
【あらすじ】 煌神国(こうじんこく)の貧しい少年・慧臣(えじん)は借金返済のために女と間違えられて売られてしまう。 宦官にされそうになっていたところを、女と見間違うほど美しい少年がいると噂を聞きつけた超絶美形の王弟・令月(れいげつ)に拾われ、慧臣は男として大事な部分を失わずに済む。 令月の従者として働くことになったものの、令月は怪奇話や呪具、謎の物体を集める変人だった。 見えない王弟殿下と見えちゃう従者の中華風×和風×ファンタジー×ライトホラー ※カクヨム等にも掲載しています

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

妹の結婚を邪魔するために姉は婚約破棄される

こうやさい
ファンタジー
 お姉ちゃんは妹が大好きですよ。  今更ですが妹の出番がほとんどなかったためタイトルを変更しました。  旧題『婚約破棄された姉と姉に結婚を邪魔された妹』  元は『我が罪への供物』内の一話だったんだけど、アレンジしたらどうなるかなとやってみた。それとカテゴリから内容は察してください(おい)。元の方も近いうちに出します。『我が罪~』はなかなか出すタイミングがとれないからちょうどよかった。  そういう理由なので互い同士がネタバレと言えなくもないですから、細切れで短いシロモノなのにあれですがあまり需要がないようなら中断して向こうを優先する予定です。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

処理中です...