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第14話【ドワーフの重戦士】
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いつものように学校から帰るとすぐに軽い食事を済ませ、私はヘッドギアを装着した。
そういえば今日は朝にインしていて、遅刻ギリギリまでやっていたからコンタクトのまま登校になってしまった。
何故かあまり親しくないクラスメイトや、知らない人までもがこっちをジロジロ見ていて、少し嫌な気分になった。
そんなに私の素顔が面白いのかな。
だから黒縁の大きな眼鏡をかけるようにしてるのに。
今度はギリギリまで遊ぶことはしないようにしないと。
そんなことを思いながら、私はゲーム機の電源を入れる。
一瞬意識が遠くなるような気持ちに襲われ、再び意識がはっきりした時にはいつものようにサラになっていた。
「サラさん! こんばんは!」
「これはサラさん。お待ちしてました。ご報告がありますよ」
朝は私とセシルが立ち上げたクラン【龍の宿り木】の専用スペースでログアウトしたため、ログインした時には同じ場所に居た。
目の間にはクランマスターであるセシルと、初めてのメンバーであるハドラー、そして……知らない人がもう一人。
「初めまして! わたしゃアンナって言うんだよ。二人にはあんたの事はすでに聞いたよ。よろしくね!」
「は、はぁ……よろしくお願いします。えーっと、ここにいるってことは新しいメンバー?」
アンナの見た目は明らかに近接職の戦士だ。
片刃の幅広で大きな両手持ちの戦斧と、動きが制限されてしまいそうな重厚な鎧を身に付けた女性のドワーフだった。
ドワーフというのはノームのように背丈が小さいが、ガッチリした体格が特徴だ。
男性も女性も髪を、男性は髭も長く伸ばし結んで束ねる。
ドワーフアバターは信仰と力、そして体力が高く、器用さもそこそこ。
生産職では鍛冶師が、戦闘職ではアンナのように戦士や他に回復職も人気だ。
「ここに入ると回復ポーションが格安で手に入るんだって!? しかも店じゃ売ってないような大きいやつ!」
「え? ええ。それは……誰から聞いたんです?」
「誰ってセシルからさ! 恥ずかしい話だけど、わたしゃ殴るのは得意なんだけど、防御がてんでダメでね? いっつもありったけのポーションを持って戦いに出るんだけど、結構高いし、露店で探すのもめんどくさいしね。困ってたんだよ!!」
「えーっと、ごめんね? セシル、説明して?」
「ごめん、サラさん。ちょっと誤解が……」
セシルの話によると、私が来るまでレベル上げをしようとハドラーと二人で狩りに出かけたらしい。
そこに先客としていたのがアンナだったとか。
アンナは敵の攻撃を一切気にせず、とにかく攻撃だけを優先して行うような戦士で、回復にポーションをがぶ飲みしていた。
ちょうど切れてしまったらしく、来たばかりのセシルに少し分けてくれないかと言ってきたのが発端らしい。
「それでね。【回復薬特大】をいくつかあげたんだけどね。その時にサラさんから買った金額で売っちゃったんだ」
「ああ……なるほどね」
【回復薬特大】は生産職しか作れないアイテムで、値段もそれなり。
だけど私が作る場合は、素材費だけだと市場の半額以下で作ることが出来る。
確かに言ってることは間違いじゃない。
間違いじゃないけど……。
「ねぇ。そうだとしたら、私に先に相談してくれた方が良かったんじゃない?」
「ごめんねサラさん。でもアンナはすごく強かったよ。それに初めての加入希望メンバーだったから、嬉しくてつい」
「初めて?」
「あ、いや。しばらくぶりのだね。言い間違い」
確かにハドラーはすぐにうちとけてくれて、今では最初から居るみたいな自然さがある。
間違うのも無理はない。
「うーん。一応説明しておくけど、作るのは私。それと金額は素材代だけでいいけれど、転売は止めてね?」
「もちろんさ! そんな不義理なことするやつがいたら、わたしが頭かち割ってやるよ!」
どうやら見た目の通り、アンナは豪快な性格をしているようだ。
声からみるに私より一回りほど年上の女性のように感じる。
「それで早速なんだけど、回復薬を売ってくれるだけ買いたいんだ。できるだけでかいのが良い」
「え? ああ。えーと、ちょっと待ってね? 作るから」
そういうと私はインベントリを開き、【回復薬極大】を作り始めた。
今作れる最大回復量のものだけれど、レベルがカンストしているドワーフの戦士にならこれがいい。
「とりあえず50個くらいでいいかな? ドワーフって力持ちだからもっと持てるかな?」
「極大を50個!? この短時間で!? 嘘でしょ? 一体いくらで?」
「うーんっと、全部でキリよく10万ギラでいいよ。ちょっと余ってたのもあるし」
「10万ギラ!?」
アンナが持っていた戦斧を落とし、あんぐりと大きく口を開けた。
ちょっと安くしすぎたかな。相場の五分の一くらいだから。
でも実は高級な薬の方が利率がいい。買う方も金があるから高く売れる。
だからこれだけ安くしても、本当に原価だ。
「あっはっはっは!! こりゃたまげたね! ありがたく全部買うよ! わたしゃこれからこのクランに忠誠を誓おう! どんな敵だってわたしが倒してやるよ!!」
「あ、あはは……それはどうも」
アンナの迫力の負けて私はたじたじになってしまった。
どうやら回復薬を作って売っただけで絶大な信頼を受けたらしい。
「じゃあ、せっかくだから、これから交流会も兼ねて団体戦しにいこうか? 四人いるからローテーションで」
「いいね! わたしの凄さをサラに見せてやるよ!!」
やる気満々のアンナが、本当に私に心酔するのはこの団体戦の直後の事だった。
そういえば今日は朝にインしていて、遅刻ギリギリまでやっていたからコンタクトのまま登校になってしまった。
何故かあまり親しくないクラスメイトや、知らない人までもがこっちをジロジロ見ていて、少し嫌な気分になった。
そんなに私の素顔が面白いのかな。
だから黒縁の大きな眼鏡をかけるようにしてるのに。
今度はギリギリまで遊ぶことはしないようにしないと。
そんなことを思いながら、私はゲーム機の電源を入れる。
一瞬意識が遠くなるような気持ちに襲われ、再び意識がはっきりした時にはいつものようにサラになっていた。
「サラさん! こんばんは!」
「これはサラさん。お待ちしてました。ご報告がありますよ」
朝は私とセシルが立ち上げたクラン【龍の宿り木】の専用スペースでログアウトしたため、ログインした時には同じ場所に居た。
目の間にはクランマスターであるセシルと、初めてのメンバーであるハドラー、そして……知らない人がもう一人。
「初めまして! わたしゃアンナって言うんだよ。二人にはあんたの事はすでに聞いたよ。よろしくね!」
「は、はぁ……よろしくお願いします。えーっと、ここにいるってことは新しいメンバー?」
アンナの見た目は明らかに近接職の戦士だ。
片刃の幅広で大きな両手持ちの戦斧と、動きが制限されてしまいそうな重厚な鎧を身に付けた女性のドワーフだった。
ドワーフというのはノームのように背丈が小さいが、ガッチリした体格が特徴だ。
男性も女性も髪を、男性は髭も長く伸ばし結んで束ねる。
ドワーフアバターは信仰と力、そして体力が高く、器用さもそこそこ。
生産職では鍛冶師が、戦闘職ではアンナのように戦士や他に回復職も人気だ。
「ここに入ると回復ポーションが格安で手に入るんだって!? しかも店じゃ売ってないような大きいやつ!」
「え? ええ。それは……誰から聞いたんです?」
「誰ってセシルからさ! 恥ずかしい話だけど、わたしゃ殴るのは得意なんだけど、防御がてんでダメでね? いっつもありったけのポーションを持って戦いに出るんだけど、結構高いし、露店で探すのもめんどくさいしね。困ってたんだよ!!」
「えーっと、ごめんね? セシル、説明して?」
「ごめん、サラさん。ちょっと誤解が……」
セシルの話によると、私が来るまでレベル上げをしようとハドラーと二人で狩りに出かけたらしい。
そこに先客としていたのがアンナだったとか。
アンナは敵の攻撃を一切気にせず、とにかく攻撃だけを優先して行うような戦士で、回復にポーションをがぶ飲みしていた。
ちょうど切れてしまったらしく、来たばかりのセシルに少し分けてくれないかと言ってきたのが発端らしい。
「それでね。【回復薬特大】をいくつかあげたんだけどね。その時にサラさんから買った金額で売っちゃったんだ」
「ああ……なるほどね」
【回復薬特大】は生産職しか作れないアイテムで、値段もそれなり。
だけど私が作る場合は、素材費だけだと市場の半額以下で作ることが出来る。
確かに言ってることは間違いじゃない。
間違いじゃないけど……。
「ねぇ。そうだとしたら、私に先に相談してくれた方が良かったんじゃない?」
「ごめんねサラさん。でもアンナはすごく強かったよ。それに初めての加入希望メンバーだったから、嬉しくてつい」
「初めて?」
「あ、いや。しばらくぶりのだね。言い間違い」
確かにハドラーはすぐにうちとけてくれて、今では最初から居るみたいな自然さがある。
間違うのも無理はない。
「うーん。一応説明しておくけど、作るのは私。それと金額は素材代だけでいいけれど、転売は止めてね?」
「もちろんさ! そんな不義理なことするやつがいたら、わたしが頭かち割ってやるよ!」
どうやら見た目の通り、アンナは豪快な性格をしているようだ。
声からみるに私より一回りほど年上の女性のように感じる。
「それで早速なんだけど、回復薬を売ってくれるだけ買いたいんだ。できるだけでかいのが良い」
「え? ああ。えーと、ちょっと待ってね? 作るから」
そういうと私はインベントリを開き、【回復薬極大】を作り始めた。
今作れる最大回復量のものだけれど、レベルがカンストしているドワーフの戦士にならこれがいい。
「とりあえず50個くらいでいいかな? ドワーフって力持ちだからもっと持てるかな?」
「極大を50個!? この短時間で!? 嘘でしょ? 一体いくらで?」
「うーんっと、全部でキリよく10万ギラでいいよ。ちょっと余ってたのもあるし」
「10万ギラ!?」
アンナが持っていた戦斧を落とし、あんぐりと大きく口を開けた。
ちょっと安くしすぎたかな。相場の五分の一くらいだから。
でも実は高級な薬の方が利率がいい。買う方も金があるから高く売れる。
だからこれだけ安くしても、本当に原価だ。
「あっはっはっは!! こりゃたまげたね! ありがたく全部買うよ! わたしゃこれからこのクランに忠誠を誓おう! どんな敵だってわたしが倒してやるよ!!」
「あ、あはは……それはどうも」
アンナの迫力の負けて私はたじたじになってしまった。
どうやら回復薬を作って売っただけで絶大な信頼を受けたらしい。
「じゃあ、せっかくだから、これから交流会も兼ねて団体戦しにいこうか? 四人いるからローテーションで」
「いいね! わたしの凄さをサラに見せてやるよ!!」
やる気満々のアンナが、本当に私に心酔するのはこの団体戦の直後の事だった。
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