いとしのチェリー

両想い

１１ ループつらたん

後日、家族再集合

檎源郷は、数ある中で特定のキノコの輪の中に立つことで転移できる
そこは自然豊かで黄金の林檎が実る素敵な世界
妖精達の暮らす村は現在、月見祭に向けて煌びやかな飾りで賑わっていた
大樹の枝にはガラス細工の妖精の家がぶら下がっていて、思わず親父も心を奪われてキュンです

とりわけ綺麗なのが黄金の林檎が最も実る大樹
妖精達にとってのお城で、ここに妖精の女王が暮らす
しかし彼女は今、トラブルに巻き込まれて眠り続けていた
隣ですやすや眠るうさぎを見て間違いなく、猫研究同好会の仕業だと分かった
側近の妖精の話によると団子を分かち合って談笑しているうちに二人とも眠ってしまったらしい
毒リンゴならぬ毒ダンゴかしら

側近の妖精は続けて
きっと悪夢にうなされているわ
あなたもお団子を食べて女王様を夢の中から救い出してくださいませ
と無茶な事を頼んできた
断っても何も進まないので、わざわざ一服盛られた団子を食べて
これが柔らかく素朴な味わいでおいしいの
充実感と幸福感のまどろみに襲われて眠りに落ちた

そこで、銀の首飾りをしたうさぎと再会
名前はモネコという
よっぴー！という挨拶から

もしかして、あの羊と知り合いか？

モネカと会ったの！うれぴー！
meたちは姉妹じゃないけど、それっくらい仲良しなんだ！

と特殊会話が発生して盛り上がり
でもそんな場合ではなくて
詳しい事情をモネコに訊くと
獏という空想生物を目覚めさせる計画だと打ち明けた

バクは檎源郷の守護者であり支配者であり今はネコツキでもある

彼の首に鈴をつけて、現実に召喚して、伝説級のネコツキと戦わせようと思いついたの
とモネコは胸を張った
そして、偉いでしょ褒めて、と頭を下げるので撫でてやったが馴れ合っている場合ではない

ここ、ピカソの絵みたいなキュビスムに憧れた空間で妖精の女王が迷子になっているという
モネコも迷子だよ
妖精の女王がいなければ獏に会えないとしょげるモネコ
なんて漠然とした無計画なんだと怒っても仕方ない

無我夢中になって、あちらこちらにある扉を開けては開けては開けては開けては、いよいよ気が狂いそうな無限ループ
世にも奇妙な空間を彷徨い、しかしよく見れば妖精の鱗粉が目印になっていることに親父が四十二分経った頃に気付いて

「ふう、やっとだ」

獏のもとへ辿り着いた