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第32話【快勝】

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 回復役を倒している間に他のメンバーにも目をやる。
 まずはセシルとローザ。

 バランス型のセシルは、従来通りの【神薬】を基準に使った強化を行っている。
 全体が底上げされたセシルの攻撃は素早く重い。
 防御面も、受け避けどちらも卓越している。

 一方でローザはタンクとしての性能を強化するため、【魔薬】で強化を行う。
 元々低い敏捷を犠牲にして、防御面を増強。
 セシルと合わせて、三人を相手取っている。

 その向こうで戦っているのはアンナとギルバートだ。
 こちらもなかなか上手くいっているみたいだ。

 防御を無視したアンナの増強は、さすがに攻撃特化には出来なかった。
 本人は不満を言うけれど、いくら火力が高くても死んでしまっては元も子もないのだから仕方がない。

 一方、ギルバートは防御面を少し削って、攻撃を大幅に強化している。
 敏捷が高くヒットアンドアウェイの戦法を取るギルバートは、突進型のアンナと上手く相手二人を翻弄しながら倒していた。

「くっそー。わたしももっと火力が欲しいよ! サラちゃん!!」
「アンナさんはこれ以上火力なんか要らないでしょ。十分、十分」

 相手を倒して叫ぶアンナに、私は苦笑いをしながら答えた。

「すいません。戦闘だとそんなに役に立たなくて」
「十分、十分。【暗殺者】は色々いやらしいスキルを使うからね。それを取り除けるだけでもやりやすいよ」

 ウィルとカインが同じ【盗賊】系の相手と戦っていた。
 相手のスキルで作り出された設置型の罠や毒霧などを、ウィルが次々と解除していく。

 そして相手に迫ったカインが目にも止まらぬ速さで切り伏せていった。
 カインも全体を底上げする強化をしている。
 敏捷特化は攻撃力が犠牲になるため、バランスが難しいのだ。

「くるよぉ、みんな。回復は任せておいて!」

 相手の【大魔導】が放った広範囲攻撃魔法を受け、メンバーがダメージを受ける。
 すかさずレクターが広範囲回復魔法を唱え、受けたダメージを回復させた。



「これで、終わり!!」

 ソフィの矢が【大魔導】の胸に当たり、八人居た相手の全員が消えていった。
 こちらはと言うと、被害はゼロと言っていいほどの快勝だった。

「うん。この組み合わせいいね。お互いが足りない部分とかを補ってるって感じ」
「そうだな。また人数が増えたら考えるけど、しばらくはこれで行ってみよう」

 自分の拠点内に入り込んだ相手クランのメンバーはまだ居るようで、罠破壊かオブジェクト破壊か分からないけれど、ポイントが増えていくのが見える。
 私たちは探す時間がないという判断で、相手のコアの破壊を優先することを決めた。

 どうせ相手がコアの設置されていた部屋にたどり着いても、そこにコアは無いのだから。

「でもさぁ。もし相手もコアを移動してたらどうするの? これから向かって空振りだったら同じじゃない?」
「ううん。それはないと思う。だってポイントの増え方が少ないでしょう? もしコアを移動する戦法なら、自分の拠点に残る必要ないんだもん。みんな総出で攻めてくるはず。そして多分そうなってない」

「それにもし相手がコアを持ってったとしても、こっちはもう八人倒してるからね。罠やオブジェクトだけでそれを覆すのは無理って話さ。僕とウィルであっちの罠を解除して回るんだから」
「なるほどなぁ。なぁ、ギルバート。俺らこのクランに入ってほんとに良かったと思うよ」

 レクターがそう言ってくれるのは素直に嬉しい。
 私たちのクランが認められて人が増えていくのを見ると、楽しい気分になる。

 まだまだあと40人も枠はあるから、今度はどんな人たちが加入してくれるのか楽しみだ。

「やっぱり罠解除は【探検家】が速いなぁ」
「えへへ。でもそれが専門の職ですから」

 拠点同士の広場には誰も居なかったため、私たちは相手の拠点へと足を踏み入れた。
 そうなると先頭を進むのはカインとウィルだ。

 カインもかなり速く罠を解除していたと思っていたけれど、ウィルはさらに速い。
 私と同じく、戦闘メインの職ではなく、補助的な役割を持つ職業の補整もあるのだろう。

 どんどん進んでいくと、やがてコアの設置された広間に辿り着いた。
 ここまで数人からの襲撃に遭ったけれど、ことごとく無傷で倒している。

「くそっ! こいつら強ぇぞ! みんな、コアだけは守り抜け! 向かったメンバーの一つがもうすぐ相手のコアに辿り着くって言ってる!!」
「おぅ!!」

 コアの広間に居たのはこちらと同じ10人。
 倒した数を足してもまだ30人にしか及ばない。

 カインから聞いた話だと、50人居るクランでも全員が戦闘職で、かつレベルが十分に高いところはそう多くないらしい。
 なので実際は50対50の戦闘はS級くらいにならないと珍しいのだとか。

 逆にランクに低い同士だと、レベルが低くても参加することに意味を持ったりするので、たまに見かけるのだとか。
 そういえば私が50人を相手にしたのは一度だけだった気がする。

 戦闘が始まり、私は先ほどと同じく要となりそうな職業を見つけて指示を出す。
 それが功を奏して、広間に居るメンバーも一人を除き全員倒した。

「ごめんね。少し眠ってて」

 私はいつも通り最後の一人となった相手のプレイヤーに薬を投げつけ眠らせる。
 その間に他のメンバーはコアを攻撃していた。

 よく見るとレクターまで持っているロッドで殴りつけていた。
 なんだか楽しそうだ。

「よし! 私も!!」

 そう言って私もコアに駆け寄り、手にしているスリングでコアを叩いた。
 途端にコア中にヒビが入り、コアが粉々に砕け散っていく。

「あ!? あはは。今回は私だね!」

 コアを破壊したことで、攻城戦勝利の合図が発せられる。
 こうして新しいメンバーが大勢加入した後、初めての攻城戦は快勝で幕を閉じた。
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