上 下
66 / 115

6回目の風邪

しおりを挟む
イチゴ「ぺっぷしっ!」

神父「良かった。うどんを綺麗に食べましたね。あとはお薬を飲みなさい」

イチゴ「これは?」

神父「栄養ドリンクです。君にとってはジュースみたいなものです」

イチゴ「ジュース!やった!」

神父「ちょっと変わった味ですけどね」

イチゴ「でも、おいしい」

神父「それは良かった。水筒の温かいスポーツドリンクはまだ残っていますね」

イチゴ「うん」

神父「それでは、布団をきちんと被って温かくして、少し眠ってください。夜はシスターにお任せしますので私はこれで」

イチゴ「待って」

神父「どうしました?」

イチゴ「寝るまでここにいて」

神父「分かりました。いいでしょう」

イチゴ「何かお話しして」

神父「お話、ですか。うーん」

イチゴ「神父さんは、ずっと神父さんなの?」

神父「昔はファミリーを組んでアンデットと戦ったりもしましたよ」

イチゴ「強かった?」

神父「もちろん。と言いたいところですが、私はヒューマンでしたので。当然に超能力は使えず、武器もうまく扱えず、それで神父さんになろうと勉強を始めました」

イチゴ「どんなアンデットと戦ったの?」

神父「私が若い頃は、まだ人型アンデットはおりませんでした。それに、今ではたまに見かけるキメラアンデットも珍しい時代でした」

イチゴ「キメラアンデット?」

神父「君達が初めて戦ったアンデットのように、二種類以上の生き物の特長や特性を合わせ持ったアンデットのことです」

イチゴ「あークマイノシシとか百足蜘蛛のことか」

神父「そうです。しかし、現在よりもアンデットがたくさんいて争いの激しい時代でありました」

イチゴ「怖いね」

神父「そりゃもう怖かったですよ。まず世界救護軍がユーエフオーや様々な兵器でアンデットをバババッと攻撃して、ファミリーは残ったアンデットを倒したり死体を片付けるのが主な仕事でした。私はミルクさんと同じで後ろからバンバンと撃ってサポートする係でしたから、数が多いと大変で大変で」

イチゴ「私達もたくさんのアンデットに追いかけられた時あるよ」

神父「怖かったでしょう」

イチゴ「うん。でも、友達がいたから平気だったかも」

神父「私もです。今は、三人とも遠く離れた場所にいますが、あの時はとても頼りになりました」

イチゴ「強かった?」

神父「私なんかよりもずっとね。三人ともヒューメイリアンで、魔法で戦うことを得意としていました」

イチゴ「ヒューメイリアンは、やっぱり魔法を使うんだ」

神父「ヒューメイリアンは半信半疑で魔法は試行錯誤、そんな曖昧で不安な時代でも、彼らは前線で立派に活躍してたくさんの人に支持されていました」

イチゴ「本を持ってた?」

神父「魔導書のことですね。もちろん持っていましたよ。本というよりはメモ帳みたいなものです。魔法の特徴をその都度に記しておくものです」

イチゴ「魔法って、想像したことを本当にするんでしょう」

神父「ええ。ヒューマンにとっては、さっぱり分からないですけど」

イチゴ「私もヒューメイリアンだけど、まだ覚醒してないから分からない」

神父「ヒューメイリアンは超能力や魔法を感覚的に理解するそうです。あなたも、いつかその日がきっと来るでしょう。魔法を扱うのはとても難しく、ヒューメイリアンでも扱えるものは僅かですが。しかし超能力ならば、物を動かしたり透視をしたり、もしかしたら未来予知なんてのが出来るようになるかも知れません」

イチゴ「楽しみ」

神父「楽しみですね」

イチゴ「じゃ、そろそろ寝るね」

神父「はい。ゆっくりお休みなさい」

イチゴ「行かないでね」

神父「君が眠るまで側にいます」

イチゴ「手、握ってて」

神父「喜んで」

イチゴ「ありがとう。おやすみ」

神父「子守唄でも歌ってあげましょうか」

イチゴ「ううん。いらない」

神父「残念、自信があったのに」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友
ファンタジー
 サクヤは目が覚めると森の中にいた。  しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。  虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。  歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。  それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。 9/28~10/6 までHOTランキング1位! 5/22に2巻が発売します! それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

【総集編】未来予測短編集

Grisly
SF
⭐︎登録お願いします。未来はこうなる! 当たったら恐ろしい、未来予測達。 SF短編小説。ショートショート集。 これだけ出せば 1つは当たるかも知れません笑

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!

処理中です...