22 / 96
旅立ち
21 珊瑚将グレイトバリアル
しおりを挟む海賊船で強いられる戦いの相手は珊瑚将グレイトバリアル
バスケ選手級の身長を誇る、人の形をした巨大なサンゴだ
頭に海賊船の舵を帽子のように被っている
全身は虹色に艶めき、赤い単眼が右寄りにある
右手は鉄砲、左手は鉤爪になっており、さっきの海老なんかよりもよっぽど海賊らしい
一見手強そうだが、レベルが20もあれば簡単に倒せる
攻撃力は並で防御力が高い
背中に貼り付いて操作している大ダコが弱点なのでそこを狙うのが正攻法となる
が、息子はあえて教えない
いつものように、ほどほどに援護射撃をして親父を助ける
親父こと桜桃はというと、案の定、正面からガチンコ挑んで苦戦している
誠清!ヤバい!引っ掻かれた!
桜桃が悲鳴を上げて慌てる
子供が可哀想なので、あの鉤爪で本当に引っ掻かれることなんてない
直接は当たらず、エフェクトでダメージを負う
桜桃は、ひいひい言いながら敵から離れた
怪我してないよな?
今さらかよ
おし、大丈夫だ
お前も気を付けろ
後ろ!
え!
桜桃は背中から撃たれてしまった
うえっ!
親父!
や、大丈夫だ
お前も気を付けろ
言われなくても
走れるな?
グレイトバリアルが重い音を響かせてノシノシ迫ってくる
二人は素早く離れて、敵の攻撃は空を切った
グレイトバリアルはプレイヤーとの距離で行動が変わる
二人が離れたことで攻撃パターンが銃撃中心に変わった
桜桃が弁当の盾を構えて、息子はその後ろに隠れた
バレーボール級の大きさの青いエネルギー弾が炸裂する
桜桃はビビって小さく身をすくめた
どうすりゃいい
俺が注意を引くから親父は後ろに回り込んで
よし、任せるぞ
息子は然りげ無くヒントを出した
合図をして、二人は二手に別れる
息子は攻撃を敵の右手に集中した
こうして遠距離攻撃をし辛くする
桜桃は俊敏に敵の背後へ移動した
ええー!
桜桃の絶叫が波の音に勝る
おーい!
背中にタコがいたー!
もしかして敵だと気付いていないのか
アクシデントだとでも思っているのか
そこが弱点だよ、とは教えてあげない
意地悪するわけではない
自分で発見して攻略する楽しみを感じてほしい
あーあー引っ張ったって取れやしないぜ
違和感に気付いた敵が振り向こうとすると、その動きに合わせて桜桃も回る
そうして二人は仲良くグルグルグルグル、、、
やれやれ
何やってんだか
息子が呆れていると、ようやく二人は回るのをやめた
しかし今度は追いかけっこが始まった
幸いにも俊敏が高い桜桃はすばしっこい
やがて敵の動きに慣れたのか反撃に打って出た
武器を再び桃剣ヒナマツリに切り替えて斬りかかる
偶然か、ヒットアンドアウェイ、攻撃しては離れてを繰り返す
スキルも必殺技も惜しみなく放っていく
鈍い斬撃音が轟く
側から見ていると刃こぼれして、とうとう折れてしまいそうだ
それでも桜桃は頑張って頑張って攻めることを止めない
やがて親父の情熱に火照る息子
もう弱点など気にせず、親父が距離を取ったタイミングで的確に援護射撃を放った
体力を半分削ったところでグレイトバリアルの様子が一変
にわかに体を丸くして、その体は淡く発光、エネルギーが上昇して上空にオーロラが広がる
ヤバいのがくるぞ!
親父は息子の注意を聞いて咄嗟の判断で退避した
中ボスの問答無用の特殊攻撃が放たれる
床に現れた赤い円形のマークに向かって落雷が次々と起こる
ダメか、と息子は一瞬諦めてしまったが、親父はその予想を裏切って見事に全て回避した
危険マークの意味を知り、そのうえ避け切る
高い俊敏が活きた
それが親父に合っていると気付いた
「親父!勝つぞ!!」
息子が指揮を執る
二人の奏でる攻防一体のセッションはビバーチェ
アニマートな攻撃はクレッシェンド超えてフォルテッシモ
桜桃の動きはアパッシオナート
息子の援護はテンポルバート
バーストチャンスを決して逃さず、敵がバーストアタックを放つことを許さず、二人は遂に圧倒して撃破した
桜桃は剣を高く掲げて勝利の雄叫びを上げた
ほら、運転しなよ
息子は舵を拾って手渡した
上目遣いの桜桃の瞳が心なしか輝いて見える
お父さん、船の免許取って家族を乗せて海を走りたいと思ったことがあるんだ
でも難しいし船は高いからな
やめた
今日は、ゲームの中だけどその夢が叶うよ
うん!ようし出発進行だ!!
こういう時、海賊は何て言ってたっけか
ヨーソロー
ようこそー!
ちげーよ!バカ親父!
挨拶はおかしいだろっ!
はっはっはっ!
冗談に決まってんだろう
それよりもバカ親父だと
いや、それは、、、
まったくお前という奴は困った不良息子だ
な、将来は海賊にでもなるか
うっせー
はっはっはっ!
ヨーソロー!
得手に帆を揚げる
船長はとても陽気だった
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる