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第十一話 おかわり
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シルバーウルフとかいう魔物も無事に倒したし、魔鉱石とかいうのは、明日以降に改めて調べてもらったらいいよね。
採掘するにしたって道具や人の準備もかかるだろうし。
きっとパメラに頼めばいい具合に進めてくれるに違いない。
「大丈夫? 歩ける?」
二人を見たら随分とヘトヘトみたいだ。
出口に向かってゆっくりとみんなで歩いていく。
そういえば二人に廃坑の調査を依頼したのは昨日だったね。
まさか徹夜で廃坑の中を歩いていたりしてたのかな。
飲み水の準備もしていなかったみたいだし、意外とあわてんぼうみたいだ。
「あ……アーク様。先ほどバンプとの会話で、シルバーウルフは別だと仰っていましたが……もしかして今回の調査対象は魔物ではなく、魔鉱石の鉱床を初めから……?」
「ん? あ、ああ……そうだね。そうだったかもしれないね」
結局調査対象なんて分かってないけど、書いた本人であるマリーがいうなら間違いないんだろうな。
ここに辿り着いたのは、正直偶然というか、いつも通り適当に歩いてきただけだけど、目的がちゃんと見つかったんなら良かったよね。
「ひとまず! 帰るのは賛成だが……魔鉱石ってのはなんなんだ? 綺麗っちゃ綺麗だが、そんなに価値があるものなのか?」
「魔鉱石は魔素を含む珍しい鉱石なのよ。様々な素材になるわ。具体的にいえば……強力な武具が作れるわ」
「本当か!? そいつは願ってもないことじゃないかっ!」
突然元気になり出したバンプ。
君、左腕からずっと血を滴らせているのに凄いね。
まぁ、エリザなんか全身血だけになっても笑いながら剣を振るってた時があったから、左腕の怪我くらいじゃ驚かないけど。
「可能だとは……思うわ。鉱床ってのは見つけた者にもなんらかの権利が与えられるのが基本ですもの。領主立会の元なんだから、不平を言う者もいないでしょう。ただ、そんなことより大きな問題が……」
「問題が……? おい! 嘘だろ……ここでおかわりはねぇよ……」
二人が見つめる方に目を向ける。
なんと、さっきのシルバーウルフと同じような見た目の魔物が、出口の外にいち……に……さん。
三匹並んで立っている。
しかも、その後ろにより立派な体格をした毛並みの色も少し違うのもいる。
シルバーウルフの毛並みは文字通り銀色なんだけど、残りの一匹の色は、銀色なんだけど表面に妙な艶があって、角度によって七色に輝いて見えた。
なんだっけなぁ……銀に似た金属で同じ見た目の金属があった気がするんだけど……。
「ま、さか……ミスリルウルフ……? ありえないわ! どうやったって勝てないわ! 無理よ! 無理、無理!!」
「おい、落ち着け! 逃げるぞ!! ミスリルウルフがいなくたって、群れたシルバーウルフに勝ち目なんて元々ない!」
マリーとバンプは半狂乱だ。
どうやらかなりやばいやつが現れたみたいだ。
これはもうマリーが言うように無理なのかな。
食べられて死ぬのかなぁ。
どうせ死ぬなら痛くないようにしてほしいなぁ。
潔く諦めよう。
まぁ、僕が死んだとしても、領主は改めてエリザかランディもどちらかが就けばなんの問題もないしね。
あれ? そういえばエリザといえば、何か重大な約束を忘れている気がするな。
なんだったけなぁ。
あぁ、そうだ。
領主になったお祝いを用意するから、必ず屋敷で待ってろって言ってたんだ。
まずいなぁ。
すっかり忘れて散歩に出掛けてしまったよ。
「おい! お前は逃げねぇのか! 奴らが入ってきたらお終いだぞ! 出口なんてまた見つければいい!!」
「もう無理なのよぉ……魔鉱石には魔物を引き寄せる効果があるんだから……逃げたって別の道から魔物がここ目指してやってくるわ。どうやったって魔物と遭遇するわ。私もあなたももう戦う気力も体力もほとんど残ってないでしょう?」
「そう言ったってマリー! だったら何もせずにこのままやられるのをただ待つっていうのかよ! 俺は認めないぞ! 何もしないで死ぬくらいなら、戦って死ぬ!」
「まぁ、待ってよ」
思わず口から言葉が出ていた。
出した自分もびっくりしているくらいだ。
でも……うん。
ここはきちんとケジメをつけないとね。
たった二日だったとしても自分が今領主であることは変わりないんだから。
あぁ……胃が痛い。
「僕が……僕が囮になるよ。向こうはまだ気付いてなさそうだし。幸い出口の外にいる。僕が襲われている間に二人は、逃げたらいい」
「はぁ!? お前っ! 何を言ってるのか分かってるのか!? 食い殺されるってことだぞ!?」
「まぁ、元はといえば僕が二人をこの廃坑の調査に任命したわけだし。それに、僕は一応領主だからね。領民や臣下を守るのが領主の仕事だ」
だから領主になんかなりたくなかったんだ。
☆☆☆
マリーとバンプは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、すぐに顔を真っ赤にした。
自分のこれまでの考えと言動を恥じたのだ。
しかし動けなかった。
バンプは傷を負いながらもシルバーウルフとの立ち回りを続けたせいで、体力の限界だった。
マリーは魔力回復ポーションの数度の服用で気力が尽き果てていた。
そして何より、アークが本気でただ食い殺されるとは思えなかった。
今まで隠していただけで、アークもまたエリザやランディと同じように、この場を打開できるだけの能力を持っているに違いない。
そう信じずにはいられなかった。
しかし、現実は残酷で、アークには一切そのような力がないことは、揺るぎない事実だった。
採掘するにしたって道具や人の準備もかかるだろうし。
きっとパメラに頼めばいい具合に進めてくれるに違いない。
「大丈夫? 歩ける?」
二人を見たら随分とヘトヘトみたいだ。
出口に向かってゆっくりとみんなで歩いていく。
そういえば二人に廃坑の調査を依頼したのは昨日だったね。
まさか徹夜で廃坑の中を歩いていたりしてたのかな。
飲み水の準備もしていなかったみたいだし、意外とあわてんぼうみたいだ。
「あ……アーク様。先ほどバンプとの会話で、シルバーウルフは別だと仰っていましたが……もしかして今回の調査対象は魔物ではなく、魔鉱石の鉱床を初めから……?」
「ん? あ、ああ……そうだね。そうだったかもしれないね」
結局調査対象なんて分かってないけど、書いた本人であるマリーがいうなら間違いないんだろうな。
ここに辿り着いたのは、正直偶然というか、いつも通り適当に歩いてきただけだけど、目的がちゃんと見つかったんなら良かったよね。
「ひとまず! 帰るのは賛成だが……魔鉱石ってのはなんなんだ? 綺麗っちゃ綺麗だが、そんなに価値があるものなのか?」
「魔鉱石は魔素を含む珍しい鉱石なのよ。様々な素材になるわ。具体的にいえば……強力な武具が作れるわ」
「本当か!? そいつは願ってもないことじゃないかっ!」
突然元気になり出したバンプ。
君、左腕からずっと血を滴らせているのに凄いね。
まぁ、エリザなんか全身血だけになっても笑いながら剣を振るってた時があったから、左腕の怪我くらいじゃ驚かないけど。
「可能だとは……思うわ。鉱床ってのは見つけた者にもなんらかの権利が与えられるのが基本ですもの。領主立会の元なんだから、不平を言う者もいないでしょう。ただ、そんなことより大きな問題が……」
「問題が……? おい! 嘘だろ……ここでおかわりはねぇよ……」
二人が見つめる方に目を向ける。
なんと、さっきのシルバーウルフと同じような見た目の魔物が、出口の外にいち……に……さん。
三匹並んで立っている。
しかも、その後ろにより立派な体格をした毛並みの色も少し違うのもいる。
シルバーウルフの毛並みは文字通り銀色なんだけど、残りの一匹の色は、銀色なんだけど表面に妙な艶があって、角度によって七色に輝いて見えた。
なんだっけなぁ……銀に似た金属で同じ見た目の金属があった気がするんだけど……。
「ま、さか……ミスリルウルフ……? ありえないわ! どうやったって勝てないわ! 無理よ! 無理、無理!!」
「おい、落ち着け! 逃げるぞ!! ミスリルウルフがいなくたって、群れたシルバーウルフに勝ち目なんて元々ない!」
マリーとバンプは半狂乱だ。
どうやらかなりやばいやつが現れたみたいだ。
これはもうマリーが言うように無理なのかな。
食べられて死ぬのかなぁ。
どうせ死ぬなら痛くないようにしてほしいなぁ。
潔く諦めよう。
まぁ、僕が死んだとしても、領主は改めてエリザかランディもどちらかが就けばなんの問題もないしね。
あれ? そういえばエリザといえば、何か重大な約束を忘れている気がするな。
なんだったけなぁ。
あぁ、そうだ。
領主になったお祝いを用意するから、必ず屋敷で待ってろって言ってたんだ。
まずいなぁ。
すっかり忘れて散歩に出掛けてしまったよ。
「おい! お前は逃げねぇのか! 奴らが入ってきたらお終いだぞ! 出口なんてまた見つければいい!!」
「もう無理なのよぉ……魔鉱石には魔物を引き寄せる効果があるんだから……逃げたって別の道から魔物がここ目指してやってくるわ。どうやったって魔物と遭遇するわ。私もあなたももう戦う気力も体力もほとんど残ってないでしょう?」
「そう言ったってマリー! だったら何もせずにこのままやられるのをただ待つっていうのかよ! 俺は認めないぞ! 何もしないで死ぬくらいなら、戦って死ぬ!」
「まぁ、待ってよ」
思わず口から言葉が出ていた。
出した自分もびっくりしているくらいだ。
でも……うん。
ここはきちんとケジメをつけないとね。
たった二日だったとしても自分が今領主であることは変わりないんだから。
あぁ……胃が痛い。
「僕が……僕が囮になるよ。向こうはまだ気付いてなさそうだし。幸い出口の外にいる。僕が襲われている間に二人は、逃げたらいい」
「はぁ!? お前っ! 何を言ってるのか分かってるのか!? 食い殺されるってことだぞ!?」
「まぁ、元はといえば僕が二人をこの廃坑の調査に任命したわけだし。それに、僕は一応領主だからね。領民や臣下を守るのが領主の仕事だ」
だから領主になんかなりたくなかったんだ。
☆☆☆
マリーとバンプは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、すぐに顔を真っ赤にした。
自分のこれまでの考えと言動を恥じたのだ。
しかし動けなかった。
バンプは傷を負いながらもシルバーウルフとの立ち回りを続けたせいで、体力の限界だった。
マリーは魔力回復ポーションの数度の服用で気力が尽き果てていた。
そして何より、アークが本気でただ食い殺されるとは思えなかった。
今まで隠していただけで、アークもまたエリザやランディと同じように、この場を打開できるだけの能力を持っているに違いない。
そう信じずにはいられなかった。
しかし、現実は残酷で、アークには一切そのような力がないことは、揺るぎない事実だった。
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