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恩返し
1 キャラクタークエスト
しおりを挟む猫月の世界
ここでは四季折々の自然を楽しめる
どこより特徴的なのは猫顔の月が浮かんでいること
今日の桜桃は夏を感じる漁師町へやって来た
この世界の全てのミステリースポットを攻略した後に解放される、キャラクタークエストを受けてここへ来た
町を治める武家領主の屋敷を訪ねる
立派な門の内で、紫苑の家紋が旗めく幟が二本、潮風に揺れている
桜桃は妙に緊張してそわそわしちゃった
女中さんに案内されて、何故か甲冑で武装した体の大きい男と面会する
彼こそが、この屋敷の主人でありこの町の領主だ
彼は一人娘の行方を探して欲しいと恭しく頼んだ
もちろん二つ返事で了承する
屋敷を後にすると、クエストが更新された音が鳴って、目の前に知らせが表示された
メニュー画面を開くと、娘の手掛かりを得るために町で聞き込みをしようと書いてあった
マップに丁寧に印がしてある
桜桃は少し探偵気分になってきて、警備服から探偵っぽい服装へ着替える
と言っても有り合わせで、上は白のポロシャツ、下は茶色の短パンをサスペンダーで留めた
帽子は諦めて、髪型を息子が好きそうなツインテールにしてみた
特別な意味はない
ここで遅れて、おたふく侍が合流する
何も喋らないが桜桃は特に気にもしない
行くぞ、とだけ声を掛けて歩き出した
娘の名前は京という
お京は武芸に長けていたけれど歌も上手かった
ある時に殿様の息子、若様がいらして彼女が町を案内したことがある
その日から浜辺で一人よく歌っていた
さながら人魚のようだと噂だった
若様は四度は来られた
まるでお京に会いに来たようだった
二人は親睦を深めたようだったが、それをお京の家の者も、若様の家来達もよく思っていなかったようだ
最後の来訪では二人は会えず終い
それきり若様はもうずっと来ていない
お京は、まるでどこかで元気を落としたようだった
しかし、儚げな横顔は誰が見ても美しかった
気が付けば行方が分からなくなっていた
町の人達は若様に逢いに都へ移ったのだと噂している
頭に矢印の付いたNPCに話を聞いて歩いてこれらのことが分かった
桜桃は、お京が歌っていたという浜辺の岩に腰掛けて水平線に沈む夕日を眺める
推理したところ、お京は身分の差で恋叶わず、それでも諦めきれず都へ移り住んだとみえる
「めぐり逢ひて、、、見しやそれとも、、、」
ハッとする
人魚の歌を聞いた気がした
でも歌は歌でも和歌のようだ
それに人魚ではなく、おたふく
仮面の内の表情は読めない
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