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母娘ショッピング
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3日間、寝込んだ後はすっかり元気になった領主長女クレア。
しばらく公務を休みとされ、今日は母と妹と一緒。服飾デザイナー宅にサイズ調整に訪れていた。
それまでのわだかまりが嘘のように娘にべったりの母リンダ。雨降って地が固まったようだ。
「お…、お母様、これ…。下着なのでしょうか…?」
「ヒモ?にしか見えない…わね…」
前衛デザイナー、ラメンダ夫人の提示した新作下着。上下ともに、ほぼヒモ。布地の部分が極端に少ない。
これで下着の用を成すのか否や。未知の物体に目をぱちくりさせる母と娘。
「かっこいい!ヒモだ!リディア、これ着けたいですっ!」
好奇心旺盛な12歳の次女。物珍しさに盛り上がっている。
「リディアちゃん~。これの良さが分かるなんて素晴らしいわ~。でも、ごめんね~。これ勝負下着なの~。リディアちゃんには早いかも~」
試作品の数々をハンガーにかけながら説明するラメンダ夫人。
「えー!夫人!勝負下着ってなんですか!私じゃ、ダメなの?」
「大人の女性は愛する男性と勝負するときがくるのよ~。そのときにつけるのが勝負下着なの~」
「戦うの!?好きな男の人と戦うなんて、リディア、知らなかったです!」
「そう!だから、これはママのために作ったものなのよ!さあ、リンダ奥様、これで旦那様と勝負を!」
焚きつけてくる夫人に、もじもじするリンダ。
「あっ…、あの…娘たちの前ですから…」
しかし、合点がいったとばかり、ラメンダ夫人に加勢する長女クレア。
「お母様!お父様との勝負がんばってください!」
「ええ…っ?…ちょっとこれは……。勝負って、13年ぶり?なのに」
思わずご無沙汰期間を暴露してしまうリンダ。衝撃を受けたのはラメンダ夫人。
「な!な…、なんてこと!13年も放っておかれたの?こ、こんなに魅力的な奥様を!許せない!旦那様の頭カチ割ってやらな!」
それまでの陽気な態度から一変、ギリギリと歯噛みを始めた。額に血管を浮かび上がらせ、目を血走らせる夫人。
リンダのみならず、クレアとリディアも恐れおののいている。
「ああっ!やめてください!次女を産んだ後から私も夫も忙しくって!私の体調も気分も悪くなってしまって!夫は悪くないんです!」
リンダの必死の擁護に、ため息をつく夫人。
「もう…!耐える女は報われないわよ…。気持ちの主張も大事なんだから!」
「は…はい…。でも、最近の夫は私や娘の気持ちに気づいてくれるようになって…」
「…ふむ。ならば頭カチ割るのは許すか…。でも、奥様も13年も耐えるのはダメですからねっ!クレアちゃんもリディアちゃんも気持ちを伝えられる女になること!」
なぜか領主一家に上から目線で熱弁を振るうデザイナー夫人。
「気持ち、伝える…」
「夫人、目が怖いよぉ…」
こくこくうなずくリンダと、納得するクレア。ただ怖がるリディア。
当の夫人は一人でブツブツ言っていたと思ったら、何かを決断した様子。
「よし、路線変更。ヒモ下着は今回はナシね!これはマンネリ打破目的のものだから。ご無沙汰明けは乙女路線の白か薄いピンクでいきましょう!」
別の新作をリンダに手渡す夫人。
「わあっ!可愛い!」
「お母さま、これならリディアも着けていいですよね!」
ふんわり可愛らしい下着にテンションの上がる娘たち。
ところが、下着を手に持ったまま固まっているリンダ。
「お、お母さま?どうしたの?」
「あら?奥様、何か商品不具合ありました?」
娘とデザイナーが怪訝な顔で近寄ってくる。
「こ、これ、ここ穴あいてます…」
言いにくそうに、下着のある部分を指差すリンダ。
「あっ!これ仕様です。大丈夫ですよ~。この穴あると着けたままできるんです~」
よくぞ気づいてくれましたとばかりにニコニコ顔のラメンダ夫人。
「あっ、ほんとだー!おトイレのとき便利そう!」
「あ~!リディアちゃん、惜しいっ!この穴はね~」
「わーっ!わーっ!やめてくださいっ!リディアに変なこと教えないでっ!」
「え~。変なことじゃないのに~」
マイペースなデザイナーに振り回され続ける二人の娘の母なのであった。
しばらく公務を休みとされ、今日は母と妹と一緒。服飾デザイナー宅にサイズ調整に訪れていた。
それまでのわだかまりが嘘のように娘にべったりの母リンダ。雨降って地が固まったようだ。
「お…、お母様、これ…。下着なのでしょうか…?」
「ヒモ?にしか見えない…わね…」
前衛デザイナー、ラメンダ夫人の提示した新作下着。上下ともに、ほぼヒモ。布地の部分が極端に少ない。
これで下着の用を成すのか否や。未知の物体に目をぱちくりさせる母と娘。
「かっこいい!ヒモだ!リディア、これ着けたいですっ!」
好奇心旺盛な12歳の次女。物珍しさに盛り上がっている。
「リディアちゃん~。これの良さが分かるなんて素晴らしいわ~。でも、ごめんね~。これ勝負下着なの~。リディアちゃんには早いかも~」
試作品の数々をハンガーにかけながら説明するラメンダ夫人。
「えー!夫人!勝負下着ってなんですか!私じゃ、ダメなの?」
「大人の女性は愛する男性と勝負するときがくるのよ~。そのときにつけるのが勝負下着なの~」
「戦うの!?好きな男の人と戦うなんて、リディア、知らなかったです!」
「そう!だから、これはママのために作ったものなのよ!さあ、リンダ奥様、これで旦那様と勝負を!」
焚きつけてくる夫人に、もじもじするリンダ。
「あっ…、あの…娘たちの前ですから…」
しかし、合点がいったとばかり、ラメンダ夫人に加勢する長女クレア。
「お母様!お父様との勝負がんばってください!」
「ええ…っ?…ちょっとこれは……。勝負って、13年ぶり?なのに」
思わずご無沙汰期間を暴露してしまうリンダ。衝撃を受けたのはラメンダ夫人。
「な!な…、なんてこと!13年も放っておかれたの?こ、こんなに魅力的な奥様を!許せない!旦那様の頭カチ割ってやらな!」
それまでの陽気な態度から一変、ギリギリと歯噛みを始めた。額に血管を浮かび上がらせ、目を血走らせる夫人。
リンダのみならず、クレアとリディアも恐れおののいている。
「ああっ!やめてください!次女を産んだ後から私も夫も忙しくって!私の体調も気分も悪くなってしまって!夫は悪くないんです!」
リンダの必死の擁護に、ため息をつく夫人。
「もう…!耐える女は報われないわよ…。気持ちの主張も大事なんだから!」
「は…はい…。でも、最近の夫は私や娘の気持ちに気づいてくれるようになって…」
「…ふむ。ならば頭カチ割るのは許すか…。でも、奥様も13年も耐えるのはダメですからねっ!クレアちゃんもリディアちゃんも気持ちを伝えられる女になること!」
なぜか領主一家に上から目線で熱弁を振るうデザイナー夫人。
「気持ち、伝える…」
「夫人、目が怖いよぉ…」
こくこくうなずくリンダと、納得するクレア。ただ怖がるリディア。
当の夫人は一人でブツブツ言っていたと思ったら、何かを決断した様子。
「よし、路線変更。ヒモ下着は今回はナシね!これはマンネリ打破目的のものだから。ご無沙汰明けは乙女路線の白か薄いピンクでいきましょう!」
別の新作をリンダに手渡す夫人。
「わあっ!可愛い!」
「お母さま、これならリディアも着けていいですよね!」
ふんわり可愛らしい下着にテンションの上がる娘たち。
ところが、下着を手に持ったまま固まっているリンダ。
「お、お母さま?どうしたの?」
「あら?奥様、何か商品不具合ありました?」
娘とデザイナーが怪訝な顔で近寄ってくる。
「こ、これ、ここ穴あいてます…」
言いにくそうに、下着のある部分を指差すリンダ。
「あっ!これ仕様です。大丈夫ですよ~。この穴あると着けたままできるんです~」
よくぞ気づいてくれましたとばかりにニコニコ顔のラメンダ夫人。
「あっ、ほんとだー!おトイレのとき便利そう!」
「あ~!リディアちゃん、惜しいっ!この穴はね~」
「わーっ!わーっ!やめてくださいっ!リディアに変なこと教えないでっ!」
「え~。変なことじゃないのに~」
マイペースなデザイナーに振り回され続ける二人の娘の母なのであった。
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