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縁結び
14 ジェノスピータン
しおりを挟むぷちソニックブーム!
桜桃の叫びに応えて、ぴーたんがスキルを発動する
愛らしい羽ばたきからは想像できない冷酷な羽の斬撃がテントウムシを模したネコツキ、シチミテントウガラシを優しく成仏させた
ぴーたんの乗り方をマスターした桜桃は、お婆さんに教えてもらった家庭菜園で、野菜や果物のネコツキを倒し、ドロップしたフーズを与え、ぴーたんの育成にとことん励んでいた
トリピスタチオで速度を磨く
トリデコポンで加速度を増す
トリハバネロでパワーを上げる
トリキャベツでバランスを鍛える
トリニンジンでコントロールが良くなる
パワーは衝突に強くなる
バランスは飛行や走行が安定する
コントロールは操縦がより軽くなる
というシステム
お婆さんのニワトリは全てフルマックスに鍛えている
桜桃も真似しようとしたが、かなり時間のかかるらしいので今は諦めた
他のクエストと並行して、一週間で三分の一しか鍛えられていない
学校から帰ってすぐゲームに熱中する息子の気持ちが少し分かった
ひゃあ
よく育ってるじゃないの
お婆さん
そろそろ俺と勝負してくれや
んー
その前にボスと戦ってみようか
え?
このゲームをクリアしなきゃならないのでしょう
私とチキチキと、ぴーたんが手伝ってあげるわ
ということで急遽、レースの前に第二のミステリースポット攻略となった
それは二階の書斎になる
スライド式のドアが少しだけ開いていて、その隙間から入るのだが、中はカーテンが閉め切られていて暗い
本の山があちこちにあって、本棚には酒瓶がズラッと並んでいる
その一つは横倒れになって、船が一つ収められていた
デスクライトに照らされた、まるで墓場のように不気味な景色を机の上から一望する
ここは、死んだ物語の怨念達が彷徨う、とドールハウスの人々が怯え伝える忌み地だ
特に、卓上の怪しく光る謎の機械には決して近付いてはいけないと忠告する
悪魔が封印されているからだ
桜桃は図書館で学んだこと、町で集めた情報を頼りに、本の山に隠されたキーボードのキーをネコツキと戦いながら集めてここまでやって来た
キーの欠けたキーボード
電源の入ったままのコンピュータ
黒猫が歩くデスクトップ画面
そして
ちゅちゅちゅ
良くキーを集めてくれたね
あ!猫研究同好会のネズミ達!
六匹はいる
ネズミはどこからでも湧いてきやがる
田舎の家にもよく現れて、彼らの悪戯にほとほと困らされた
のは家族で、自分が餌をやっていたのは秘密
キーが一つ足りないんじゃないかな
何!
指折り数えて確認してみる
確かに一つ足りない
ネズミ達が腹を抱えて馬鹿にするように笑う
悔しくて拳を握る
ここだよーん
ああー!
これが欲しけりゃ我々と勝負だ
どっからでもかかってこい!
もし君が負けてしまったら、僕達がコンピュータの電源コードをかじって切っちゃうからね
何だって!
そうはさせん!
ネズミ達がからかうようにキーボードの上で踊ると、デスクトップからネコツキがポンポン飛び出してきた
セモンジンガサハムシを模したネコツキの兵隊、名は神兵バグーニャと表示されている
桜桃よりも背丈は小さく、二本足で立ち、縦縦横の目口と猫耳が愛らしい
鋭い爪のついた四本の手を広げて威嚇する
さらに大きなネコツキが一匹、その後からヌーと這い出てきた
名は邪神ネコウイルス
ジャングルジム級の巨体
ひっくり返った段ボール箱から猫耳が突き出している
下の隙間からは黄色い目が二つ光り
猫の尾のような触手が七本生えている
見た目がすんごく気持ち悪い
弱っちいのは私とチキチキに任せて、あなたは大きいのをやっつけなさい
お婆さんが勝手にバトルを始めてしまった
そのせいで、ワッとバグーニャが一斉に飛びかかってきた
桜桃は突然のことに慌てふためき、準備していたとは言え早速、ぴーたんに必殺技を命じてしまう
ぷち空想科学光線!!
敵は呆気なく全滅した
アヒル口から放たれた一薙ぎの破壊光線は容赦なくバグにウイルスを綺麗さっぱりデリートした
ええー
ひゃっひゃっ
クリティカルヒットだって
あなたたちってば凄いじゃないの
お婆さんが激しく背中を擦って褒めてくれる
ぴーたんの育成で桜桃自身のレベルが40を超えたこと、そして運を含む俊敏が高いことが活きてきた
らっきー
ひっひっひっ残念
私のパイランチャーの出番はなかったね
お婆さんは少し寂しそうに呟く
キー集めの際、お婆さんはご自慢のパイランチャーからクリームたっぷりのパイを発射して、ことごとくネコツキを撃ち倒してくれた
すっかり豹変して下品な笑い声を上げながらパイを撃ちまくる美少女の姿はネコツキなんぞよりよっぽど怖く見えた
チキチキの卵爆弾も出番なしだ
チキチキを撫でながら呟く
卵爆弾はニワトリの必殺技
他のプレイヤーに手渡すことも可能で、桜桃も投げさせて貰ったのだが、電子レンジで温めた直後みたいなリアリティのある卵の爆発、その迫力にビビって二度とは体験したくない
まーたネズミがいなくなってる
まったく逃げ足の速い奴らだ
あのネズミさん達、素直に協力してくれたらいいのにね
だって味方なんでしょう
や、それが正義の虎さんリンドウマンが言うには悪役が必要らしい
誰かが猫の尾を踏まなきゃならんのだと
その役を君達にさせるわけにはいかないとかなんとか
ババアには難しくて分かんないわ
はっはっはっ!
俺もだよ!
お婆さんはゲームクリアに興味はなく、レースにハマってずっとこの世界に留まっている
しかしレベルは60を超えていて実に頼りになった
さて、七つのキーをハメたら上からグッと押し込む
入力する文字はデスクトップに貼ってあるメモに書いてある
CAT DOWN
最後にエンターキーをお婆さんがジャンプして踏み込むと、デスクトップ画面を歩いていた黒猫が体を丸めて眠りについた
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