補助魔法はお好きですか?〜研究成果を奪われ追放された天才が、ケモ耳少女とバフ無双

黄舞

文字の大きさ
上 下
12 / 52

第十二話

しおりを挟む
「聞いたところ、貴方達は最近冒険者登録をして、パーティを組んだばかりだとか。確かにここにあるのはランクの低い魔物の素材ばかりですが、それにしても駆け出しの冒険者が手に入れられるとは到底」
「俺らが何処からか盗んできたって言いたいのか?」

 ハンスは自分に嫌疑をかけられていることを理解し、憮然とした表情をリーザに返す。
 その返答とばかりに、リーザはかけている眼鏡をクイッと右手で上げると、首を横に振りながら答えた。

「いえ。それは無いでしょう。どれも鮮度がいい。恐らく討伐して採取したのは遅くても昨日。私は今日採取された物だと思っています」
「じゃあ、他の冒険者を襲って奪ったとでも?」
「それをするのは……これらを採取するより難しいと思います」
「ふむ。疑惑はもともと晴れてたって訳だ。だとしたらわざわざこんな所に読んだ理由はなんだ?」
「お二人がどうやってこの様な採取を成し遂げたか興味があったのです。特にロックビートルの甲殻の状態の良さは異常です。ほぼそのままの形で取り出されています。見たところ、お二人共力自慢では無さそうですが……どのように討伐を?」
「なるほどな。悪いが企業秘密だとだけ言っておこう。どうせ詳しく話しても理解されないのが落ちだろうからね。まぁ、もうすぐすれば、どっかの面の皮の厚い魔術師が発表してくれるだろう」

 セレナは二人の会話が理解出来ず、ただ、その場に流れる不穏な雰囲気に戸惑い、おろおろとハンスとリーザの顔を交互に見ていた。

「それで。結局、この素材は買い取ってくれるのか? くれないのか? ああ。ロックビートルはクエストの方だからな、買い取ってくれないとなると、クエスト失敗になるのかな?」
「もちろん全て買い取らせていただきます。状態は良好。ここのある素材の買取と、クエストの達成報酬を合わせて、これ程で。よろしければここにサインをしてください」

 リーザが提示した額は、通常の買取価格の二倍に相当する額だった。
 全て合わせて、銀貨5枚と銅貨4枚。およそ二人の一ヶ月分の生活費に相当した。

 ハンスはサインをすると、リーザから代金を受け取り、中身を確認した後、そこから銀貨1枚と銅貨2枚を選び取り、セレナに手渡した。
 突然の出来事にセレナの目線は、自分の手の中とハンスの顔を行きつ戻りつしている。

「ハンス様……あの、これ……」
「セレナの取り分だ。悪いが、今回はセレナの武具なんかの先行投資に使った分は差し引かせてくれ。今後はきちんと等分するから」

 セレナは驚き、慌てて手の中のものをハンスに差し出すと、受け取れないという態度を示した。
 ハンスは困った顔をして、セレナの手を押し戻すとはっきりとした口調で言った。

「言っただろう。君は仲間だと。二人で稼いだ金なんだ。等分が当たり前だろう。それとも何かい? また俺の指示に逆らうってつもりなのか?」
「いえ! そんなことは全然! あ! でもやっぱり困ります! 私、今まで、お金なんか持った経験なくて! 何に使えば良いか分からないし、無くしちゃうかも!」

 セレナは慌てて大声を出しながら、まくし立てるように話す。
 それを見たハンスは声に出して笑いながら、分かったとばかりにセレナの手の中の硬貨を拾い上げる。

「はっはっは。分かったよ。じゃあ、こうしよう。二人で稼いだ金は等分にする。いいね? そして、セレナの分も金の管理は俺がしよう。セレナが欲しい物があったら都度、俺に金額を言えばいい。自分の金だ。好きに使っていいんだぞ」
「でもそれでは、あまりにも……ハンス様は多額の借金がおありだって仰ってましたし……」
「あまりにも、なんだい? いいんだ。借金は俺の問題。セレナには関係ない。それにこれは命令だ」
「分かりました。あの……ありがとうございます」

 二人のやり取りを見ていたリーザは、思わず声に出して笑った。
 ハンスはリーザの存在を思い出し、恥ずかしそうに硬貨を全て懐にしまった。

「すいません。別に覗くつもりも無かったのですが、目の前で行われた以上、見ない、というのもなかなか難しく」
「いや。いい。気にしないでくれ。それで、要件は終わりだな?」
「ええ。所で、ハンスさんはお金を稼ぐ必要があるんですか? それなら、ぜひお勧めしたい素材があるのですが」

 どうやらリーザからハンスたちへの値踏みは済んだようだ。
 一見、入ってきた時と同じ真面目な顔付きだが、薄い唇の端はわずかに上がっている。

「今回と同じ状態で採取出来るなら、相当高値で買い取らせていただけるかなと。ただ、まだ受領可能ランクに達していないので、そこに到達いただいてからにはなりますが」
「お勧めの素材? こんな初心者に珍しい相談だな? 対象はなんだ?」
「ロックビートルの上位種。ジュエルビートルの甲殻です。ジュエルビートル自体はロックビートルと同じでほぼ無害なのですが、生息する地域が問題でして。ドナ山脈はご存知ですか?」

 リーザは再び眼鏡をクイッと右手で上げると、挑発するような目線でハンスを見た。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...